森永卓郎 (C)週刊実話Web
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SNS型投資詐欺急増のワケ~森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』

3月7日、警察庁がSNS型投資詐欺の被害状況を初めてまとめた。昨年の認知件数は2271件、被害総額は277億9000万円だった。


問題は被害が急増していることだ。月別の状況をみると、昨年前半は1カ月あたり100件前後だったのが、7月には204件と倍増し、12月には369件と4倍近くに増えている。


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詐欺の典型的な手口は、SNS上で著名人が投資を勧誘する広告をクリックさせることから始まる。


男性の場合フェイスブック、女性の場合はインスタグラムが最も利用されている。


クリックすると、LINEのグループチャットに誘導され、そこで著名人自ら、あるいはそのアシスタントが投資のアドバイスをしてくる。短期間で数倍、数十倍のリターンが得られる投資商品を推奨してくるのだ。


グループチャットには数十人から数百人が参加していて、大儲けができたと自慢するが、そのほぼすべてがサクラだ。


もちろん投資を勧誘する著名人も、写真を勝手に使われた偽物なのだが、最近被害が急増している要因の一つが、手口が巧妙化していることだ。


例えば、グループチャット上で指導する著名人に対して「本物の先生ですか」という質問をすると、運転免許証の画像を送ってきたり、人工知能を用いて作成した本人に似せた音声メッセージを送ってくる。


私のところにも、毎日平均3人ほどの被害者から連絡が来るが、詐欺師たちが日々技術水準を上げていることがよく分かる。

最も悪いのは詐欺師たちだが…

ただ、私は被害者側にも一定の責任はあると考えている。例えば、偽造された私の免許証は、住所が代官山のタワーマンションになっている。

私がそんなところに住んでいないことは、私のことを知っていれば分かるはずだ。音声メッセージも、私のラジオを聞いているリスナーであれば、違和感を覚えるはずだ。


何より、普段から投資のリスクを叫び続けている私が、大儲けの投資など勧誘するはずがないのだ。


被害者の多くが、私のファンだから、ついつい騙されてしまったというのだが、正直言って本当のファンなのか、疑わしいと思う。


それは私と同様、投資のリスクを警告し続けている荻原博子氏の偽物に騙されてしまう被害者がたくさんいることからも分かる。


もう一つの問題は、最近の投資熱だ。警察庁も「SNSの普及に加え、投資への関心が高まっていることが影響しているのではないか」とみている。


政府自体が「投資元年」、「貯蓄から投資へ」と投資を推奨しているのだから、投資熱が高まるのはある意味当然だ。


しかし、株価の裏付けは、企業の純資産なのだから、経済成長率以上の平均株価上昇は、通常はあり得ない。


だから「数カ月で10倍」といった高利回りを提示された段階で、「それはおかしい」と思わないといけないのだ。


もちろん、最も悪いのは詐欺師たちだ。警察庁も、3月5日に全国の警察に対して、専門の捜査班を作って実態解明を進めるよう指示した。


ただ、犯行が海外で行われているとみられることから、犯人にたどり着くためには、海外の捜査機関との強力な連携が不可欠だ。


現にこれだけの被害が出ながら、いまだに1人の犯人にもたどり着いていない。


国会はSNS型投資詐欺に対抗するための新法を、早急に整備していく必要があるだろう。