(画像)yu_photo/Shutterstock
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巨大地震を起こす“隠れ断層”が東京のJR「飯田橋駅」「市ヶ谷駅」「四谷駅」の真下に存在する

国民の命と財産を守る地震観測及び防災体制の強化を目的として、1978年に施行されたのが大規模地震対策特別措置法だ。


この法律制定の最大要因となったのは、東海地震への警戒感だといわれるが、あれから46年。阪神・淡路大震災(M7.3=1995年)、東日本大震災(M9=2011年)、そして今年元日に能登半島地震(M7.6)が起こった今、「次に発生するのは、やはりこの大地震ではないか」と再び警戒感が高まっている。


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武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏が言う。


「東海地震は南海トラフを震源とする地震の一種で、駿河湾から九州沿岸にまで伸びる同トラフの東側が割れて(震源となって)起きる。現在は比較的穏やかな状況が続いているが、フィリピン海プレートが活性化しているため、いつ発生しても不思議ではないのです」


実際、江戸時代末期にはこの大地震が発生し、未曽有の被害を招いたことが記録されている。


駿河湾から遠州灘沖、熊野灘を震源として1854年に発生した安政東海地震(M8.4)は、静岡や山梨で震度7を観測。房総半島から四国沿岸部の広い範囲を津波が襲ったが、そのわずか32時間後に、今度は土佐沖の南海トラフ西側を震源とする安政南海地震(M8.4)が発生。伊豆から四国にかけて死者数千人、倒壊家屋3万軒以上の被害をもたらしたのである。


「当時はM7クラスの大地震が度々起こり、現在同様、地震の活動期にあったと考えられている」(科学ライター)というが、そのためか翌年11月には関東でも直下型の安政江戸地震(M6.9)が誘発され、1万人余りが死亡した。


震源は揺れが最も強かった隅田川河口付近であったと伝えられるが、この3つの巨大地震で幕末日本は大混乱。ただでさえ黒船来航(1853年)で由々しき事態に陥っていた幕府を、さらに追い詰めたともいわれているのだ。


島村氏が言う。


「南海トラフ地震は知られている限り過去に13回発生している。1946年に起きた昭和南海地震(M8)からすでに78年が経過したが、同地震は南海トラフ地震としては小ぶりな方だった。最東端にあたる駿河トラフが割れなかったからです。そう考えると、安政東海地震から170年が経過した今、南海トラフの東半分には相当エネルギーがたまっているはずで、次回はM8を超える巨大地震になるとみられているのです」

東京が廃墟になる可能性も

この島村氏の言葉が的中しないことを祈るばかりだが、地震学界にはそうは言っていられないデータが存在する。

2020年に地震調査委員会が更新した予測では、M8~9クラスの巨大地震が30年以内に起こる確率は最大80%。将来わが国で発生する強い揺れを予測した「地震動予測地図」(地震調査研究推進本部作成)にも、震度6弱以上の揺れにさらされる地域として、房総半島から四国までが確率最上級の紫色に塗り分けられているからだ。


科学ライターが続ける。


「実は、今の状況は幕末期とよく似ている。当時も、前述した安政東海地震、安政南海地震の発生後、わずか4年間で伊賀上野地震(M7.2)、豊予海峡地震(M7.4)、飛騨地震(M6.8)、安政江戸地震、安政八戸沖地震(M7.5)などが頻発。現在も、地震活動が活発で能登半島地震後にも大地震が起きることが予想されている。さらに、南海トラフ地震は100~150年周期で発生しており、割れ残りの東側はすでにその周期を超えているとみられているのです」


また、これに加えて江戸時代同様、2つの南海トラフ地震に誘発された直下地震の発生も懸念されている。


近年、都心部には〝隠れ断層〟が存在していると考えられており、M8クラスの南海トラフ地震の発生で刺激を受ければ、〝悪夢〟が再現される可能性が高いといわれているからだ。


科学誌の編集者が語る。


「都心の地下はまれにみる複雑な構造で、最深部には10~30万年前の東京層なる地層が存在し、その上に7~8万年前の砂礫層、さらにその上を火山灰が降り積もった関東ローム層が覆っている。このため、東京層に存在する断層は極めて発見・観測しにくいのです」


ちなみに、いまだ存在が明らかになっていない隠れ断層は「推定活断層」と呼ばれており、すでに都心部には8つあるという。


「その中でもいつ動いてもおかしくないと考えられているのが、JR飯田橋駅付近から市ケ谷駅、四ツ谷駅を通る全長7キロほどの飯田橋推定断層です。近隣に防衛省や迎賓館がある同断層は、過去7~8万年の間に2回動いたとみられている。また、その東側を九段推定断層、西側を市ケ谷推定断層が走っている。周辺には国会や最高裁判所など国の中枢施設が存在し、皇居も近いためその存在と動向が危ぶまれているのです」(同)


前出の科学ライターが警告する。


「推定活断層は、2メートルずれるだけでM7クラスの大地震が発生するといわれている。首都直下地震で最も恐ろしいのは、地下を走るこの活断層が他の大地震に誘発されて動くこと。揺れに強いといわれる超高層ビルやマンションも、M7の大地震に見舞われたらどうなるかは誰にも分からない。数十万人規模の死傷者が出て、東京が廃墟になる可能性も少なくないのです」


こんな負の連鎖が起きなければいいのだが…。