私事で恐縮ですが、今から20年ほど前のまだ釣りたい盛りの20代の頃、カレイ専門の投げ釣りクラブに所属しておりました。年間通してカレイが釣れる北海道を除いて、カレイは冬のターゲットですから、晩秋の水温が下がる時期から翌年の春までは、投げ竿を担いであちらこちらへと夢中になってカレイ釣りに出かけたのも、今となってはいい思い出です。そしてオッサンになった現在。だいぶ腰は重たくなりましたが、それでも冬の訪れとともにソワソワすると言いますか、「そろそろカレイの面白い時期だな…」などとつい感じてしまいます。
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ということで、今回は冬の好敵手、カレイを狙って石川県は七尾市にやってまいりました。七尾市といえばカレイ釣り師から非常に人気の高い能登島が好ポイントとして挙げられます。とはいえ、ワタクシは既に腰の重くなったオッサンですから、能登島の人気ポイントで投竿をズラリと並べる…などということは致しません。駅から歩いて行ける手近な岸壁からチョイと竿を出して〝あわよくば〟カレイの顔を拝めればラッキー、といった感じでやってみたいと思います。
まだ観光客の賑わいもなく、静かな朝の金沢駅から七尾線に揺られること1時間半ほど。七尾駅からは駅前の通りを海に向かって徒歩約10分で「道の駅 能登食祭市場」に到着です。今回は、この施設の裏手にある岸壁から竿を出してみることにします。
この岸壁がカレイの実績が高いかといえば、まったくそんなことはありません。ただ湾の奥に位置し、すぐ脇に川の流れ込みがあるなどの条件から、マコガレイの産卵場に適した地形ゆえ、ひょっとしたら出るかも? といった期待を感じさせる場所ではあります。この〝ひょっとしたら〟が、夢があっていいんですな。
いつも通り志は低きに流れ
早速、安物の投竿を2本用意してカレイ仕掛けをセット。エサのアオイソメをたっぷりと房掛けにして投入すると思いのほか水深は浅く、せいぜい3メートルほどといったところでしょうか。底質は、程よい砂泥でカレイ狙いには良さげです。竿を置いてのんびりと竿先を眺めるうちに、程なくビビンッと細かいアタリが出ました。何やらエサ取りがいるようで、巻き上げた仕掛けにエサはなく、再びたっぷりとエサを付けて投入。と、もう1本の竿先もミミンッと揺れており、こちらも巻き上げるとエサはナシ。エサ取りの活性は高いようです。
ここからは投入する度に程なくミミンッ。回収するとエサはナシという状態が続き、最初のうちこそ「カレイは腰で釣れの格言通りどっしり構えて…」などと思っておりましたが、堪え性のないワタクシ。エサ取りでもいいから釣りたい…と思うようになり、カレイ仕掛けよりもハリが小振りなキス仕掛けにチェンジです。エサもたっぷりの房掛けではなく、小さめの1尾付けに変更して投入。さして待つこともなく竿先がミミンッと揺れました。竿を煽り、わずかな重さを感じつつ巻き上げてくると海中にヒラヒラと舞う白い小さな魚影…ヒイラギです。そういえばこの界隈はコレが結構濃かったんですな。
産卵期にもしかしたら…
当地ではギンダイとも呼ばれるヒイラギ。南日本の内湾や河口では、割とよく目にする外道的ポジションの魚です。釣り上げると粘液がすごいことや、あまり大きくならないこともあって、どちらかというと邪魔者扱いをされることが多いものの、食べればそれなりに美味。コレが湧いているならもうコレを楽しめばいいかと、ここからはしばしヒイラギ釣りを楽しみ、晩のおかずには十分な量を確保したところで竿を畳むことにしました。コレが湧いているとエサも持ちませんし…。
さて、一般的に市場に流通することは少ないヒイラギも、高知ではニロギ、三重ではゼンメの名でスーパーの鮮魚コーナーで目にしたことがあるローカル魚。コレを煮付けと潮汁にして一杯やります。薄い小魚なので食べがいこそありませんが、身離れの良い白身は味、食感共に良く、程なく完食です。
ちなみに、今回はカレイの気配を感じることはありませんでしたが、年が明けて1月の上旬あたりから産卵期の夜ガレイで、ひょっとしたらひょっとする…そんな可能性を感じさせてくれる釣り場でありました。
三橋雅彦(みつはしまさひこ)
子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。
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