『100万キロ走ったセドリック』天夢人/1500円
坪内政美(つぼうち・まさみ)
スーツ姿で撮影するという奇妙なこだわりをもつ四国在住の脱サラ鉄道カメラマン・ロケコーディネーター。数多くの雑誌などで撮影・執筆するほか、テレビ・ラジオへの出演も多数。
――100万キロは、まさに驚きの走行距離です。達成した日のことを、ぜひ教えて下さい。
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坪内 2023年1月5日11時11分。「おぉっ、やったやった!」と思わず声を上げました。9のゾロ目となった瞬間でした。運転席に三脚を立て動画用のカメラと集まっていただいた各社のカメラをセッティング。「行きますよ! 皆さんよろしいですか」と合図を送り、ゆっくりとアクセルを踏む。「祝・走行距離1000000キロ達成」。クルマの前で突然、表彰式が執り行われ、松本幸一・香川日産自動車株式会社取締役より100万キロ達成への感謝状が手渡されました。全く予想していなかったので、照れくさかったですね。
――なぜセドリックを選んだのですか?
坪内 子供の頃から刑事ドラマが大好きだったこともあり、自然にセダン車が好きになっていました。いまの相方である「日産セドリックY33ブロアム」は97年式で、17年前に約3000キロというほぼ新古車状態で手に入れました。この頃のクルマは頑丈に造られており、脚立代わりに屋根に上がっての撮影にも耐えてくれました。
100万キロ走破の愛車セドリックの記録の書
――途中、廃車の危機があったそうですね?
坪内 20年9月28日、この日は熊本県のJR豊肥本線を朝から巡っていました。撮影を終え、駐車場からクルマを出そうとギアをバックに入れたときでした。「全く動かない!」。近くにあった日産に駆け込んで見てもらったところ、トランスミッションに不具合が生じているのでは、という診断でした。その後、なんとか香川日産工場までクルマを運んだのですが、トランスミッションの生産が終わっており、最悪、廃車が頭をよぎりました。しかし、奇跡的に中古パーツが見つかり再び蘇ったのです。
――100万キロのエンジンは日産で分解、検証されたそうですが、どのような状態だったのでしょうか?
坪内 日産本社から送られてきた写真のデータは、実に271枚にも及びました。メカニックからは「とても100万キロを走ったとは思えないほど、カムシャフトもきれいですね。これはこまめにメンテナンスをしていたからでしょうね」との言葉を頂きました。その後、これから開発に携わる技術者の学びのため、ひいては自動車産業の未来の役に立てればと、エンジンを手放しました。100万キロを共にした相棒の心臓部分を持って行かれることには、心を引きちぎられる思いもありましたが、若手への技術継承に役立つのであれば本望です。
(聞き手/程原ケン)
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