日本全国釣り行脚(C)週刊実話
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『タカノハダイ&キチヌ』静岡県沼津市/沼津港産~日本全国☆釣り行脚

皆さま、新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。


さて、新年1発目は縁起良く富士山でも眺めながら、〝めでたい〟にちなんでマダイなんぞを狙ってやろうかと、静岡県は沼津市にやってまいりました。急深の駿河湾に面し、水温の低い今の時期でも陸からマダイが狙える沼津。ところが、今回は冬の大西風で海上はウサギが跳ぶ大シケ。どこもまともな釣りにはならず、実績場を転々とするうちに少しずつ夕方の気配が漂ってまいりました。


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さてどうするか…。そこで思いついたのが沼津港の内港です。駿河湾の奥に位置する沼津港。その沼津港の中でも、最も奥まった内港であれば、この大シケでも竿が出せるだろうし、マダイがダメでもひょっとしたらクロダイなんかがいるかもしれない。新年早々、早くも雲行きの怪しい釣りになってまいりました。


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ひとまず市内に戻り、沼津港の内港からもほど近い富士山ビュースポット、狩野川河口に架かる港大橋から富士山に願を掛けます。


「もうマダイなどとぜいたくは言いません。タイ類、それもなるべく〝めでたいヤツ〟を、おねげぇします…」


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時刻は夕方。内港のような奥まったポイントは絶対的に夜釣りが有利ですから、日没までの時間調整も兼ねて腹ごしらえといきましょう。朝からひたすら竿を振り、何も食べていなかったこともあって今回はちょっとぜいたくを。内港すぐ近くにある当地の人気店〝うなぎ処京丸〟さんで絶品のうなぎと刺身に舌鼓。食べ終えた頃には日もとっぷりと暮れ、腹も気力も満たされて再出陣です。


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内港の最も奥の岸壁に来てみると釣り人は誰もおりません。もっとも、こんな奥まったショボくれた場所ですから、釣り場として見る人もあまりいないのかもしれません。とはいえ、常夜灯に照らされ妖しく光る水面からは何か気配が感じられ、期待を胸に安物のパック竿を用意。市販の胴突仕掛けにアオイソメを付けて岸壁の際に落とします。

待ってました嬉しいヤツ

しばらく探って、護岸が曲がっている〝いかにもな箇所〟に差しかかったところで、グンッ! と力強いアタリが出ました。胸の高鳴りを感じつつ、そっと竿先を下げ、スーッと持って行かれたところで竿を煽ると、ガシッ! とハリ掛かり。重量感のある力強い突っ込みに糸を出し、寄せにかかりますが激しい抵抗でなかなか寄りません。ハリス1.5号の細仕掛けゆえ無理はできず、巻いては出してを繰り返しながら慎重なやりとりをするうちに、ヘッドライトで照らした水面下に見えたのは体高のある白い魚体です。やった、タイ類だ(多分)。

キチヌ 日本全国釣り行脚(C)週刊実話

数度の力強い抵抗のたびに「切れないで」と祈りつつ、だましだまし浮かせて玉網にイン。無事確保したのは40センチほどのキチヌです。マダイではありませんが、キチヌもれっきとしたタイ科の魚。そして黄色は幸せの色ですから「今日はコレで十分」と竿を納めようとしたものの、まだ1カ所、岸壁いちばん奥の隅っこのカドを探っていないことが気になり、最後にそこだけ探って終わることにします。


おそらくあまり釣り人の手が入っていないであろう冴えない港奥の、しかも最奥のカド。ドキドキしながら静かに仕掛けを落としていくと着底とともに何か違和感を覚えます。そのまま竿先を下げてフカセ気味にするとクンッとアタリ。続いて竿先が引き込まれたところであわせるとハリ掛かりです。 新年早々縁起が良い!?

先ほどのキチヌのような重量感ではないものの、鋭い手応えに「またキチヌか?」と巻き上げてくると、見えてきたのは白い魚体に斜めのライン。鷹の羽に似た模様が名前の由来のタカノハダイでした。


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「なんだ、タカッパかぁ」とぞんざいに抜き上げ、ハリから外してリリースしようとしたものの、「まてよ、タカノハダイ→鷹羽鯛…こりゃ縁起の良い名前じゃねぇか(新年限定)」と思い直し、魚体も肉付きが良いことからキープ。これにて満足、納竿とします。


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帰宅後はキチヌを刺身で、タカノハダイはナスを添えたガーリック炒めで晩酌です。キチヌの刺身がマダイ並みに旨いのは当然として、磯臭いという評価で外道的存在のタカノハダイに全く臭みがありません。程よい脂乗りと旨味の感じられる白身は非常に美味しく、ちょっとビックリ。


新年に富士山を眺めて、キチヌに加えてタカノハダイ。1富士、2鷹、3茄子で、新年早々縁起の良い釣行となった今回。もしかすると、富士山に願を掛けたのが効いたのかも…。
三橋雅彦(みつはしまさひこ) 子どもの頃から釣り好きで“釣り一筋”の青春時代をすごす。当然の如く魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。