
辞任した森喜朗さんの後任として、橋本聖子さんが東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の会長になった。
川淵三郎さんという候補もあったけど、俺は橋本さんが適任だと思う。オリンピック・パラリンピック担当大臣を務めてきた実績もあるし、アスリートとして夏・冬あわせて7回もオリンピックに出場したのは、本当にすごいことだよ。
政治家としては、どうしても森さんの影がチラついてしまうけど、そういった意味では経験値も交渉力もあるはず。俺は何年か前に橋本さんに会ったことがあるけど、普段はすごく物腰が柔らかいし、チャーミングな方だったから、国際的な交渉の場でも力を発揮してくれるんじゃないかな。
ただ、責任重大というか、このタイミングで東京オリンピックを一身に背負うのは大変だよ。新型コロナの状況を見ながら、オリンピックを決行するかどうかの判断もしなくちゃいけない。
中止になる可能性もあるから、その時は貧乏くじを引いたというか、尻ぬぐいをする立場になるかもしれない。でも、この状況を乗り切ることで、政治家としてはものすごいプラスになると思う。だから、注目しておきたいのは開催か中止かというよりも、橋本さんと他の政治家とのやり取りだな。
政治家なんて、自分の立場でいろいろな考えを押し通してくる。それをさばくのは相当な力が必要だ。そのあたり、橋本さんは政界の中で一番ドス黒いと思われる森さんの下で、表と裏の交渉を見てきてるだろうから、大丈夫だと思うけどね。
前に出ることが時代を動かしていく
火種があるすれば、東京都知事の小池百合子さんとの関係だな。小池さんは女性の組織委員会会長が誕生したことでウエルカムでやってるけど、これはあまり信用できない。
小池さんは東京オリンピックよりも、自分の出世、さらには日本初の女性総理になるという野望があるだろうからね。これで橋本さんが会長としてうまく立ち回って結果を出したら、小池さんにとっての対抗馬になる。今は笑顔で握手してるけど、いつ手のひらを返すか分からない。
政治家というのは、なによりも駆け引きが大事。そういう意味で注目なのは、森派の中で出たり入ったりしている、駆け引き上手な元アスリートの議員。それが馳浩だ。
馳先生はプロレス業界でもまれてるから、平気で人を裏切る可能性がある。なんといっても、師匠が長州(力)さんだからな(笑)。
だから橋本さんも、いまは同じ派閥グループの仲間ではあるけれども、馳先生には気をつけてほしい。ハグするとみせかけて、いきなりノーザンライトスープレックスを仕掛けてくるかもしれない。
まぁ、俺が言いたいことは、プロレスラーも政治家も、野心の固まりということだ。基本的には自分のことだけで、組織のことなんて考えていない。自分が上に行くために組織を利用するというのはあるけど、いつ離脱するか分からない。でも、それはそれでいいんだよ。そうやって前に出ることが、時代を動かしていくんだから。
東京オリンピックを軸に橋本VS小池の抗争が勃発して、周囲も巻き込んでいく。これは面白くなりそうだ。
蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。