(画像)Summit Art Creations/Shutterstock
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専門家が警鐘!1月28日の「東京湾M4.8地震」は首都直下と関東地震に連鎖する

能登半島地震から約1カ月。突如、襲った下から突き上げるような強い揺れに、東京都民は息を呑んだ。


1月28日午前8時59分ごろ、東京湾を震源とする地震が発生したのだ。


震源の深さは80キロ、地震規模M4.8の地震だったが、東京23区と横浜などで最大震度4を記録。津波もなく、帰宅困難者も出ることはなかったが、一時は東海道新幹線が緊急停止し、都内各地のエレベーターが停止したほどだった。


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武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏が言う。


「この地震は、太平洋プレートがフィリピン海プレートと北米プレートを押して生じたものです。震源が80キロと深かったので震度4で済みましたが、もう少し浅く40~50キロ付近で起きていたら震度6クラスになっていたかもしれません」


ちなみに、首都圏では昨年5月に千葉県東方沖(M6.2)、千葉県南部(M5.2)、新島・神津島近海(M5.3)を震源とする地震が頻発。当時から首都直下の巨大地震の発生が危ぶまれていたが、今回は震源が東京湾の陸に近い地点で、警戒される相模トラフではなかったことも不幸中の幸いだったと言える。


もっとも、相模トラフを震源とする巨大地震は、いつ起きてもおかしくない状態にあるという。


「相模湾から房総半島沖へと続く相模トラフは、1923年に起きた直下地震、関東大震災(M7.9)の震源地。しかも太平洋プレート、フィリピン海プレート、北米プレートが重なり合い、それぞれのプレート内と境界部で大地震が起きる可能性が指摘されているのです」(科学誌編集者)


また、科学ライターもこう語る。


「今では太平洋プレートやフィリピン海プレートも活性化している。能登半島地震も太平洋プレートの活発化とプレート内から漏れ出た地下水が断層を滑らせたといわれているが、これと同じことが首都近郊で起きる可能性も大なのです」

M6~7クラスの地震が頻発!?

近年の研究によれば、関東に甚大な被害をもたらす直下型巨大地震は、約200年サイクルで発生することが判明している。

昨年は大正時代に起きた関東大震災から100年目にあたったが、周期の後半になるにつれて地震が頻発する傾向が高いともいわれているのである。


「そのため、関東は折り返し地点を過ぎ、地震の活動期に入ったとみられている。今後はM6~7クラスの地震も増えていくはずです」(前出・科学誌編集者)


実際、「江戸時代の関東大震災」ともいわれる1703年の元禄地震(M8.2)と大正時代の関東大震災には220年の間があるが、前半は南海トラフを震源とした宝永地震(1707年=M8.4)の被害を受けたものの、それ以外は静穏だった。


ところが中盤から後半にかけては、次に挙げる8つの直下地震が起きているのだ。


①1782年「天明小田原地震」(M7.0) ②1853年「嘉永小田原地震」(M6.7) ③1855年「安政江戸地震」(M6.9) ④1894年「明治東京地震」(M7.0) ⑤1894年「東京湾付近の地震」(M6.7) ⑥1895年「茨城県南部の地震」(M7.2) ⑦1921年「茨城県南部の地震」(M7.0) ⑧1922年「浦賀水道付近の地震」(M6.8)


ちなみに、2014年に政府は相模トラフでM7クラスの地震が発生する確率を発表。10年以内が30%、20年以内が50%、30年以内が70%としたが、すでに10年の時が過ぎ、地震周期が後半に入ったことを考えれば、その確率はさらに高まっているはずだ。

タワマン住民が“高層難民”に

気になるのは、実際に関東を揺るがす大地震が発生した場合、どんな被害が生じるかだが、防災ジャーナリストの渡辺実氏はこう語る。

「首都直下地震発生時の東京湾は非常に危険で、仮に自衛隊が救助に来ても沿岸部にある石油コンビナートや火力発電所で火災が発生すれば海からのアプローチもできなくなる。また、至る所で火災が起きる。さらに東京都は被害想定から外したが、津波が起きる可能性もゼロではないのです」


危ないのは海だけではない。高層マンションが林立する首都圏では、長周期地震動が大きな被害をもたらす可能性も高いという。


「内閣府の発表では、南海トラフ地震が発生した場合、首都圏の高さ200~300メートルのビルの最上階の揺れは最大2~3メートルと予想されている。首都直下では、さらに大きく揺れる可能性もあるのです」(前出・科学ライター)


臨海部に林立するタワーマンションのデペロッパーは、「100メートル近い杭が打たれており安心」と説明するだろうが、それはあくまで計算上の話。激しく揺れる室内では冷蔵庫や家具、食器などの家財道具が凶器となりかねない。


また、街の至る所で水道管やガス管、下水道管が破裂、火災や地割れ、液状化が起きる一方、残った家屋やマンションではトイレが使えなくなり、当初は自家発電装置で動いていたエレベーターも数日で止まってしまう恐れもある。


前出の渡辺氏は「本震に続いて、本震並みの大きさの余震が何度か続き、タワマン住民などは〝高層難民〟化する可能性がある」と指摘する。


実は、東京23区は100年近く震度6以上の揺れを経験していない。その経験値の低さが、被害を拡大させる可能性も否めないのだ。