(画像)Mr.Thanathip Phatraiwat/Shutterstock
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深刻な大工不足で「震災復旧」進まず…“3K”の先入観と賃金安価で激減か

能登半島地震で石川県だけでも、4万3000戸を超える(1月27日時点)住宅が被害を受けた。業界団体などは応急仮設木造住宅の建設作業に従事する職人を募集しているが、大工不足が深刻化している。


総務省の国勢調査によると、2000年に64万6767人いた大工は10年に40万2120人、20年は29万7900人に激減、その後も減り続けている。


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「特に、若者の大工離れが著しい。90年に15〜19歳の大工は1万6657人いたのが、10年には2150人、20年2120人と減少。同年の65〜69歳は4万8450人で、65歳以上が約3割を占め、大工の高齢化に一段と拍車が掛かっています。若い世代になり手がいないのは専門技術が必要な上、ハードな仕事にもかかわらず賃金が安すぎるからです」(住宅情報誌ライター)


厚生労働省の『令和4年賃金構造基本統計調査』では、大工の平均年収は10人以上の企業規模で406万6600円。1000人以上の規模で458万5200円。ただ、建設職人を中心に作る全国建設労働組合総連合(全建総連)によると、大工は個人事業主の『一人親方』や5人未満の小規模が多く、全建総連に加盟する県連や組合の調査では、21年の大工の年収は387万9000円で、日本の給与所得者1人当たりの平均年収443万円を大幅に下回っているという。

社員化が遅れていた

「賃金の安さもさることながら、若者の大工離れは〝きつい・汚い・危険〟という3Kの先入観のほか、〝技は盗むもの〟といった職人気質に抵抗感を持つ若者が多いからです。なのに、業界内部からは危機感の声が上がってこない。住宅建築の大工は大半が一人親方だから、個人で仕事を請け負っている。『大工は自分の代で廃業』と考えている親方も多いんです」(建築ジャーナリスト)

ビル建築の場合は、ゼネコンの下請けで働いている職人などの社員化が進んでいる。しかし、住宅建設の現場は社員化が遅れ、法的な雇用制度の枠に入っていないケースも多く、低い賃金水準が続いている要因にもなっている。


「住宅メーカーでも大工の社員化を進めようとしているが、下請けの町の工務店などでは社員化が進んでいないのが実情。今後、大工が不足して困るのは新築住宅より、中古住宅のリフォームです。組み立てしか経験のない作業員には対応できない。能登半島地震で応急仮設住宅の建築や修築が急がれていますが、全国からどれだけ大工や職人が集まるかが、復旧作業を大きく左右します」(前出・住宅情報誌ライター)


2035年には大工が15万人に半減する予測もある。被災者が一刻も早く住み慣れた我が家で暮らせるよう、願わずにはいられない。