森永卓郎 (C)週刊実話Web
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日本をさらなる増税地獄に陥らせる新総裁~森永卓郎『経済“千夜一夜”物語』

1月31日、自民党の財政健全化推進本部が開いた役員会で、「ひな壇」と呼ばれる幹部席に小渕優子選対委員長、古川禎久元法相、青木一彦参院議員が並んだ。いずれも茂木派を脱藩したメンバーだ。


私は、この場が小渕優子氏の新総裁就任のお披露目を目指すになったと考えている。


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昨年末から始まった自民党の政治とカネの問題は、自民党派閥に大きな衝撃を与えた。


安倍派、二階派、岸田派、森山派は解散に追い込まれ、茂木派も離脱者が相次いだ。無傷は麻生派だけだ。一体、何が起きているのか。


私には、今回の騒動は財務省が裏で糸を引いているとしか思えないのだ。


一部のメディアは、裏金問題が安倍派に特有の問題であるかのような報道をしているが、それは間違っている。安倍派はキックバック方式という証拠の残りやすい形で裏金をつくっていただけで、他派閥も裏金を使ってきたし、今後も使い続けようとしている。


例えば政策活動費だ。派閥ではなく、自民党として政治資金パーティーや企業献金で集められた資金は、政策活動費として議員個人に配分される。政策活動費で使われる資金に領収書は不要で、使途も公開されない。


明確な裏金なのだが、岸田総理は「政治活動の自由を守るため」に今後も政策活動費は続けると明言している。つまり、裏金慣行は継続されるのだ。

小渕優子氏のウラにあるもの…

そのなかで、なぜ安倍派は解散に追い込まれたのか。

実は、安倍派というのは財務省にとって、目の上のタンコブだった。アベノミクスの3本の矢は、(1)金融緩和、(2)財政出動、(3)成長戦略だった。


財政緊縮を進めたい財務省にとって、安倍派の政策は許し難いものだったのだ。特に安倍元総理は、財務省の方針に反して、消費税率の引き上げを2度も延期した。


そんな反財務省の派閥から、次の総理を出すわけにはいかない。それが今回の政治とカネ問題で、安倍派が総攻撃の対象となった最大の原因だろう。


一方、自民党のなかで親財務省路線を取ってきたのが麻生派だ。この派閥は今回、しっかり生き残った。


そして本来、麻生派と共に「大宏池会」を構成する岸田派も、親財務省路線だったのだが、岸田総理が突然、所得税・住民税の4万円減税を打ち出したことによって、財務省から見放されてしまった。


それが岸田派解散の背景となったのだ。つまり、今後の自民党は麻生派中心、親財務省政党に変貌していくのだ。


9月の自民党総裁選で、財務省に睨まれた岸田総裁は勝てない。立候補さえできない可能性もある。麻生副総裁は、上川陽子外相を総裁候補に仕立てたかったフシがあるが、年齢や容姿を揶揄した発言で、可能性をつぶしてしまった。


そうしたなかで、財務省が長年にわたって育ててきた秘蔵っ子が、小渕優子選対委員長なのだ。総裁選後の解散総選挙実施を考えると、小渕氏は総裁の最適任だ。


選挙地盤もしっかりしており、小渕元総理の娘でサラブレッドだし、若く、女性で、清新なイメージに溢れている。さらに長年の財務省のサポートで、その思想は完全な財政緊縮路線だ。財務省にとって、理想的な総裁人材なのだ。


そうした事情を知らない国民は、小渕新総裁を圧倒的に支持するだろう。


その結果として、当然、日本はさらなる増税地獄に陥るのだ。