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蝶野正洋『黒の履歴書』~天山広吉モンゴリアン封印とパチンコ軍団

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web

俺のかつてのタッグパートナーであり、数々のユニットで行動を共にしてきた天山広吉の得意技といえば「モンゴリアンチョップ」だ。独特のモーションと呼吸で放つ天山のモンゴリアンチョップは、打つ体勢になると観客が「シュー、シュー!」という掛け声を出すのが定番となっている。もっとも、いまはコロナ禍で観客は声を出せないから、そういう光景はなくなっているんだが…。

そんな天山が、新日本プロレスの若手、グレート-O-カーン選手と「負けたほうがモンゴリアンチョップを封印する」という封印マッチ対決をやって、まさかの敗北。得意技を封印することになってしまった。

プロレス界では、こういうオリジナル技を巡る争いが勃発するんだけど、俺に言わせればプロレス技なんてほとんどが誰かのパクリ。モンゴリアンチョップだって、キラー・カーンさんが元祖だ。どちらの選手もカーンさんに許可なんて取ってないだろう。試合前に天山はツイッターで「本物のモンゴリアンチョップを喰らわしてやる」と言っていたが、そもそもどっちも偽物なんだよ(笑)。そういう意味では封印マッチなんて成立しないんだから、俺は別に使ってもいいと思うけどな。

ただ、天山に関していえば、長年の試合のダメージが蓄積していて、いまは腕を上げるだけでもキツイんじゃないか。10年ほど前、天山は右肩の腱が切れて手術をしている。その時、ちょうどパチンコ台のハンドルを持つところくらいまでしか「右手が上がらない」と言っていた。実際、パチンコ屋に通ってリハビリをしていたほどだ。

「狼群団」は「パチンコ軍団」だった

そういえば、地方巡業なんかに行ったとき、俺と天山はよくパチンコ屋に行っていたな。ヒロ(斎藤)さんも交えた「狼群団」は、実は「パチンコ軍団」だったんだよ。TEAM2000になると後藤達俊さんがパチンコ軍団に加わって、巡業で全国を周りながら、その土地のパチンコ屋をほぼ制覇していった。

昼頃にバスで現地に着いた後にメシを食って、普通だったら休憩するところなんだけど、我々はパチンコに行く。これは、ただ遊びに行っているわけではない。その日の試合を占う運だめしでもあった。

田舎町でなんの情報もない中、目についたパチンコ屋に飛び込みで入って、感覚で台に座る。ここで出るか出ないか、その日の試合の流れを感じ取るわけだ。軍団の中では後藤さんが特にすごくて、いつもドル箱を積んでいた。ただ、運気を全部パチンコに使ってしまうから、試合ではまったく運が残っていない(笑)。

あと、パチンコは右手の筋肉と動体視力を鍛えるトレーニングでもある。さらに連チャン後にここがピークと感じて撤退するのか、まだ玉が出ると考えて続行するのか、難しい判断を迫られる。プロレスでも重要な押し引きや勝負勘を、鍛える場でもあったんだよ。

最近の若手選手は、パチンコをやらないやつが多いだろ? 天山はいまでもトレーニング(パチンコ)をやっているのであれば、そんなやつらに負けるはずがない。

モンゴリアンチョップを繰り出すだけでも、大変な思いをしているかもしれないが、そのうち取り戻してくれると思うよ。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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