
「大麻逮捕」の後日談・警察からのスパイ勧誘~最終回『放送作家の半世(反省)記』
私が大麻取締法違反で逮捕された1990年は、取り調べ中の雑談から推察すると「麻薬取り締まりの強化月間」的な内部キャンペーンが張られていたらしく、月に1回はそのキャンペーンにふさわしい有名人を逮捕しようと、警察も躍起になっていたようだ。
同年1月には、あの勝新太郎氏のパンツの中にコカインが入っていたし、2月は歌手のホキ徳田氏、3月は私と連続で大麻取締法違反により逮捕された。私は芸能人でも何でもないが、人気番組をいくつか抱える放送作家だったので、芸能界に薬物が蔓延しているという、言うなら〝象徴〟として使うにはもってこいだったそうだ。
【関連】人生を大きく変えた「大麻逮捕」の一部始終~第20回『放送作家の半世(反省)記』 ほか
また、私の手元まで流れてきた大麻の密輸ルートをたどった際、その〝芋づる〟で逮捕された者の中には、当時、わんさかと芸能人が通っていた東京・西麻布の有名バー『R』の店員が数名含まれていた。
この『R』は、もともと安岡力也氏をはじめとする内田裕也氏とそのファミリーの溜まり場で、長渕剛氏、吉川晃司氏、チェッカーズの武内亨氏や藤井尚之氏、TUBEの前田亘輝氏など、名だたる人気アーティストも同店の常連だった。
中には薬物事件の前科を持つ者もいるが、その他の面々が薬物を使用していたかどうかは別として、私を逮捕した麻布署防犯特別捜査隊の狙いがどこにあるのかは一目瞭然だろう。結局、最初に確証の取れた私が、代わりに逮捕されたようなものだった。
取り調べ中の雑談によると、私にしても「家に(大麻を)持っていなけりゃ、逮捕できなかったのに」とのことで、私の次に収容されたトラックドライバーは先の〝芋づる〟に含まれていたものの、すぐに大麻を吸い尽くしてしまったため1グラムも所持しておらず、10日間の勾留(逮捕から12日間)で放免された。
スパイ報酬はビール券8本分!?
そのドライバーは収容された翌日、私と対面したときに「ラジオを聞いていたら吉田照美さんが、『いつもここ(文化放送)のロビーで原稿を書いていた。反省して立ち直ってほしい』って言ってましたよ」と教えてくれた。照美さんもこんなことで名前を出されたくないだろうが、一方的に大変感謝している。さて、私は当時の彼女が手配してくれた私選弁護人のアドバイスもあり、知る限りの薬物使用者に対しては完全に口をつぐんだ。そして、自分の罪をすべて認めたからか裁判は5月末に結審し、私には懲役1年6カ月、執行猶予3年の判決が下された。
それから数日後、私を逮捕した警察官2人が突然、自宅マンションに訪ねてきた。私は自室に上げるのが嫌だったので、中目黒駅の改札横にあった喫茶店に移動。10分ほど近況報告や雑談をしていると、いきなり1人が茶封筒をテーブルの上に置いた。
そして「おまえが何人もかばっていたのは分かっている。だけど考えてみろ、おまえだけ捕まったのは悔しくないか? ほかのヤツらは、のうのうと生きているのに。これから定期的に名前を教えてくれたら、力になるぞ」と言って、念を押すかのように茶封筒をさらに私の前へと押しやってくるではないか。
そうして2人は茶封筒を置いたまま席を立ち、店を出て行った。つまり、私に「スパイになれ」と言いたいのか…自分で捕まえておいて。ちなみに茶封筒の厚さから中身は10万円程度かと予測したら、なんと、大瓶2本分のビール券が4枚だけ入っていた。ビール8本の報酬でスパイなんかやるわけがないだろ! それが偽らざる私の心境だった。
さて、編集部から機会を得ての連載だったが、お一人でもお楽しみいただけたら本望だ。いつかまた、再会の日を夢見て!
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