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“東京五輪中止”後の『新国立競技場』転用こそ橋本聖子会長へのご褒美?

“東京五輪中止”後の『新国立競技場』の用途はサッカーか野球か
(画像)Tomacrosse / Shutterstock.com

迷走の末、女性蔑視発言で辞任した森喜朗元総理の後任に、橋本聖子五輪担当大臣の就任が決まった。「貧乏くじを引かされた」の声もあるが、話は逆。託されたのは利権が潜む「五輪中止後の新国立競技場の処理」。ここにプロ野球本拠地問題が再浮上――!

全国紙では報じられていないが、今回の東京オリンピック・パラリンピック組織委員長交代のドタバタ劇の裏に、新国立競技場の五輪後の後処理問題が隠されている。当初、後任には森氏が推す川淵三郎氏(元日本サッカー協会会長)で決まりとみられ、川淵氏自身も受諾の意向を報道陣に明かしていたが、官邸や組織委員会幹部から「選考過程が不透明」と横槍が入り、一転して消滅。結局、菅義偉首相が推す橋本氏の就任で一件落着した。

しかし、その背景にあったのが、森氏が隠密に進める新国立競技場を世界的なサッカー場に改修するという計画だった。森氏が川淵氏へ強引に禅譲を図ったことでそれが発覚、政府が待ったをかけたのである。官邸番記者が明かす。

「各メディアの世論調査では、国民の約8割が『五輪は開催すべきではない』と反対しています。当然、森氏も中止を視野に入れていましたが、とても口にできなかったのです。各競技場の維持管理や仮設の撤去、復旧など、難題が山積していますから。その意味でいうと、今回の辞任劇は渡りに船。しかし、好んで火中の栗を拾う人はなく、辞任するにあたって川淵氏と橋本氏に候補を絞り、2方向で後処理計画を主導したのが真相です。言葉を換えれば、プロ野球とサッカーの代理戦争に行き着きます」

再浮上したプロ野球球団による本拠地活用

今後、政府に重くのしかかるのが、新国立競技場の後処理問題だ。世界的建築家・隈研吾氏が設計し直した建設費が1530億円。50年で償却したとしても、年30.6億円かかる。これに年間維持費が24億円。一つ間違えれば、令和の戦艦大和になりかねない。

そこで、ラグビーのワールドカップの日本招致を成功させ、サッカーにも造詣が深い森氏が絵を描いたのが、Jリーグ創設者である川淵氏の担ぎ出しだった。1972年のミュンヘン五輪後、メインスタジアムをドイツの強豪、バイエルン・ミュンヘンが本拠地スタジアムに転用した「サッカー場への改修」という成功例を再現するわけだ。

「陸上のトラックを残して活用するには、確かにこれがベストの選択だろう。そこで、川淵氏に資金力のある楽天の三木谷浩史会長率いるJ1ヴィッセル神戸などの国内の有力クラブに働きかけてもらい、8万人を収容するビッグスタジアム改修を狙った。そうなれば、東京五輪中止の無念も晴らせ、歴史に名も残ると…」(スポーツ紙デスク)

しかし、政府をはじめ、候補者検討委員会委員長の御手洗冨士夫氏(キヤノン会長)など財界首脳が下した結論は「サッカーへの本拠地活用は日本に馴染まない」というもの。そこで森氏は川淵氏を見切り、プロ野球誘致に方向転換。〝愛娘的存在〟の橋本氏擁立にシフトチェンジしたのだ。

「新国立競技場に強く求められるのは、稼ぐ力とスピード感。そして、IOCのバッハ会長が強く望むのがジェンダー(男女平等)。夏冬合わせて7回の五輪に出場し、五輪担当大臣、日本女子プロ野球リーグの名誉顧問を務める橋本氏のキャリアは、山下泰裕JOC会長、小谷実可子同理事の敵ではなかった」(同)

森氏の意を汲む橋本氏が手本にすると言われるのが、96年のアトランタ五輪だ。五輪の閉幕後、オリンピックスタジアムを改築してメジャーリーグのアトランタブレーブスが本拠地として2016年まで活用。現在はアメリカンフットボールの専用スタジアムに再改修されている。

実は東京五輪後、プロ野球球団による本拠地活用が検討された時期もあったが、当時は経済が順調だったため採用されなかった経緯がある。それが、このコロナ禍で再浮上しているのだ。

東京ドームの建て替えを計画している巨人が有力

その用途変更の鍵を握るのは、実は総理でも小池百合子知事でもなく、東京五輪組織委員長。予定通りの開催、外国人観覧客の受け入れ、無観客開催の決定ばかりでなく、開催及び中止決定後の処理も担うからだ。

「テレビの情報番組などでは、橋本氏が大臣の辞職に伴い、首相に〝補填〟を相談したなどと報じられていたが、そんな心配はいらない。新国立競技場を含め、五輪の後処理には数百億円のカネが動く。橋本氏は昨年10月に父・善吉さんを亡くしたが、この人は中央競馬で8戦無敗の名馬マルゼンスキーを輩出したことで知られる牧場主。ところが、バブル崩壊の影響で20億円以上の負債を抱えたという。その影響で、橋本氏も億単位の借金を背負ったらしい。今回の委員長就任は、まさにピンチをビッグチャンスに変える好機」(有力国会議員秘書)

順当なら、隣接する神宮球場を本拠地とするヤクルトの移転が自然に映るが、実は東京ドームの建て替えを計画している巨人が有力だという。橋本氏は駒大苫小牧高の出身で、今季、ヤンキースから楽天に戻った田中将大投手は後輩。田中の契約は2年だが、その後はメジャー復帰する以上に巨人に移籍する見込みが高いと言われている。

橋本氏自身も巨人ファンと言われている。新国立競技場で後輩の勇姿を心待ちにするとともに、五輪後の新国立の収益向上に算盤を弾いているのだろうか。

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