前号では、変形性膝関節症の対処法について紹介しましたが、痛みが強い場合は関節内注射を行う方法もあります。
変形性膝関節症や肩関節周囲炎(五十肩)の治療に、ヒアルロン酸の関節内注射を用いることがあります。粘り気がある薬剤で、皮膚や目、関節軟骨や関節液に含まれる成分ですが、口から飲んでも効果はありません。関節軟骨の表面を保護して炎症を鎮め、関節の潤滑剤になる効果があります。
ヒアルロン酸の関節内注射は、膝関節や肩関節に週に一度、5回ほど注入します。ただし、高価で保険上の制約のため、6回目以降は2週間以上間隔をあけるか一度中止します。痛みがなくなれば、関節内注射を中断してもOKです。しかし、痛みが残っている時は、回数を減らして続けることもあります。車のエンジンオイルを入れ替えて調子がよくなったから、オイルをそれ以降入れ替えないよりは定期的に入れ替えたほうがエンジンが長持ちする、と患者さんに説明しています。
新しい方法や薬剤は発売後しばらく様子をみて
ヒアルロン酸以外にステロイドホルモンの注射もありますが、ステロイドを何回も関節内に注射すると、かえって軟骨や骨を傷めるので、回数を限って使用します。
最近では自分の血を採血して濃縮し、もう一度関節内に注入する方法や、色々な新しいタイプの関節内注射薬が開発されつつありますが、新しい方法や薬剤は発売後副作用などが出ていないかなど、しばらく様子をみてから試すのが安全です。
監修/井尻慎一郎先生
井尻整形外科院長。医学博士。著書・監修書に『痛いところから分かる 骨・関節・神経の逆引診断事典』(創元社)、『筋肉のからくり 動かし方を変えるだけでコリと激痛が消える!』(宝島社)などがあるほか、論文、講演、テレビ出演などで活躍中。井尻整形外科HPは下記。
https://ijiri.jp
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