『ハマス・パレスチナ・イスラエル――メディアが隠す事実』扶桑社新書 
『ハマス・パレスチナ・イスラエル――メディアが隠す事実』扶桑社新書 

『ハマス・パレスチナ・イスラエル――メディアが隠す事実』著者:飯山陽~話題の1冊☆著者インタビュー

飯山陽(いいやま・あかり) 1976(昭和51)年東京生まれ。イスラム思想研究者。麗澤大学国際問題研究センター客員教授。上智大学文学部史学科卒。東京大学大学院人文社会系研究科アジア文化研究専攻イスラム学専門分野博士課程単位取得退学。博士(文学)。
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――イスラム原理主義組織ハマスが昨年10月7日、イスラエルに対する大規模な無差別テロ攻撃を開始しました。なぜ攻撃をしたのでしょうか?


飯山 ハマスはもともと、イスラエル殲滅、つまりイスラエルという国家をこの世から消し去ることを目的に結成された武装テロ組織であり、10月7日以前から頻繁にイスラエルを攻撃してきました。今回の大規模テロの背景としては、イランや北朝鮮などからこれまで以上に大量の資金、武器の供与を得ることに成功したこと、アラブ諸国とイスラエルの関係正常化を阻止するためといった背景が考えられます。


――G7各国が〝テロ〟と認定したにもかかわらず、当初なぜ日本は追従しなかったのでしょうか?


飯山 日本の外交は基本的に米国追従型ですが、中東外交に関しては「欧米とは異なる日本独自の外交」を実践するというのが外務省の大方針です。具体的には「バランス外交」といって、米国の敵であるイランを含む、すべての国と友好関係を維持するというものです。ハマスの攻撃をテロと認定したら、日本が石油を依存する湾岸アラブ産油国を刺激する可能性がある、もし産油国の機嫌を損ねたら1973年のオイルショックの二の舞いだ、だからやめておこう、とでも思ったのかもしれません。

無差別テロを美化している

――ハマスとは、どのような組織なのでしょうか?

飯山 ハマスはイスラム過激派テロ組織です。世界のすべてをイスラム法統治下に置くという、宗教的イデオロギーに立脚した目標を掲げ、その目標達成のために武力によるジハードを実践するのが特徴です。彼らは自らを、占領され抑圧されたパレスチナの解放のために戦う正義の戦士と位置付け、イスラエルに対する無差別テロ攻撃をジハードと呼んでこれを美化し、そのためならば老若男女を殺してもいい、ガザの子供や女たちを「人間の盾」として利用することも一向に構わないと信じています。


――最終的にハマスとイスラエルとの戦闘は、どのような形で決着が付くと思いますか?


飯山 イスラエルはハマスの軍事インフラを完全に破壊し、ガザを武装解除することを目標にしています。ハマスの幹部はカタールやトルコなど外国に潜伏しており、ハマスのイスラエルに対する憎悪イデオロギーもパレスチナ人に深く根付いているので、ハマスの完全な「根絶」は難しい。戦後に関してはまだ国際的合意はありませんが、パレスチナ人自身が統治するという方向性についてはおおむね合意されています。 (聞き手/程原ケン))