創価学会・池田大作名誉会長亡き後〜公明党と創価学会の近未来とは/ジャーナリスト・山田直樹
創価学会の池田大作名誉会長が死去して約1カ月半が経過した。池田氏が創立した公明党と連立与党を組む自民党は派閥裏金問題で、検察が強制捜査に乗り出した。学会にも影響が波及するかもしれない。学会事情にも詳しいジャーナリストが池田亡き後をレポート!
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自民党の派閥で噴出したパーティー券をめぐるキックバック問題。まず検察は最大派閥の安倍派を狙い撃ちにする様相だ。
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「裏金そのものの構図は、1988年に発覚したリクルート事件とそっくり。裏金キックバックに関して連立与党・公明党は他人行儀な反応です。『(連立)離脱もあり得る』と、息巻いた自前候補小選挙区擁立攻防がウソのような態度なんです。内閣や自民党の低支持率で選挙をやった日には、自民党がボロ負けしかねないのは分かるんですが、とはいえ、この大逆風下、逆張りで給付金などのバラマキ要求をあからさまに自民党に突きつけるわけにもいきませんし…」
と古参の政治部記者が言うように「公明党の立ち位置」が怪しくなってきた。ちなみに、衆院東京都小選挙区候補者選びで「自民党との信頼関係は地に落ちた」と石井啓一公明党幹事長に言わしめた一件だが、関係修復の公式発表はいまだ伝わってこないのだ。
そんな中で、公明党の支持母体である創価学会の池田大作名誉会長が死去(11月15日)した。いまや創価学会員爆増という記録を残して他界した池田名誉会長に、対自民党、対野党の微妙な政治状況の差配を期待することはもうできない。そればかりではない。
「まだ私たちのところへは、池田先生の『お別れ会』がいつなのか情報がきていないんです」
複数の現役信者がこう心配するのである。1月2日は池田氏の誕生日。そして1月26日は、池田氏が死去するまで会長を務めていた創価学会インタナショナル(SGI)創立記念日だ。目下、この日が『お別れ会』の有力候補なのだが…。
「外国要人の誰が弔問に来るのか? 中国とロシアは要注意ですが、池田氏の場合、ウクライナの大学からも勲章を受けている。日程は調整後に発表されるでしょうが、メディア各社は池田氏のお別れ会の特ダネを〝抜き〟たがっています」(公安関係者)
新聞配達員は“無冠の友”
実は、池田氏死去の第一報をめぐり、読売新聞の電子版がタッチの差で抜いた経緯があるという。550万という公称部数を誇る聖教新聞と公明新聞(80万部)の印刷を、読売新聞、朝日新聞、毎日新聞及びその関連印刷会社や系列スポーツ新聞社の間で受注合戦を繰り広げてきたのは周知の事実。この戦いで一歩先んじたのが読売新聞である。「読売は受託印刷で後塵を拝していたものの、販売店での聖教新聞配達受託で完全に他社を抜きました。いまや独占状態です。これは最初、茨城県の一角で試験的に実施した後、着実に受託地域を増やしてきました。創価学会組織で言うところの『第二東京』、つまり23区外は、いまや読売販売店が聖教紙を配達する。直近では、23区内でも開始との情報もあるほどです。創価学会総本部のある新宿区でも配達をやるのかどうかも関心の的です」(ライバル紙の営業担当者)
一方、創価学会総本部のある信濃町関係者からは疑問の声が上がる。
「池田先生は、聖教新聞配達員を『無冠の友』とし、自力配達にこだわってきた方。活字の大切さを語った人でもある。そう安易に信心の根幹へ触れる部分を外部に任せていいのだろうか」
先の池田氏訃報の出し抜きの一件は、こうした読売新聞との関係からリークされたとの見方が一般的だが、配達外部委託はあらぬところで創価学会組織の綻びを浮き彫りにした。それは聖教新聞の複数講読がバレてしまったことだ。実際、筆者が聖教新聞を配達する複数人に確認してみると、案の定の答えが返ってきた。
「私たちは、一家(世帯)の人数が多かろうと少なかろうと、新聞は1部ずつ購入という世界で生きてきた。聖教新聞をさばくようになって驚きましたよ。2部、3部取るお宅が普通に存在する。公営住宅にお住まいで、決して生活に余裕があるとは思えないのに複数の部数を取っているんです。聖教新聞は高い新聞ではないけれど、複数講読は大変でしょう」
加えて、最近の聖教新聞には「講読のご案内」で、紙媒体より電子版、集金よりクレジットカード決済を推奨するかのような文言が目立つ。つまり、池田氏が大切にしていたものの一つが、衰退し始めているわけだ。それは新聞ばかりではない。
知己の北海道の古書店主によれば、
「11月の終わりくらいから、創価学会関連の古書を引き取ってほしいという依頼が増え始めたんです。池田氏の著書『人間革命』などは刷り部数が多いため、そもそも値がつきませんから、買い取り価格を提示すると愕然とする方もいらっしゃいます。創価学会のシリーズ本の古書には特徴があります。最初や2巻目くらいまでは読まれた形跡があるんですが、あとはまっさらというパターンが非常に多い。売り主は信仰をやめたというより、取っておく必要がなくなった感じです。学会関連本を一切合切持って行って、というお宅も少なくありません」
池田氏の黒歴史を知る2人
こうした創価学会組織の〝衰退〟が一気に進むことはあるのか? 池田氏は95という齢をまっとうした。池田氏個人にまつわるエピソード、そして黒歴史を引っ張り出すために、現在でも取材を続ける雑誌媒体はある。「特に2010年に〝引退宣言〟してこのかた、エピソードを拾えた媒体はありません」(雑誌担当者)
池田氏の親族で存命なのは、実の兄弟中で1人だけ。その女性は「取材お断り」を通している。
「その一方で、影の薄いのが池田氏の子息と夫人です。外野は誤解しがちなんですが、香峯子夫人がワンポイントリリーフするなどというのは与太話です。香峯子夫人には『池田大作夫人』という〝肩書〟しかない。創価学会の正式なラインに入らない方です」(首都圏の壮年部活動家)
池田氏の遺産と相続の行方はどうか。ただしそれは、創価学会という大組織の中の小宇宙とも言うべきレベルの話だ。いわゆる「パナマ文書」(2016年漏洩)が世界各国のメディアで解読されたとき(日本では朝日新聞などが担当)、タックスヘイブンリストとも言うべきこの中に「創価学会」「池田大作」の名前がないか、血眼で追ったメディア関係者もいた。
しかし、その名はなかった。多くの日本人は金持ちが海外に資産移転していると思いがちだが、法改正によって「無記名や偽名での移転」は、ほとんど不可能になっている。
「池田氏が海外で買ったもののうち、東京富士美術館に収蔵されているものはかなりあるはずです。ただ、こうした文化芸術に関するコレクションを持っていても、公益法人の美術館所有物になっているでしょう。池田氏が、コレクションを秘蔵する施設を私的に持っている話など聞いたこともない。残るは有価証券類でしょうが、むしろ世人も驚くほどの少ないレベルだと聞いています」(元国税職員の税理士)
ちなみに、この税理士は1991年に創価学会への税務調査を担当した1人だ。
「以降、特に連立政権になってから創価学会はむしろ調査対象としてはタブーになった。ただし、国税が池田氏の遺産相続で何をやるかは分かりません」(同)
と含みを残す説明だった。
「遺産相続の場合、誰が名乗り出てくるか分からない。いわゆる池田氏の隠し子がいる情報は、仮にいたとしても学会なり池田家が十分手当てしているので、表沙汰になる確率は非常に低い。問題は、池田氏に物申した元公明党委員長の竹入義勝さんや『横浜捨て金庫事件』の当事者だった中西治雄さんが存命で、学会の不倶戴天の敵である日蓮正宗の信徒となったこと。彼らが、池田大作という重石が取れて、果たして爆弾証言をするのかどうかが創価学会の喉に突き刺さった骨と言えます」(学会ウオッチャー)
創価学会、なかんずく池田大作という人物の黒歴史を語り得る2人はまだ存命している。
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