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やくみつる☆シネマ小言主義~『コール・ジェーン -女性たちの秘密の電話-』/3月22日(金)全国ロードショー

監督・脚本/フィリス・ナジー 出演/エリザベス・バンクス、シガニー・ウィーバー、クリス・メッシーナ、ウンミ・モサク、ケイト・マーラ 配給/プレシディオ


この映画紹介コーナーもおかげさまで251回を数えました。しかし、本作は当連載史上もっとも評価が難しく、初めて星付けを保留とさせていただきました。


いやぁ、ムズイです。もちろん、今日び男目線でどうの、女目線でどうのという見方はジェンダーフリーの世の中でタブーとなっています。


【関連】やくみつる☆シネマ小言主義~『漫才協会 THE MOVIE~舞台の上の懲りない面々~』/全国ロードショー中 ほか

しかし、本作はどうしたって、男と女の立ち位置による感じ方の違いは生じてしまう内容なんです。


人工妊娠中絶が違法だった1960年代の米国での実話が元になった物語。2人目を妊娠した主人公のジョイが、妊娠によって心臓の持病が悪化していることが発覚し、主治医に中絶しなければ命に危険があると告げられます。


しかし、病院での中絶は認められない。結局、彼女は闇ルートでの中絶手術を選ぶのですが、その提供元は女性の権利獲得を目指すフェミニスト団体だったことから、クッキー作りが得意な「箱入り奥様」だったジョイは一念発起して女性を救う側に目覚めていきます。

どう評価していいものかさっぱり…

「中絶の決断を自ら決められないことはジェンダー差別の最たる問題だ、けしからん!」と断じるのは確かに簡単なんですけれども、その問題に秘められた女性たちの苦痛や苦悩を、男である自分が正確に慮れるかというと、そんな生易しいものじゃないと思うんですよ。

男女差別ではなく、「区別」の垣根は確実にあると思うので、本作をどう見たらいいのか戸惑い続けてしまったというのが正直な感想です。


というのも、時として「今自分は何を見てしまっているのだろうか」と自問自答してしまうくらい、微に入り細に入り当時の中絶手術のプロセスが生々しく映し出されます。


そして、ジョイが1人でも多くの女性を救うために始めた「掻爬」措置の練習が、穴を開けたカボチャから種子を掻き出す行為という…。


男性にとっては夢想だにしなかった禁断の扉を開ける勇気のある方は、ご覧になっていただきたい。


さて、比べると全女性から怒られそうですが、自分も手術をするかどうかの瀬戸際にいます。


腎臓結石がありまして、石が自然に出てこない場合は、レーザーで粉砕して流すしかないそうです。ただ、お腹越しにレーザーを当てると臓器まで傷つけてしまうらしい。


なので、尿管からカテーテル管を通してピンポイトで照射するらしく…それを聞いたら怖すぎて…腎臓の結石を掻爬するようなもんですよね。


同じにするなと怒られそうですが、ことほど左様に男は痛怖さに弱いものなのでございます。
やくみつる 漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。