日本大学のアメフト部が、違法薬物問題で揺れている。麻薬特例法違反の疑いで部員が書類送検されたことを受けて、廃部となることが決定事項のように伝えられていたが、その後に開かれた記者会見では「理事会で継続審議中」となるなど、問題が解決するどころか、周りも含め収拾がつかなくなっている印象を抱く(12月15日の理事会で廃部決定)。
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この問題をニュースで何度も目にしているうちに、ふとあることを思い出した。俺は高校を卒業後、浪人生をしながらプロレスラーになることを目指していて、親にはその気持ちを隠していた。家で体を鍛えたり、トレーニング道具が増えていることを不審に思われるといけないから、その言い訳として「大学でアメフトやろうと思っている」と誤魔化していたんだよ。実際に入部テストを受けに行って、それが日大アメフト部だった。
言い訳するために受けただけだから、テストの合否は覚えていない。俺と日大アメフト部は、そのくらいの関わりしかないけど、それでも廃部にすれば済む問題ではないと思う。真面目にやっていた部員も多くいるんだから。
無くなるんだったら、すぐに後継団体を作ればいいんだよ。「新日本フェニックス」や、「全日本フェニックス」でもいい。とにかく部員たちがちゃんと練習をして、試合をできるような環境を早く作るべきだな。
それなのに、指導部は自分たちのことで揉めている。日大アメフト部の寮内で違法薬物と思われる植物片が見つかったのに、警察に届けるのが遅くなった責任を問われている澤田康広副学長がパワハラを受けたとして、林真理子理事長に対し1000万円の損害賠償を求める訴訟を起こしたんだよ。
ハラスメントへの認識違い
内輪揉めしている場合ではないと思うが、ハラスメントに対する意識というのは急速に変化している。今後はこういう事例も増えるかもしれないね。
最近、知り合いの社長にこういう話を聞いた。若い女性社員が急に必要になった会社の備品をコンビニに買いに行くというから、その社長が「じゃあついでに俺のタバコも買ってきてくれよ」と言ってお金を渡したら、「社長、それはパワハラになりますよ」と真顔で返されたというんだよ。社長のタバコを買ってくることは、業務外のプライベートな案件になるらしい。
俺たちの世代は、学校でも会社でも、組織の上の人の言うことは無条件で従う環境で育ってきたから、こんなことはパワハラに当たらないと思っていた。だけど、新しい世代はそうじゃないんだよ。
もちろん、社会的にハラスメントに対する声を上げやすくなったのはいいことだ。ただ、社会の変化が速すぎると、過去の経験からくる意識の刷り込みと、新しい常識にギャップが生まれ、やりづらい側面も出てくると思う。
例えば公衆トイレの表示は「女性は赤、男は青」と、どの世代も刷り込まれていると思う。そのうちこれがハラスメントだってことになって色を逆にしたら、間違って入ってしまう人が続出すると思うんだよ。
ハラスメントで声を上げるのもいいけど、将来的にそれがいい結果につながるのか、みんなでしっかり考えていきたいね。
蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。
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