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橋下徹氏がニオわす「大阪万博中止」のサイン!? プランB“F1招致”への転換

橋下徹
橋下徹(C)週刊実話 

家屋の倒壊、道路の寸断、海底隆起などで甚大な被害をもたらした「能登半島地震」。政府によれば、石川、富山、新潟3県の被害総額は1.1兆〜2.6兆円。新年度の予算編成にも大きく影響し来春の「大阪・関西万博」に暗い影を落としている。

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同万博は大阪市此花区の人工島・夢洲を会場に来年4月13日〜10月13日に開催を予定している。費用は国と大阪府・市、そして実質的主催者の財界が3分の1ずつ。国負担は1647億円というが、これは日本政府が出展する日本館の費用など。会場周辺の道路、地下鉄、バスなどのインフラ整備には約9.7兆円が必要で、地震の被災地支援の足かせとなる。その上、地震の復旧工事と万博のパピリオン建設が重なり、ゼネコンの職人不足が深刻。メディアの世論調査でも約7割の国民が万博の中止または延期、縮小を望んでいる。強硬派には苦しい展開だ。

そんな渦中にあって、元大阪府知事・市長で弁護士の橋下徹氏が思わぬ行動に出た。1月18日に放送された関西テレビの情報番組『旬感LIVE とれたてっ!』で「いよいよ、となったら万博の中止・延期も考えるべき」と発言し、万博中止の可能性が急上昇したのだ。

自身のX(旧ツイッター)でも《僕は万博はやるべきだという意見。ただ、被災地の復旧復興、被災地の支援にはお金も人員も必要ということであれば、万博よりも優先されるべきだ。万博の中止・延期も考えないといけない》とつぶやき、市と府、維新の会に〝撃ち方やめ〟のシグナルを送った。

大阪維新の会初代代表の橋下氏は、盟友・松井一郎氏(元大阪市長・知事)とのタッグで大阪・関西万博の誘致を提唱し、尽力してきた人物。その言い出しっぺが中止・延期のサインを送ったことで、陣営は「プランB」(夢洲でのF1招致)に転換した。

大阪観光局(大阪府と市、大阪商工会議所などで構成する財団法人)は1月23日、大阪へのF1誘致を正式に発表した。

会見で溝畑宏理事長(元観光庁長官)は「さまざまな課題はあるが、誘致は可能だ。大阪にF1を招致したら、参加したいという企業がすでに国内外に5〜10社あり、採算は取れる。海外の富裕層を呼び込むのに効果的」と説明。吉村洋文知事も「公道レースとなると思うが、民間主導での誘致は大歓迎。ホストタウンとしてできる限りのことはやっていく」と、バックアップを約束する。

入場料とスポンサーマネーで賄える

「モデルは昨年、F1を初開催して大成功したラスベガスGP(米国)です。深夜のレースにもかかわらず、ネオンがきらめくストリップ通りに31万5000人が繰り出した。経済効果は12億ドル(約1740億円)。夢洲でのカジノを運営するのはラスベガスに拠点を置くMGMリゾーツと日本のオリックスの共同出資会社。初期投資も1兆2700億円が見込まれる。嗅覚の鋭いF1界のドン、エクレストン氏が飛び付かないはずがない。カジノの開業に合わせ、29年からの開催内諾を得たとの情報もある」(スポーツ紙のF1担当)

近年のトレンドは、市街地でのF1開催だ。以前はモンテカルロ(モナコ)とアデレード(豪州)だけだったが、年々増え、今季は全24レース中、5レース(モンテカルロ、ラスベガス、シンガポール、マイアミ、バクー=アゼルバイジャン)が公道レース。

「NetflixやDAZNで中継され、F1不毛のアメリカで火が付き、中東、アジアでもファンが飛躍的に増えた。実は招致の最大課題が『宿泊施設』。大阪開催なら日帰りが可能だし、近隣にホテルも多い。以前は20〜30億円が相場だった開催権は100億円規模に跳ね上がっているが、プロモーター側には約30億円の放映権のフィードバックがあり、入場料とスポンサーマネーで十分に賄える。問題は公道の拡張と観客席の設置費だが、こちらはIRカジノの関連予算に組み込めばいい」(同)

日本の市街地公道を使ったF1招致計画は、何も今回が初めてではない。バブル期には大分県の平松守彦知事が別府温泉で、85年には横浜青年会議所が横浜スタジアムから山下公園の市街地で提唱。99年にも東京都の政財界が臨海副都心(お台場)で打ち出した。

大阪も15年に当時市長と知事だった橋下氏と松井氏が御堂筋でフェラーリのF1マシンを走らせ、将来のF1開催をアピール。19年には当時大阪市長だった吉村知事が、万博後の夢洲でのF1招致を表明した。

「いずれの計画も叶わなかったのは、他国との競争もあるが、F1に公道使用を認めない道路交通法の壁が大きかった。しかし今般、大阪市と維新の会がゼネコンと政府に恩を売る形で万博中止を差し出せば、道交法の改正が見込める」(大手シンクタンク)

F1オタクは、日本にはF1ホンダのホーム・鈴鹿サーキットがあり、大阪招致は無理だと決めつけるが、さにあらず。94、95年には鈴鹿の日本GPとともに当時のTIサーキット英田(岡山)でF1パシフィックGPを同時開催し、「2本GP」を誕生させた。

今年から鈴鹿の日本GPが秋から春(4月5〜7日)に移る。物流、人流の効率化が狙いだが、鈴鹿と上海の中国GPの間に大阪GPを組み入れれば、すべてがスムーズに運ぶ。1月27日、高市早苗経済安保相も大阪万博延期を岸田首相に進言したことを明かした。

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