『やさぐれトラックドライバーの一本道迷路 現場知らずのルールに振り回され今日も荷物を運びます』KADOKAWA
『やさぐれトラックドライバーの一本道迷路 現場知らずのルールに振り回され今日も荷物を運びます』KADOKAWA

『やさぐれトラックドライバーの一本道迷路 現場知らずのルールに振り回され今日も荷物を運びます』著者:橋本愛喜~話題の1冊☆著者インタビュー

橋本愛喜(はしもと・あいき) ライター。大阪府出身。父親が経営する工場でトラックドライバーとして日本各地を走る。日本語教師などを経て渡米。現在は日本の社会問題、ブルーカラーの労働問題を主軸として幅広いメディアで取材/執筆を行う。
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――物流運送の「2024年問題」が迫っています。実際に何が問題視されているのでしょうか。


橋本 「2024年問題」は、トラックドライバーをはじめとする職業ドライバーの「働き方改革関連法」施行により起こる問題です。この働き方改革は、2019年にほぼすべての業種ですでに実施されていますが、「長時間労働に是正がかかるから」という理由で職業ドライバーには5年の猶予が与えられていました。その猶予期間が切れ、24年4月1日から時間外労働が年間960時間に制限されます。労働時間が短縮されることで、ドライバー不足がより悪化するでしょうね。このまま何も対策をしなかった場合、30年には国内の荷物量の35%が運べなくなるという試算が出ています。


――この法律の施行でドライバー不足が加速すると、どのような問題が発生するのでしょうか?


橋本 真っ先に心配されるのは「宅配」ですが、実は物流の総輸送量でいうとわずか7%以下。24年問題の真の当事者は、生産工場から物流センター、物流センターからスーパーの輸送を担う「企業間輸送」のトラックなんです。つまり、商品自体が作っても届かなくなる問題が一番懸念されているのです。この問題は1999年に流行った『ノストラダムスの大予言』のように同年同日を無事に越えれば終了するものではなく、むしろ同年同日からが「始まり」なんです。

かつては「ブルーカラーの花形」だった

――かつて、トラックドライバーは高給取りといわれていました。現状ではどのくらい稼げているのでしょうか?

橋本 かつては「ブルーカラーの花形」と呼ばれ、1000万円稼ぐドライバーがいた中、過去に起きた規制緩和などのせいで、今や時給500円という人がいるほどドライバーの給与水準は下がっています。そんな中、労働時間が短くなれば、歩合制で働いているドライバーの賃金はより下がることになるでしょう。


――我々も運賃の値上げを覚悟する必要がある?


橋本 運賃を上げないと、輸送を依頼するメーカーは、今後輸送が滞り倒産することすらあり得ます。メーカーは誰の顔色を見るかといえば、我々「消費者」です。企業間輸送の運賃は宅配と違い、表面化されず物価に埋もれてしまう。商品値上げのニュースがあるたびに消費者からは反発の声が上がりますが、見えないところで我々の生活を支えてくれる人たちのため、そして今後の我々自身の生活のためにも、運賃の引き上げによる物価上昇には理解と許容が必要です。彼らを取材していて強く思う次第です。


(聞き手/程原ケン)