LiLiCo☆肉食シネマ~『朝が来る』/10月23日(金)より全国公開

『朝が来る』 監督・脚本・撮影/河瀨直美 出演/永作博美、井浦新、蒔田彩珠、浅田美代子、佐藤令旺、田中偉登、中島ひろ子、平原テツ、駒井蓮、利重剛ほか 配給/キノフィルムズ、木下グループ

お仕事お疲れ様です。私は日頃、マスコミの試写会で様々な作品を鑑賞します。もちろん、見た直後の気持ちが一番熱いけど、この1本の引きつけ方は魔法級ともいえるでしょう。

これは、子宝に恵まれなかった夫婦と、産んだ子どもの面倒を見られなかった14歳の少女との間のヒューマンドラマ。本作で、皆さんに考えていただきたいことは、〝特別養子縁組〟のことについてです。正直、日本ではまだ、あまり浸透していないし、先進国にもかかわらず、この問題については世界と比較してもスピードが違うような気がします。

日本に比べ、私の故郷、スウェーデンでは養子は珍しいことではありません。子宝に恵まれない方や、事情があって親と生活できない子どもの面倒を見たい、という気持ちの人もいる。スウェーデンの子どものイメージは、きっとブロンドで青い瞳でしょうが、ダークスキンだって、アジア系だって養子として来ています。つまり、私にとって養子とは、日常の中の光景なんです。

夫婦の悩みにミステリーが合わさって目が離せない…

日本でも、養子を迎え入れ、長い年月をかけて頑張って、やっと真の家族になれた友達もいます。日本の場合は、当然、日本人が来ることが多いので、スウェーデンみたいになることはないでしょうけど、それでも悩んでいる家族も多いので、この作品で現実を知り、そして何かを感じてほしい。

井浦新さんと永作博美さんが演じる栗原清和と佐都子夫婦。妊活が思うような結果にならず、2人で生きて行こうと決めたが、テレビで養子縁組のシステムを知って、また親になりたいと思う気持ちが強くなる。セミナーでいろいろ勉強し、いよいよ迎える時が来た。可愛い息子、朝斗。でも、同時に子どもにも真実を知る権利があると教えられる。つまり、実の子ではないことを、子どもが物事を理解できるような年齢になったら伝えることも大切ということです。それで育ての親を嫌いになることはないと思いますが、世の中、順風満帆とはいかないものです。

この家族に、産んだ母親から、ある日電話が…。「産んだ子どもを返してほしい。ダメならお金をください」と。彼女が14歳の時に一度会っていましたが、夫婦の前に現れた女性は、あの時の優しい面影が全くありません。ここから、リアルな夫婦の悩みに、さらにミステリーが合わさって、目が離せなくなるのです。