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蝶野正洋『黒の履歴書』~能登半島地震と羽田航空機衝突事故

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web

元日に能登半島で大きな地震が発生した。テレビの正月番組がすべて地震報道に変わり、徐々にその甚大な被害の状況が分かってきた。俺が心配になったのは、孤立してしまった地域に救援物資が届いていないことだ。

物資そのものは確保できていても、地震の影響で道が閉ざされていたり、山奥まで運ぶための車両が足りなかったりして、必要としている現場まで届けられていないんだよ。物資を備蓄するだけでは、まだ不十分。それをどう的確に振り分けて届けるか。そこまでをしっかりシミュレーションすることが〝災害対策〟なんだよ。


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これは人も同じ。熊本地震のときも問題になっていたけど、災害時は近隣の自治体や各市町村などから、消防や警察の人たちが派遣されてくる。でも、その人員を整理して現場に采配することは思った以上に大変で、過去には本部が混乱状態になり、せっかく現地に入った人たちが何日も動けなかったことがあった。

それともう一つ心配になったのは、被災した方々にしっかりと情報が伝わっているかどうかということだよ。テレビでは地震や津波警報だけでなく、避難所の状況や体を温める方法などをひっきりなしに放送していたけど、そもそも被災した方々がそれを見られていない状況だったと思う。電気が止まっているとスマホも頻繁に使えないし、そもそもスマホを操作できないお年寄りも多い。SNSなどでも情報を流しているけど、それもちゃんと受け取れていないだろうね。

そして1月2日に羽田空港で発生した、日本航空の旅客機と海上保安庁の航空機の衝突事故も衝撃的だった。原因は人為的なミスのようだけど、このような緊急事態のときほど、想定外なことが起きてしまうのかもしれない。

コロナ対策後の人手不足解消は…

俺は1月2日の朝に、ドイツから来ていたいとこの子を送りに羽田空港に行っていたんだよ。国際線のターミナルだったんだけど、旅客の人数はまだ少ないのにゲートがものすごく混雑していた。今は機械でパスポートを読み込むから入国審査や出国審査はスムーズになっているはずなんだけど、それでもなかなか列が進まない。これは単純に人手不足なんだと思ったね。

コロナ時に職員の数を少なくしたが、復活した現在、職員が戻ってきていないという話を聞く。労働環境の改善が進んで、就業時間や残業を減らした結果、人員が足りなくなったということもあるかもしれない。

それでも、就航する飛行機の数は以前と変わらない。これではそれぞれの負担が大きくなるだけなので、ミスが起きやすくなってしまう。

こういった人手不足による歪みは、これから日本の社会でどんどん問題になっていくと思う。それが消防や防災関係、そして医療や介護などのエッセンシャルワーカーにまで及ぶと、今回のような災害の救援活動にも影響が出てしまうんだよ。

近頃はルールやシステムを刷新してみたけど、社会の実態がそこに追いついていないケースも多い。高齢化社会、過疎化、人手不足といったこれからの日本社会に対応できる防災や救援体制、そして復興計画を改めて考え直すべきだと思うよ。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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