千葉県・房総半島(画像)lovephotochan/Shutterstock
千葉県・房総半島(画像)lovephotochan/Shutterstock

「千葉群発地震」は東日本大震災の“割れ残り”が原因か!? 専門家が指摘「悪夢はまだ終わっていない」

2011年3月11日14時46分。


この日時を目にしただけで、あの忌まわしい記憶がよみがえる読者も多いことだろう。


東日本大震災(M9)から今年3月で13年もの月日が経つが、実はその〝悪夢〟は「終わっていない」との指摘もある。


震源域の北側と南側の海底に〝割れ残り〟(=地震発生時にプレートがずれなかったひずみ)があり、いまだ巨大地震のエネルギーが溜まり続けているからだ。


【関連】巨大地震を起こす“隠れ断層”が東京のJR「飯田橋駅」「市ヶ谷駅」「四谷駅」の真下に存在するほか

北側の割れ残りが指摘されているのは、岩手県沖の日本海溝沿い。もしここが割れれば、青森や釧路などに20~30メートルの津波が襲来する危険性があるという。


一方、南側のひずみは房総半島東方沖にあり、ここを震源に地震が起きれば大きな揺れが首都圏を直撃するといわれているのだ。


科学ライターが言う。


「北側で起きる地震は、東日本大震災の教訓から沿岸に大防潮堤が完成したため、被害はそう大きくはないはずです。逆に甚大な被害を出しそうなのが南側で、千葉県はいすみ市沖75キロを震源とするM8.2の地震を想定している。このエリアでは、最近になって群発地震が発生しているが、巨大地震が起きた場合には、同県で5600人が死亡するといわれているのです」


気になるのは津波による被害だが、いすみ市、御宿町、勝浦市には7~8メートルの津波が20分で到達。銚子市には8.6メートルの津波が32分で押し寄せる見込みだという。


武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏が指摘する。


「本当の意味で東日本大震災が収束するのは、数十年かかるはず。逆に言えば、その間に何が起きても不思議ではない。割れ残りは、まず南の方から動く可能性が高く、首都直下地震と連動する公算も大なのです」

大津波に襲われる房総半島

ちなみに、関東地方に大津波が押し寄せた例は、1677年に起きた延宝房総沖地震(M8)と1703年の元禄地震で最大8メートルの津波が現在の千葉県一宮町などを襲ったと古文書に記録されている。

ところが、最近になって国立研究開発法人「産業技術総合研究所」(以下、産総研)の研究グループが同県匝瑳市と山武市、一宮町などで掘削調査を行った結果、有孔虫(海に生息している微少な原生動物)の化石が含まれた砂の地層を発見。これが、津波で海から陸に運ばれたものと判明したことから、「数百年に1度、津波が襲来していた可能性がある」と発表したのである。


科学誌の編集者が語る。


「産総研は津波の浸水シミュレーションも実施。砂の層が形成された西暦800~1300年ごろに、房総半島東方沖の太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界部でM8.5以上の巨大地震が発生した可能性があると結論付けた。津波の到達時間は40分前後。山武市では、現在の海岸線から約3キロ離れた地点まで浸水した痕跡があったそうです」


前出の島村氏は、「東日本大震災震源域の割れ残りが弾ければ、南北のどちらであろうと大津波が発生する」と語るが、仮に南側の割れ残りが動いた場合には、房総半島だけでなく6~7メートルの津波が東京湾に押し寄せる可能性も指摘されているのだ。

アウターライズ地震にも要警戒

もっとも、東日本大震災の震源域がはらむ危険性はこれだけではないという。

防災ジャーナリストの渡辺実氏は、まったく違う仕組みで起きる巨大地震を危惧している。


「よく知られた話だが、M9クラスの巨大地震発生後には必ず『アウターライズ地震』が起きている。割れ残りで起きる地震も心配だが、私は東日本大震災の被災エリアでは、この地震を懸念している。発生時に陸上はそれほど揺れないものの、沖合を震源とした大きな地震が大津波を起こし、陸に襲いかかってくるからです」


渡辺氏が危惧する「アウターライズ地震」とは、端的に言えば海溝の外側で起きる地震のこと。東日本大震災は、陸側の北米プレートの下に海側の太平洋プレートが沈み込むプレート境界部(=日本海溝)で発生したが、弧を描いて海底に沈み続ける太平洋プレートには相当な負荷がかかっている。


それが限界に達すると、境界部から離れた沖合のプレートが割れて巨大地震が発生するのだ。しかも、大地震から年月を置いて起きることが多いとされる。


「そのいい例が、1933年に三陸沖を震源として起きた昭和三陸地震(M8.1)です。この地震は、それより37年前の1896年に起きた明治三陸地震(M8.2)によりプレート内のバランスが崩れたことで引き起こされたアウターライズ地震だといわれている。陸での最大震度は5だったが、なんと20メートル以上の大津波が沿岸に襲いかかったのです」(地震研究家)


この際、津波は6回にわたって押し寄せた。まず、地震発生から約30分後に第1波が沿岸に到達。第2波が最も大きく、この波の高さは20メートルを超えたとされ、同地震での死者・行方不明者は3064人に上ったほどだった。


科学ライターが言う。


「昭和三陸地震で被災したエリアは、明治三陸地震と同じ場所。40年近く前の地震の教訓から住宅の高台への集団移転も行われていたが、生活環境などの問題から海岸沿いの低地に戻るケースも増えていた。これが被害を拡大させたのです」


東日本大震災でも被害を受けた同エリアの多くで防潮堤が整備されたが、同じく津波が押し寄せるといわれている北海道は、いまだこうした備えも十分ではない状況。巨大地震が起きた場合に、甚大な津波被害が発生する可能性も指摘されている。


「地震大国」日本に逃げ場はなさそうだ。