(画像)Evan El-Amin/Shutterstock
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メジャー“ポスティング移籍”廃止へ!? トランプ大統領誕生での目論み

「米国第一」を掲げるトランプ氏が、大統領選の初戦から圧勝を続け、球界に衝撃情報が駆けめぐっている。「返り咲けば米国選手の雇用を守るため、ポスティング・システムを廃止する」。トランプ氏はドジャース嫌いで知られ、大谷、山本由伸のダブル獲りで即断か。


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11月の米大統領選に向けた共和党の候補者選びで、早くも独走態勢に入ったトランプ前大統領(77)。支持者に白人の労働者層が多く、「白人が優位だった古き時代、私たちの国を取り戻そう」と呼びかけているが、これが米大リーグ(MLB)にも波及した。


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アメリカが抱える最大の問題が、外国人移民の就労で、米国人の雇用が脅かされていること。トランプ氏の選挙対策本部が目を向けたのが、日本を含めた外国人プレーヤーの規制。この煽りをもろに受けそうなのが、ポスティング・システム(PS)を使った日本人選手のMLB挑戦だ。


「昨オフ、ロッテ・佐々木朗希(22)が突如、球団にメジャー移籍を直訴した。代理人筋からトランプ氏が大統領になれば、PSは2023年が最後になる、との情報を得たからです。結果、叶わなかったが、滑り込みセーフに賭けたのです」(スポーツ紙記者)


海外FA権(一軍登録9シーズン)を有しない日本人選手がMLBに転身するには、MLBと同選手会、日本野球機構(NPB)が定めた「PS」を活用する以外に手がない。


現行の同制度は見直しが検討されているが、トランプ氏は即刻廃止しようと目論んでいる。


日米野球に詳しい球界関係者が話す。


「いくら大統領といえども、MLBとNPBが決めた協定に口出しすることはできない。しかし、制止は可能だ。大統領令で労働ビザを発給しなければ、事が済む。トランプ氏に『米国民のため』というエクスキューズがあり、誰も止められない」


トランプ氏が米4大スポーツ(NFL・アメリカンフットボール、NBA・バスケットボール、NHL・アイスホッケー、MLB)の中でMLBを目の敵とするのは、外国人選手の数がずば抜けて多いからだ。メキシコ、カナダ、ドミニカ、パナマ、ベネズエラ、プエルトリコ、オーストラリア、台湾、韓国、そして日本。とりわけ近年は日本人の優秀な若手選手が押し寄せ、米国選手の活躍の場は狭まるばかり。

生粋のヤンキースファン

トランプ氏は、メキシコ国境からの不法移民流入を防ぐため〝国境の壁〟建設を訴えているが、野球においても「PS」を廃止することで、日本人選手の流入に歯止めをかけようとしているのだ。

「来るのは拒まない、ただし、松井秀喜(巨人)や今回の松井裕樹(楽天)がそうしたように、海外FAの正規ルートで来いと。筋は通っている」(MLB解説者)


このオフ、ドジャースに移籍した大谷翔平(29)の契約は、スポーツ界世界最高の10年7億ドル(約1015億円)。PSでドジャース入りした山本由伸(25)は、12年465億円。カブス入りした今永昇太が、5年116億円。巨額の新規契約が相次いでいる。


昨年も吉田正尚(30)がPSを使って5年126億円でレッドソックス入り。パドレスのダルビッシュ有(37)は、契約を延長して6年142億円に。日本人選手が米国選手の雇用を奪うとともに、大量のドルが日本に流出している。


これだけでもトランプ氏にとっては腹立たしいが、その怒りを増幅させたのが日本人選手を根こそぎ獲得しているロサンゼルス・ドジャース。潜むのが両者の極悪因縁だ。


「トランプ氏の娘婿(イヴァンカさんの夫)で、元大統領上級顧問クシュナー氏のファミリーは、12年にドジャースの買収に入札し、競り負けた。落札したのはNBAの元スター、マジック・ジョンソン氏らのグループです。そのジョンソン氏は、トランプ氏の政敵ヒラリー・クリントン氏の熱烈な支援者。ロサンゼルス市長のカレン・バス氏(民主党)は、下院議員時代にバイデン大統領の副大統領候補にも名前が挙った黒人女性。そんな因縁からトランプ氏は大谷と山本を札束でかき集め、我が物顔をするドジャースが気に入らない。生まれがニューヨークでもあり、生粋のヤンキースファンですから」(地元紙のドジャース担当)


「メジャーリーグは我々のものだ。違法な外国人選手を排除しろ」


トランプ支持者が気勢を上げるのはこのためだが、実はMLBオーナーのほとんどが「PS廃止」に賛同している。


PSを使ってMLBに移籍する日本人選手には、契約金・年俸とは別に譲渡金(年俸額によって15〜20%)の支払いが義務付けられている。


山本の古巣オリックスに約72億円。今永のDeNAに14億2000万円。前年の吉田移籍でもオリックスに21億円。譲渡金の引き下げ前のPSでは、ダルビッシュ有(レンジャーズ)、松坂大輔(レッドソックス)にそれぞれ70億円。正規のFA移籍だったら0円で済んだのに、だ。


日本球団にとって、PS移籍は〝両刀の剣〟。戦力的には痛手だが、球団の総年俸さえ上回る譲渡金は大きな魅力と言える。PSを廃止すれば、日本の球団は海外FA資格を得るまで選手を手放さない。そうなれば米国選手の雇用確保は格段に向上する。トランプ氏の狙いは、そこにある。


今回の日本選手流入を制御するためのPS廃止論は、大統領選へ向けた、民主党・バイデン大統領=ドジャース、共和党・トランプ前大統領=ヤンキースの代理戦争でもある。


今季両チームの対決は、6月7〜9日のニューヨーク・ヤンキースタジアムでの3試合だけ。大谷を奪われてド軍を逆恨みするヤ軍ファンにトランプ氏の岩盤支持者が加わり、大荒れの試合になるのは必至だ。