蝶野正洋 (C)週刊実話Web
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蝶野正洋『黒の履歴書』~伊東純也選手の性加害疑惑で少子化加速

フランス1部リーグの名門クラブ「スタッド・ランス」所属でサッカー日本代表の伊東純也選手が、女性の同意なく性行為に及んだとして刑事告訴され、出場中だったアジアカップ選抜から離脱した。


伊東選手側は「まったくの事実無根」と主張。虚偽の告訴で名誉が汚され、スポンサー契約も打ち切られたとして、2億円の損害賠償を求める訴状を提出している。真実は今後の裁判で明らかになるだろう。


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問題はメディアで性加害疑惑が報道されたことで、伊東選手が活動自粛したことだと思う。伊東選手が結果的に無罪だったことが確定しても、試合に出られなかった時間は帰ってこないからね。


刑事告訴されたことは重くみるべきだけど、「疑わしきは罰せず」の原則で言えば、疑惑の段階で出場がストップしたことは議論すべき。本人だけではなく、周りの関係者も影響を受けるし、それぞれが経済的な損害を被ってしまう。


ダウンタウンの松本人志さんの問題も同じだよ。疑いが晴れたとしても、一部の人には、松本人志=性加害疑惑という印象になってしまい、そのイメージの悪化に対しては取り返しがつかない。


それに、最近は過去に起きたことでも「あのときは不快に感じた」とSNSなどで告発して、ダメージを与えることができるようになった。個人の記憶に基づいているから時効がないし、そもそも密室での出来事だから、第三者が無実を証明するのもハードルが高い。

いつ“刺されるか”分からないSNS社会

俺は、男女共同参画についての講演会によく呼ばれているんだけど、今まで男性優位の社会で女性は差別されてきたので、どうしても女性の地位向上や社会進出というテーマがメインになる。ただ、あくまでも男女同権を目指すべきで、女性を腫れ物のように扱って、逆に男性を差別するようになってしまうようでは本末転倒なんだよ。

職業差別などの社会的な課題だと目的が明確なので取り組みやすいんだけど、恋愛や性という部分で男女同権という考え方を持ち込むのは本当に難しい。女性が加害者というケースも有り得て、男性側が「あのときはイヤだったけど、断ったら雰囲気が悪くなりそうだったので、無理やり頑張りました」と訴えてもいいということだからね。


このような告発が当たり前になってくると、面倒なことになるから、異性には関わらないようにしようというムードになるかもしれない。恋愛に対する意欲が下がるし、結果的に少子化にもつながると思う。


もしかしてメディアは、ニュースや記事がどれだけバズったかにしか興味がないのかもしれない。だけど、このような性加害スキャンダルをあおることで、日本社会の未来に少なからず影響を与えていることを自覚したほうがいい。


それに、有名人の女遊びなんて関係ないと思っている人もいるかもしれないけど、自分も意識しないでセクハラをしていたり、かつての恋人から「あのときは同意が無かった」と、誰にいつ刺されるか分からない。そんな時代に突入した自覚は、一般人も持っていたほうがいいだろう。


伊東選手や松本さんの裁判の結果が、今後の性加害問題の行く末を占う試金石になりそうだよ。
蝶野正洋 1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。