(画像)yu_photo/Shutterstock
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実質的“派閥オーナー”森喜朗元首相逮捕!? 特捜部が一網打尽にする頂上決戦へ

石川県能登地方を震源とする最大震度7を観測した地震と、東京・羽田空港で日本航空と海上保安庁の航空機同士が衝突した事故は、今年が波乱の年になることを予感させるのに十分な出来事となった。


自民党最大派閥の安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティーをめぐる裏金疑惑はすっかりかすんでしまったが、被災地の石川を地盤にしていたのが安倍派の実質的オーナーである森喜朗元首相とあっては、何やら因縁を感じずにはいられない。


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「地震が起きた瞬間、真っ先に頭に浮かんだのは森元首相です。森氏の子飼いで安倍派だった馳浩元衆院議員が石川県知事を務めていることからも分かるように、石川は清和会の牙城です。東京地検特捜部の捜査ばかりが注目されるのを忌み嫌った森氏が地震を招いたと言うのは不謹慎ですが、どうしても結び付けて考えてしまいます」


そう語るのは全国紙政治部デスクだ。地震が発生した1月1日。東日本大震災以来の大津波警報が発令され、輪島市の観光名所「輪島朝市」周辺では大規模な火災が発生するなど、国民に与えた衝撃は大きかった。


この日、産経新聞は朝刊1面トップで、安倍派の政治資金規正法違反事件で、東京地検特捜部が派閥の元会長である森氏の関与の有無について確認を進めていることが分かった、というスクープ記事を掲載した。


見出しは「東京地検 森元首相の関与有無解明へ」。同記事によると、特捜部から任意の事情聴取を受けた議員が、安倍派パーティー券収入の還流分の使い道を聴かれた際、使途先について「森氏が含まれていなかったか確認された」と話しているという。この議員は森氏への資金提供について否定したらしい。


使途先に含まれていようがいまいが、キックバックの仕組みを構築したのは森氏といわれ、永田町でも森氏が裏金疑惑に関わっていたのは、公然の秘密になっているという。安倍派議員の秘書はこう明かす。


「裏金に森氏が関わっていないなんてことはあり得ません。パーティー券の販売ノルマ超過分を議員にキックバックし、派閥の政治資金収支報告書にも議員の報告書にも記載しない手口は20年以上前から行われていた。20年以上前といえば森氏が会長のときですよ」

〝裏金関与〟を実態解明!

森氏は20年以上前の1998年に清和会の会長に就任。00年の首相就任時に小泉純一郎元首相に会長の座を譲ったが、01年に小泉氏が首相となり派閥を離脱したため会長に復帰し、町村信孝元衆院議長に代わる06年まで務めた。つまり、先の秘書が話すように森氏が知らないわけがないのである。

そのためか、ネット上では《自民党の金権体質の権化と言ってもいい森喜朗までたどり着ければ大したもん》《この人に関しては五輪絡みのあれやこれやも深く追及して欲しい》、《新年早々幸先がいいねぇ! 検察頑張れ!》《老後は塀のなかへ》などのコメントが書き込まれたほど。


また、永田町では「特捜の本丸は森氏」と逮捕説までささやかれており、「サメの脳みそ、ノミの心臓」と揶揄された森氏はさぞや落ち着かなかったに違いない。地震が起きるまでは…。


岸田文雄首相は1月4日に行った年頭の記者会見で、党総裁直属の「政治刷新本部」の発足を表明したが、メディアの反応はあまりよくなく、地震で膨れ上がる死者数の話や、生存率が大幅に下がるとされる発生72時間経過後の奇跡の救出の話、航空機衝突事故の続報などにジャックされた。


特捜部のターゲットにされ戦々恐々としていた森氏は、この動きにホッと胸をなで下ろしたことだろう。


もっとも、裏金疑惑の話題がしぼんだかのように見えるのは、メディア上での話。


司法担当記者によれば、「特捜は地震があったからといって捜査を中断するわけもなく、通常国会の開会が予定されている今月26日までに捜査を終結させるべく、粛々と調べを進めている」という。また「森氏に対し任意聴取する可能性は大いにある」(同)というから、ホッとしている暇はないのだ。


一方、政治資金をめぐる話題が減ったことである意味救われたように見えるのが、一連の裏金問題などで退陣必至といわれていた岸田首相である。


政治資金収支報告書の過少記載が問題になっても、首相は各派に期限を区切って調査をさせることもせず、実態解明は何も進まないまま。そんな指導力のない首相を国民は見放しつつあり、それが内閣の低支持率につながっている。


もはや解散するだけの体力もなく、3月に24年度予算が成立した暁には、退陣するとの見方が強かった。だが、今後、能登半島の復旧に向けた取り組みも進めなければならず、退陣している場合ではないとの声が自民党内でも出始めている。指導力を発揮する機会が到来したとも言えるのである。


1月7日、東京地検特捜部は派閥(安倍派)から約4800万円のキックバックを受け、政治資金収支報告書に虚偽の記載をしたとして、安倍派の池田佳隆衆院議員と会計責任者の2人を政治資金規正法違反容疑で逮捕した。


地震をめぐる権力者たちの悲喜こもごも。その行方から、しばらく目が離せない状況が続きそうだ。