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舞台裏を知ったからこその「M-1グランプリ」~島田洋七『お笑い“がばい”交遊録』

島田洋七
島田洋七 (C)週刊実話Web

2001年から始まった日本一の若手漫才師を決めるコンテスト『M-1グランプリ』が昨年末に生放送され、大いに盛り上がりましたね。昨年は史上最多の8540組がエントリーしたというじゃないですか。もはや社会現象ですよ。漫才師としては、多くの若者が漫才をしてくれることが嬉しいですね。


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俺は2002年~2006年の5年間、審査員を務めましたけど、実はテレビで敗者復活戦からすべて見たのは今回が初めてだったんです。弟弟子の島田紳助と一緒にM-1を立ち上げた谷良一さんが、その誕生までを綴った著書『M-1はじめました。』(東洋経済新報社)を送ってくれて読んだんです。同書にはスポンサー集めなど何から何まで簡単にできた大会ではないことが描かれていた。

M-1も最初の1~2年は今ほど盛り上がっていませんでしたよ。大会の舞台裏を知ったからこそ、今回は余計に感動しました。

肝心の感想はというと、優勝した令和ロマンは漫才に個性と人間味が滲み出ていて面白かったですよ。2位になったヤーレンズは、構成が上手で、随所にオチが入っているし、スピード感もあった。前回大会で惜しくも敗れたさや香にも期待していましたけど、優勝したい気持ちが空回りしたのか、特別なことをしようとしてよくわからなかったですね。

審査員は令和ロマンかヤーレンズのどちらを優勝させるか迷ったと思います。審査員が誰に入れるかによって、1000万円を手にするコンビが決まるし、大会以降、半年くらいはM-1特需で出演番組も急激に増えるわけですからね。

敗者復活戦にも面白いコンビが

だからこそ、審査員も緊張しているんです。もちろん、出場している漫才師も緊張はしていますよ。でもね、出場している芸人のみんなが緊張しているわけですから言い訳にはできませんよ。

敗者復活戦も面白いコンビは何組かいましたね。中でも敗者復活戦を勝ち抜いたシシガシラは、敗者復活戦では歌を使い、ハゲているけどハゲてるとは言わないというネタですごく面白かった。でも、本戦ではハゲいじりをした。やはり時代の流れとして、見た目をいじるネタはお客さんも笑わなくなってきましたね。

他にも、モグライダーに期待がかかっていたと聞きました。彼らは稽古をしないらしいですね。ただ、ネタ時間が決まっているコンテストでは稽古しないと難しいでしょう。ライブであれば十分な持ち時間があるから、アドリブでも爆笑を誘えるとは思いますけどね。

今大会に約8500組、計1万6000人以上がエントリーした。これが野球なら、まずドラフトがありますから1万6000人もプロの世界に飛び込めませんよ。仮に、ドラフト上位になってプロの世界に飛び込んでも、一軍に上がれない場合もある。逆にドラフト下位でもものすごく活躍する選手もいるでしょ。

俺は今まで漫才で生活することができた。その漫才の大会に向けて1万6000人以上が下手だろうがなんだろうが、漫才は難しいけど稽古し続けてくれたんです。それを考えただけでも、素敵なことやなって思いましたよ。

島田洋七
1950年広島県生まれ。漫才コンビ『B&B』として80年代の漫才ブームの先駆者となる。著書『佐賀のがばいばあちゃん』は国内販売でシリーズ1000万部超。現在はタレントとしての活動の傍ら、講演・執筆活動にも精力的に取り組んでいる。

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