蝶野正洋 (C)週刊実話Web
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蝶野正洋『黒の履歴書』~「大阪・関西万博」を国際的なイベントに

我らの馳浩石川県知事が、東京オリンピックの招致活動をしていたときに、官房機密費を使ってIOC委員に贈答品を渡したという旨の発言をして、即撤回した。


馳先生は昔から失言が多いといわれがちだけど、これはサービス精神が旺盛だからなんだよ。今回の発言も、東京で行われた講演会で口にしたもので、場を盛り上げるためのものだったのだろう。


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東京オリンピックの招致に関しては、当初は割と歓迎ムードで、開催決定時は喜んでいる人が多かったと思う。けれど、予算がどんどん増えたり、国立競技場の建設問題が出てきたりして、新型コロナが流行して延期になった頃には批判派が多かった。開催後も、電通などの広告代理店の談合が発覚して逮捕者が出るなど、ずっと金の問題がつきまとっていた。


俺はオリンピックという国際的なイベントだからこそ、ある程度は政治的な絡みが出てくるし、大金も動くものだとは思う。それをどこまで「招致活動」の範囲としてやるのか、ということなんだよ。


国として何かを売り込んだり、開催したりする活動には、金もコネも必要だ。防衛費にもそういう枠があって、何兆円という武器を買うには、その交渉をするための金がかかっている。コロナのワクチンだって、ちゃんと日本に入れるために表に出せない金が動いたと思うし、それを医療機関でスムーズに回していくためにも、裏でいろいろな動きがあったはず。


一般的な会社でもそうだよ。営業主体の事業なら、予算の20%ほどは接待などの交際費で使っていたりする。それをどこまで必要経費として考えるかどうかなんだよ。

もっと大きなスケールで

ただ、東京オリンピックで金の問題が露呈してしまった後遺症は大きいと思う。現在、開催内容が危ぶまれている「大阪・関西万博」では、大手広告代理店が謹慎的な理由で万博に関わることができていない。その影響から、スポンサー集めや、海外とのやり取りが滞ってしまっている面もあるようだ。

万博として国際的なイベントにしたいなら、政府は金を出すだけじゃなくて、もっと各国に対して政治的な根回しをしなきゃダメだと思う。例えば万博に参加してもらう代わりに、貿易面で優遇するみたいな。そういうビジネス的なやり取りというか、万博を盛り上げるための外交戦略は必要だと思うんだよ。


万博はそれぐらい大きなスケールで考えるべきなんだけど、今回の関係者の動きを見ていると、商いが小さいというか、身内だけで回して儲けようと思っていそうなんだよね。地域の町おこしイベントみたいなレベルで考えているから、世界どころか、日本国内の他の地域からも相手にされていない。


そもそも、万博会場だけで何か目玉のものを作ろうという考え方が狭い。せっかく関西でやるんだから、京都、奈良、和歌山とかも含めて考えるべき。それぞれの観光資源を活かすような体制を組み、国内だけでなく、世界中の人が関西に観光に来て、万博も見て行ってくれるような雰囲気を作らないとダメだよ。


金の問題はあるかもしれないが、もっと大きなスケールで万博開催に臨んでほしいね。
蝶野正洋 1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。