日本全国釣り行脚(C)週刊実話
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『ギンブナ』千葉県袖ケ浦市/蔵波川産~日本全国☆釣り行脚

この連載では〝気になる車窓〟という釣り場を度々取り上げております。もっとも、車窓といっても風光明媚な海岸などではなく、一瞬で通り過ぎるドブのようなものが多いのですが。列車で走り過ぎる瞬間に、〝妖しげな雰囲気〟を放つドブを見るにつけ、「いつか機会を見てアソコで竿を出したい…」と思うのであります。


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千葉県内を走るJR内房線に乗ると、長浦駅付近で蔵波川という小さな川を渡ります。ずいぶん前に、その小さな水路の青いよどみを目にした際になんとなく気になるものがあり、今回訪れた次第。長浦駅から歩いて程なくして到着すると、適度な深みに青くよどんだ水面は、秋のハゼ釣りが面白そうな雰囲気です。とはいえ、今は真冬。見える範囲に魚の姿はなく水中に活気は感じられません。でも、いいんです。気になる車窓の場所に実際に足を運び、竿を出せればそれで半ば満足なのです。


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早速、安物の磯竿に1本針のシンプルな仕掛けでエサのアオイソメを1尾掛けにし、水路の対岸寄りの深くなっているあたりに投げ入れます。果たして何か釣れるのでしょうか。


マハゼ 日本全国釣り行脚(C)週刊実話

しばらく待ってもアタリはなく、放置すること30分ほど。プルプルンッと竿先が揺れたように見えました。ダメ元の釣りの場合、この瞬間のドキドキはたまらないものがあります。竿を手にリールを巻くと掛かっていたのは15センチほどのマハゼ。この場所であれば釣れて然るべき魚ではありますが、時期外れの初めての場所では嬉しい1尾です。


マハゼであれば1尾だけということもなかろうと、エサを付け替え再び投入。先ほどと同じく20〜30分も放置した頃合いで、プルンプルンッと竿先が揺れてマハゼを追加です。穏やかな冬日和の陽だまりで、いつ来るとも分からないアタリを待つのもまたのどかで、ポツリポツリとマハゼを釣り上げバケツの中には6尾ほど。このペースなら日没までになんとか、ツ抜け(10尾以上)か…などと皮算用をしていると、フワッフワッと今までとは違ったアタリで竿先が揺れました。

クロダイか!? 重さにヒヤヒヤ

はて? と思う間もなく大きく絞り込まれる竿先。慌てて竿に駆け寄り合わせると、ズシンという重量感とともに安物の柔らかい磯竿が弧を描きます。このような場所で真冬の日中に型物がヒットするとは全く考えておらず、よく分からぬままにやりとり開始となりました。

小物向けの小針と細い糸ゆえ無理はできず、力強い引きと重量感に糸を出しつつ寄せにかかりますが、なかなか寄りません。と、黒銀の体高ある魚体が水底で反転。対岸の深みに向かって走ります。


「暖かい時期ならいざ知らず、こんな真冬に浅い水路でクロダイか?」とちょっと不思議に思いつつ、温排水が入っている様子もないし温暖化の影響なのかと、よく分からぬまま、とにかく切られないようヒヤヒヤしながらやりとり。そのうちに激しい抵抗も治まってまいりました。


と、ここで問題発覚。足場は高く、当然こんな魚が掛かるとは思っていなかったため玉網などはセットしておりません。とりあえず左手で竿を支えつつ、右手と口を使ってなんとか玉網をセット。ようやく確保の上、引き上げたのはクロダイ…ではなく、なんとギンブナでした。


ギンブナ 日本全国釣り行脚(C)週刊実話

こういった汽水域では時折、型のよいフナが釣れることがありますが、今回のギンブナも優に40センチはある良型。そもそもがダメ元の釣りゆえ、クロダイでなくとも納得の1尾となりました。もうコレがあれば晩の肴は十分。バケツのハゼは全部逃がしてから竿を片付け、長浦駅前にて温かいラーメンを啜って帰路に就いたのでありました。


日本全国釣り行脚(C)週刊実話

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と、思いのほか鍋には大量の脂が浮き、大型の寒ブナの脂乗りに少々ビックリ。出来上がって口にすると、鍋に浮いた脂に反して淡白といいますか、まあ普通ですな…。


ともあれ、気になる場所で竿を出せ、温まる鮒こくにもありつけたので満足。気になる車窓はまだまだありますので、機会をみてまたどこぞに赴きたいと思います。
三橋雅彦(みつはしまさひこ) 子どもの頃から釣り好きで“釣り一筋”の青春時代をすごす。当然の如く魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。