岸田文雄 (C)週刊実話Web
岸田文雄 (C)週刊実話Web

岸田首相の「訪朝」は明らかな愚策!? 安倍元首相が拒否した“北朝鮮側の提案”にも食いつく勢い

自民党派閥による「裏金事件」で窮地に陥った岸田文雄首相は、それでも長期政権につなげようと6月の衆院解散に照準を合わせているが、低迷する内閣支持率に回復の兆しは見られない。


そこで、政権浮揚のカードとして〝電撃訪朝〟に踏み切るとの見方が急浮上。首相が政権維持に最後の執念を見せるかが注目されている。


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「やれるところまでやり切るが、追い込まれて負けることはしたくない」


2月18日、岸田首相は首相公邸に届いた発表前の毎日新聞の世論調査の結果を見て周囲にそう語った。


調査では、内閣支持率が政権発足以来最低の14%に落ち込んでいたこともあり、この発言を伝え聞いた者は、一様に深刻な事態と受け止めたのである。


党関係者が話す。


「首相自身が政権維持はもはや困難だと思っているということだ。この先も政権浮揚は図っていく。駄目なら衆院解散を断念して退陣するということだろう」


今秋には任期満了を受けての党総裁選が予定されている。支持率低迷が続けば再選は難しく、出馬断念を余儀なくされるのは必定だ。


そうならないためには、イチかバチかの衆院解散しかないが、負ければ惨めな引責辞任となる。首相はそれを嫌っているのだ。


昨年来、内閣支持率が低迷してきた中で、自民党派閥のパーティー券をめぐる裏金事件が噴出。裏金づくりの実態解明に消極的な党、責任を取ろうともしない安倍派(清和政策研究会)幹部らに対する世論の批判は強く、政権への逆風は強まりこそすれ弱まることがない状況だ。


現時点では、首相による岸田派(宏池会)の解散表明に追随して、安倍派や二階派(志帥会)が解散したことから、自民党内にあからさまな「岸田降ろし」の動きは見られない。


だが、党内では衆院選や来夏の参院選の顔に岸田首相がなるとは誰も思っていないことから、首相は焦燥に駆られているという。


先の党関係者が続ける。


「追い詰められた首相の脳裏にあるのは、2009年の麻生太郎首相(現党副総裁)と、民主党政権時代の2012年に野田佳彦首相が挑んだ衆院解散だという。いずれも内閣支持率が低迷した末の総選挙で大惨敗を喫し、政権交代に追い込まれた。首相が口にする『やれることはやり切って』は、その事態を回避し、多少なりとも追い風をつかみ、自民党の現有議席を減らしても、単独過半数(233議席)を維持できる見込みがあれば衆院を解散したいと考えているようです」

何が何でも行く構え

だが、そのための〝秘策〟はあるのか。政府関係者によれば、「それが北朝鮮訪問と日朝首脳会談」だという。

金正恩朝鮮労働党総書記の妹、金与正党副部長は2月15日、岸田首相による訪朝を「解決済みの拉致問題を捨てるならば」との条件付きで、「平壌を訪れる日が来るかもしれない」と朝鮮中央通信を通じて発表した。


首相官邸はこの発言に対し「留意する」(林芳正官房長官)と平静を装っているが、談話の主はロイヤルファミリーの与正氏であり、これまでとは明らかに発言の信ぴょう性が違う。


そのため永田町では、これが〝北朝鮮からの合図〟とも受け止められているのだ。


政府関係者がこう語る。


「実は訪朝に関しては、首相が昨年5月に『前提を付けない日朝首脳会談の実現』に強い意欲を示し、これに北朝鮮が前向きな反応を示したことで、さまざまなルートで接触を続けてきた」


公表されていないが、首相は昨年8月、米ワシントン近郊の大統領専用山荘キャンプ・デービッドで、ジョー・バイデン大統領、尹錫悦韓国大統領と会談している。


「日米韓の分断を懸念する2人に対し『3カ国で連携しながら交渉していく』と説明したほどです」(同・関係者)


この日米韓の連携強化に北朝鮮が反発し、水面下の日朝交渉は一時中断したが、秋には再開。日本側は秋葉剛男・国家安全保障局長を中心に信頼醸成を進め、元日の能登半島地震を受けて金総書記が「日本国総理大臣 岸田文雄閣下」と打った見舞い電報、そして今回の談話へとつながった。


ただ「拉致問題は解決済み」との姿勢を崩さない北朝鮮と、全面解決を迫る日本側との隔たりは大きく、いまだ交渉は「煮詰まっていない」(同・関係者)ようだ。


それでも、北朝鮮側が政府認定の拉致被害者である田中実さんと、拉致の疑いを排除できない特定失踪者の金田龍光さんの2人を一時帰国させるのではないかとの見方まで浮上しているという。


「理由は、14年のストックホルム合意に基づく拉致問題の再調査。これを受けて北朝鮮側が提示してきたのがこの案で、当時の安倍晋三首相は『拉致問題の幕引きに利用される』として拒否した経緯があるからです」(同・関係者)


ところが、岸田首相は北朝鮮が拉致問題の継続協議に同意すれば、この案を受け入れる方向で検討しているというのだ。


もしもこの交渉が実を結べば、4月の訪米から首相が衆院解散をにらむ6月までの間に訪朝する可能性が高まる。


「首相は、たとえ生存情報すら得られなかったとしても『扉を開けることに意味がある』として、何が何でも行く構えを見せている」(同・関係者)


また、自民党内では支持率が低迷しているとはいえ、春闘による大幅賃上げの実現、東証平均株価が4万円超えとなれば「さすがに少しは回復するのでは」(選対関係者)との見方も強い。


「その機に訪朝を実現させれば、衆院解散への道が開ける」というのが、首相の思い描く起死回生の〝延命シナリオ〟なのだ。

“延命”を阻む障害の数々

もっとも、支持率が超低空飛行のためか、そうした岸田首相の思惑には否定的な声も渦巻いている。拉致問題に関わってきた自民党の中堅議員が言う。

「今にも倒れそうな政権を北朝鮮がまともに相手にするはずがなく、首相が目指す訪朝は明らかな愚策だ。また、与正氏は権力中枢から外れており、正恩総書記の真意を代弁していない〝観測気球〟の域を出ないともいわれているのです」


さらに、こうした声に加えて首相が思い描く〝延命シナリオ〟が夢想で終わりかねない要素は他にもある。


4月28日に衆院東京15区と島根1区、長崎3区の3補欠選挙が行われる。この結果次第では一気に政局が流動化しかねないからだ。


東京15区と長崎3区は、公選法違反で起訴された柿沢未途議員と、裏金事件において政治資金規正法違反で略式起訴となった谷川弥一議員の辞職に伴う選挙。


島根1区は、清和会の元会長で裏金事件や世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との深い関係を指摘された細田博之前衆院議長の死去を受けて実施され、自民党はいずれも逆風下での選挙になることが確実視されている。


先の選対関係者が続ける。


「保守王国の島根は勝てる見込みはあるが、東京は勝算が見えない。長崎は不戦敗もあり得る。ただ、細田氏の弔い合戦となる島根は勝っても辛勝なら、ついに『岸田降ろしの号砲が鳴る』と言い切るベテラン議員もいるほどなのです」


そうした状況が取り巻く中、首相は2月20日夜に麻生副総裁と東京・丸の内の日本料理店『和田倉』で会食。麻生氏に近い関係者によると、今後の政局について突っ込んだ話し合いが持たれたという。


この関係者が言う。


「麻生氏は昨年夏ごろから、首相に『後が大事』と、キングメーカーになる道があることを示唆してきたが、今回は身の振り方と〝ポスト岸田〟候補に推す上川陽子外相についても話したとみられている。上川氏は、仲間は少ないが宏池会の出身で、首相にとっても2代続けて宏池会出身総理が誕生するのは悪い話ではないというわけです」


また、この関係者によると「麻生氏は、首相の派閥解散表明に不快感を示していたが、上川を勝たせるには首相と組むのが得策だと割り切っている」とされる。


要は、首相に上手く引導を渡そうとしているのだ。


無論、〝延命シナリオ〟通りに事が進めば、首相が自ら衆院解散する道も、わずかながら残っている。この数カ月で、岸田首相がどんな判断を見せるかが見ものだ。