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日本全国☆釣り行脚~『シロギス』~熊本県宇城市/三角西港産

シロギス釣り
シロギス釣り (C)週刊実話Web

毎年のことではありますが、またこの時期が来てしまいましたなぁ。陸からの釣りにはなかなか厳しいこの時期が…。

長らくこの連載をご愛読の方はご存じのように、海中の季節は地上より1カ月遅れで推移します。よって2~3月は年間で最も水温が低下するタイミングに当たるんですね。寒さが厳しくなると温かい布団から出られなくなる人類と同じで、魚類もその大半において活動が鈍くなってしまうのです。

魚の動きが鈍ってしまうのなら、居場所を直撃するしかありません。冬場に魚が溜まるのは、潮流が豊かで水深のある場所。深場ほど外気温の影響を受けにくく、魚にとって快適な環境が形成されるのです。ですから、冬場は〝あったか~い奥の奥まで、深~く挿し込む〟のが重要なのです、グヘへ。

ということで、今回のイキ先は、熊本県の三角西港。宇土半島と大矢野島に挟まれたこの海域は「三角ノ瀬戸」と呼ばれ、申し分ない水深と潮通しゆえに冬期もシロギスが狙える実績場です。また一帯の港湾史跡は「世界文化遺産」に登録させるほど秀逸な景観を誇ります。これまで好んでドブへ出かけたり、宵闇や雪原といったアナーキーな環境下での釣りが続きましたが、たまには美しい景色を愛でつつ竿を出すのもいいじゃないか。そんなことを思った次第です。

好天の中、有明海に沿って走る国道57号線のドライブをしばし楽しんで現地に到着。歴史を感じさせる石積み護岸の適当な場所から竿を出します。素晴らしい天気と環境ですが、釣り人はポツポツ程度。何ともぜいたくな時間です。

絶景満喫中にイイ反応が!

とりあえずは遠投用の竿を準備し、ハリにエサを付けたらフルキャスト! 放たれたオモリはシュ~ッと飛び、100メートルほど沖に着水。無風&ベタ凪のなかで思い切り飛ばすのは本当に気持ちイイ~。水深はおよそ18メートル。深くてイイ感じです。

景色を眺めながら掛かるのを待ちます
景色を眺めながら掛かるのを待ちます (C)週刊実話Web

3本の竿を順に投げ込み、後は魚が掛かるのを待つばかりです。ターゲットはシロギス。初夏から晩秋にかけての盛期はともかく、冬場はそれほど頻繁な反応は期待できません。まあ景色を眺めながら、静かにのんびり待つことにしましょう。天気もイイことですし。

景色時々竿先。そんな感じで視線を送っていると、時折鋭いアタリが出てエサがかじられます。しかし、ハリに掛かることはなく、およそ本命からのシグナルではなさそうです。

で、再び景色鑑賞。いい景色は見飽きませんなぁ。対岸に見える大矢野島の山々、左手には天草五橋のひとつ『一号橋』。実に見応えのある絶景であり、「本命が釣れなくても、この時間に価値があるなぁ」などと思えてしまいます。

「ブルルンッ!」

景色に見とれていた私の視線に、音まで聞こえそうなほど明確なアタリで絞り込まれる竿先が目に入りました。今までの小さなアタリとは明らかに異なるだけに期待できそう。

上品な天ぷらで安酒をチビリ!

すぐに竿を手にすると「ブルルンッ!」と鋭い手応えが続きました。急深な地形ゆえ、手前のカケアガリ(海底の傾斜)に仕掛けを取られないように速巻きで浮き上がらせます。

やがて水面下にキラリと輝く美しい魚影が見えました。本命のシロギスです。

美しいシロギスが!
美しいシロギスが! (C)週刊実話Web

その後もポツポツとシロギスが続き、終わってみれば6尾を確保。盛期であればもっと数が出るターゲットですが、冬場としては満足と言える釣果でしょう。

「キスは足で釣れ」

シロギス釣りの世界にはこんな格言があります。これは「盛期には活性の高いシロギスの群れを探して釣れ」とともに、「シロギスは臆病なので、同じ場所を攻め続けるとオモリの着水音で散ってしまう」といった意味も含まれています。

そういったこともあり、仕掛けをゆっくり手前に引きながら誘う釣り方がセオリーなのですが、これは盛期の話。冬場は、今回のように仕掛けを動かさずにじっくり待つ方が釣果が期待できるのです。

さて、持ち帰ったシロギスは定番の天ぷらにして一杯やりましょう。淡白で上品な天ぷらと、目に焼き付いた三角ノ瀬戸の絶景を肴にワンカップをチビリ。いつものとおりの深酒でサクッとイってしまいました。

天ぷらにして極上の一杯
天ぷらにして極上の一杯 (C)週刊実話Web

それにしても、なんとも平和かつ優雅な休日でしたなぁ。クセになりそう…。

三橋雅彦(みつはしまさひこ)
子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。

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