蝶野正洋 (C)週刊実話Web 
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蝶野正洋『黒の履歴書』~テレビ業界に蔓延る“捏造体質”

テレビドラマの脚本をめぐって、脚本家と原作者が対立した問題が取り沙汰されている。


原作者の漫画家は「原作に忠実な映像化をする」という約束でドラマ化を許可したんだけど、制作過程で脚本家が改変したことでトラブルとなり、双方にとって不本意な作品になってしまったようだ。


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原作者は、自分の考え通りにドラマ化してほしいと考える。脚本家は原作をそのまま使うと、仕事をしていないように思われるし、少しは自分の色を出したいから手を加える。


そもそも漫画とドラマは表現方法が違うものだし、原作者と脚本家の手が合わないのも当然だ。それは最初から分かっていることで、脚本家と原作者がこじれてしまった責任はテレビ局側にあると思う。


そもそもテレビ業界は数字が取れればなんでもよく、ひどい場合は自分たちの都合のいいように話を〝捏造〟することすらある。


以前、俺はあるバラエティー番組から出演依頼があって、「首をケガしながらも頑張っているエピソードを話してください」と言われて承諾した。


だけどスタジオで台本を渡されると、そこには「首のケガはカミさんとの夫婦喧嘩が原因だった」という作り話が書いてあったんだよ。


番組側は当たり前のように「この台本に沿って話してください」と言ってきたから、俺は「こんなやり方なら出ない」とブチ切れて、編集で全カットさせたことがある。

“上から目線”はもう通用しない?

他にも、ドキュメンタリー番組というから事実をそのまま撮るのかと思ったら、しっかり脚本が用意されていたりね。

俺と若手俳優が海外で1週間ほど旅をする番組があったんだけど、その俳優とはすぐに仲良くなったんだよ。


でも演出家は、俺と若手俳優がジェネレーションギャップから最初は仲違いして、そこから1週間かけてお互いに理解し合う映像を撮りたかったらしい。だから、そういう風になるように、俺や若手俳優をけしかけてきたんだよ。


田舎に行って住民の家に泊まらせてもらう番組に出演したときも、俺が現場ですぐに泊まる家が決まったら「もっと探し回ってほしい」と言ってきて、苦労して泊まる家を見つけた映像を撮ろうとしたりね。


長州(力)さんもロケ番組で同じような目に遭っていて、1時間くらい歩き回らされたけど、その間の映像が一切使われなかった。


これは、最初から疲れ切った長州さんの表情が撮りたいだけなんだよ。俺だったら「どうせ使わないなら撮るなよ」とその場でキレることを伝えると、長州さんも「そうだよな」って。それからは長州さんも、理不尽なロケ番組には現場でキレるようになったらしい。


そもそもテレビ番組に携わっているディレクターや放送作家などの現場の人たちは、ほとんどが制作会社から派遣されている下請けなんだよ。テレビ局側のプロデューサーに一目置かれたくて捏造し、それが一線を踏み越えてしまうことが少なくないんだよ。


トラブルの遠因は、テレビ業界の一部の人たちが、いまだに上から目線でいることもあると思う。テレビに出して有名にしてやると思っていたり、ドラマで原作として使ってやるという感覚なんだよ。


それが通用しなくなってきているのに、まだふんぞり返っている連中がいるんだろうね。
蝶野正洋 1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。