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岸田首相「訪朝説」浮上でささやかれる「拉致被害者帰国」直後の解散総選挙

岸田文雄
岸田文雄 (C)週刊実話Web 

「岸田文雄首相が北朝鮮を電撃訪問し、金正恩朝鮮労働党総書記と首脳会談を行う」

そんな観測が急浮上している。狙いはもちろん、拉致被害者の帰国である。

小泉純一郎氏が歴代首相として初めて訪朝し、金正日総書記と会談したのは2002年9月のこと。その翌月、蓮池薫さんら拉致被害者5人が帰国した。

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あれから21年以上の歳月が流れたが、その後の進展はほとんどない。そのため、再び拉致問題が動き出すかが注目されているのである。

拉致被害者の横田めぐみさん(失踪当時13歳)の母、早紀江さんは2月4日に誕生日を迎え、88歳となった。

「どうか生きている間に一目、めぐみちゃんに会って『頑張ったね』と言ってあげたい。日本はどうしてこんな大事なことを解決できないのか。しっかりしていただきたい」

早紀江さんは東京都内で15日に行われた集会後、報道陣にそう語った。

早紀江さんと夫の滋さん(20年に87歳で死去)は14年、モンゴルの首都ウランバートルの大統領迎賓館で、孫であるめぐみさんの長女のキム・ウンギョンさんらと面会している。

早紀江さんは、別れ際に「(めぐみさんと)一緒に帰ってくることを信じている」と伝えたことを集会で明かしたが、その後2人が帰国することはなく、被害者家族にとって拉致問題は〝時間との闘い〟となっている。

そうした拉致問題の歴史と背景を知る、日朝関係者がこう語る。

「日本政府はこれまで水面下で北朝鮮側と折衝を続けてきました。しかし、結果に結びつかず、日朝関係は膠着状態に陥っていました。それがここにきて、状況が変わってきています。北朝鮮に異変が起きているのは間違いありません」

北朝鮮の異変といえば、正月に起きた能登半島地震をめぐり、正恩氏が日本政府に見舞いの電報を打ったことをご存知の読者は多いことだろう。

この電報は宛名部分に「日本国総理大臣 岸田文雄閣下」と記され、「被災地の人々が一日も早く地震被害から復旧し、安定した生活を取り戻せるよう祈る」という内容だった。

これまで日本の首相を「不倶戴天の敵」と罵倒してきた正恩氏が「閣下」と敬称を使うのは異例中の異例だ。

そのためか、林芳正官房長官は記者会見で「各国・地域からお見舞いのメッセージを受け取っており、日本政府として感謝している。金委員長からのメッセージについても感謝の意を表したい」と語り、それが日朝間における〝融和のシグナル〟ではないかと話題を呼んでいたのだ。

金与正氏の発言に隠された真意

しかも、北朝鮮に関する異変はこれだけではない。

西岡力・麗澤大学特任教授の産経新聞への寄稿によれば、正恩氏は1月15日の最高人民会議で「首都平壌の南の関門にぶざまに建っている『祖国統一三大憲章記念塔』を撤去する」と演説。数日後にこの塔が撤去されたという。

「西岡氏によると、この記念塔は正恩氏の祖父である初代首領の金日成主席が提唱した『祖国統一』を記念して、2代目の正日氏が建てたものだった。高さ30メートルもあるこの巨大建造物を〝ぶざま〟とののしり撤去したことは、祖父と父を否定したことにほかならないと驚きの声が広がっているのです」(外信部記者)

また、近年は韓国の情報が大量流入し、北朝鮮人民の間に豊かで自由な韓国への憧れが急拡大しているという。

これが原因で韓国による吸収統一を望む者が大量に発生し、人民の不満が抑えきれなくなってきているといわれているのだ。

さらに極め付きは、正恩氏の妹である金与正党副部長が2月15日に国営の朝鮮中央通信を通じて発表した談話だろう。

与正氏は、岸田首相が9日の衆院予算委員会で「今こそ大胆に(拉致問題の)現状を変えていかなければならない。さまざまなルートを通じて絶えず働きかけを行っており、結果につなげるよう最大限努力したい」と述べたことに対し、こう指摘したのである。

「すでに解決された拉致問題を両国関係の障害物としないのであれば、両国が近づけないわけがなく、首相が平壌を訪問する日が来るかもしれない」

与正氏の発言趣旨を外務省関係者が分析する。

「融和路線を演じたこの発言は、日米韓の連携にくさびを打ち込む狙いがあると思われますが、それだけではありません。北朝鮮はさまざまな金融制裁措置を受けており、カネの流れが止まっている。日本に経済支援を求めていることは明らかです」

近年、北朝鮮はウクライナに侵攻するロシアに急接近し、弾道ミサイルを供与して資金を得ていると噂されるが、同国が資金難に陥っていることは疑いようのない事実。そのため、この発言は経済支援要請の合図ともみられているのだ。

逆境をはねのけるシナリオ

もっとも、拉致問題で注目されているのは、北朝鮮の動向ばかりではない。

拉致被害者の蓮池薫さんは、今年に入って積極的にマスコミのインタビューに応じているが、そこには以前の講演ではあまり聞かれなかったエピソードが含まれ始めている。

「例えばテレビ朝日の取材時には、北朝鮮側が自殺したと言ってはばからない横田めぐみさんについて、『自分で命を絶った、あれは考えられないですね。だって日本に帰らなきゃという強い思いを持っている。そういう方が簡単にあきらめて。嘘ですよ。生きていると考えられる』などと話しているのです」(民放関係者)

また、FNN(フジニュースネットワーク)の取材に対しては、めぐみさんとキムチ作りやマージャンなど家族ぐるみの付き合いをしていたことを告白。

90年ごろと94年ごろに住んでいた招待所を抜け出したこと、2度目の際には同国と新潟を結ぶ貨客船「万景峰号」で、日本に帰ろうとしていたことなども明かしているのである。

全国紙政治部記者がこう語る。

「蓮池さんが拉致の詳細やめぐみさんのことを語り出したのは、拉致問題解決に向けて動きが鈍い政府の背中を押す狙いがあります。ただ、それだけとは考えにくい。日朝首脳会談の実現に向けて世論を醸成する役割を、日本政府に担わされている可能性もある。そして、北朝鮮も蓮池さんの発言に日本の世論がどう反応するか見ているはずです」

ここにきて、こうした北朝鮮をめぐるさまざまな動きが展開し始めたからか、英紙フィナンシャル・タイムズは、日米関係筋の話として「岸田首相が正恩氏との会談実現に向けた取り組みを強化している」などと報道。

国内では、さらに岸田政権が描く電撃訪朝後の政治シナリオも取り沙汰されている。

「日朝首脳会談を経て、めぐみさんをはじめとする拉致被害者の帰国が実現すれば、内閣支持率は急上昇。その勢いを駆って衆院解散に持ち込める。そのため、永田町では来年度予算案の成立後に、春の3つの衆院補欠選挙を吸収する形での4月、国民が所得税減税の恩恵を受けられる6月、そして都知事選と同日に行う7月の3つの解散・総選挙時期が注目されているのです」(自民党関係者)

自民党派閥の裏金問題で連日、野党の突き上げをくらい、派閥解消をめぐっては麻生太郎副総裁や茂木敏充幹事長からも見放されつつある岸田首相は、「今も持ち前の鈍感力が発揮され、神経をすり減らしている感じはない」(首相側近)という。

ただ、そんな余裕があるのも、拉致問題解決で逆境をはねのける政治シナリオが着々と進んでいるからなのかもしれない。

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