日本全国釣り行脚 (C)週刊実話Web 
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『カンムリベラ&ミナミイスズミ』東京都三宅島/錆ヶ浜港産~日本全国☆釣り行脚

大物狙いで来た三宅島の伊ヶ谷港。前半はオヤビッチャなどの小物に夢中となり、後半のブッ込み釣りではオジサンの南方魚的な風貌に満足し、終わってみればいつも通りの〝しょぼくれた〟釣果だったような。まあ、釣り人自体も〝うだつの上がらないオッサン〟ですから、このへんが分相応なのかもしれません。


日本全国釣り行脚(C)週刊実話 

ということで、村営バスにて伊ヶ谷港を後にし、帰りの汽船の出航地となる錆ヶ浜港へと戻ってまいりました。「さて、ゆっくり昼飯でも食ってから汽船に乗りますかねぇ…」などと考えていると電話が鳴りました。しょぼくれた釣りばかりするなと、今回の三宅島釣行のきっかけにもなった苦言を呈してくれた知人からです。


【関連】『オジサン』東京都三宅島/伊ヶ谷港産~日本全国☆釣り行脚ほか

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「どないでっか?」との問いに、オヤビッチャの後は、ブッ込みでオジサンが釣れたこと。南方魚らしい釣果が嬉しかったことを報告したところ、「あんた、何をしとりまんのや。ホンマ、クビんなりまっせ〜」と呆れ気味。昼飯を食べてから帰路に就く旨を伝えると、「何を眠たいことを言うてまんのや。メシ食うてるヒマがあるなら竿を出さな。大物狙いで行っとるんやから、最後まで己の行く道行かんかいっ!」と言ってブチッと電話は切れました。かなりお怒りの様子です…。出航までは、まだあと1時間余り。錆ヶ浜桟橋も大物実績の聞かれる好ポイントですから、急ぎ足で桟橋へと向かうことにしました。 鋭い手応えに胸高鳴る

着いてみると先端に数人の釣り人がいる以外は空いており、すぐに竿が出せて、撤収後もすぐに乗船できるように付け根寄りで準備を開始。あらためて釣り場を見ると、付け根寄りとはいえ潮は効いており、右手に広がる消波ブロックから足下岸壁にかけては、いかにも石物のいそうな雰囲気です。時間との戦いになるので竿は1本。市販の胴突き仕掛けに25号の錘を付けて、足下の岸壁際にドボンと落とします。水深は7〜8メートルもあるでしょうか。


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竿を岸壁に置いて「これなら十分勝負になるし、かえって付け根の方が場荒れが少ないかも」などと考えている間に、早くもガツガツッとアタリ。続いてギュンッ! と竿先が絞り込まれました。あらやだ、いきなり本命? と合わせると気持ちよく竿が曲がります。力強く下に突っ込んだかと思えば、激しく右に左にと走る鋭い手応え。やがて青く澄んだ水中に体高のある白い魚影が見え、そのまま抜き上げたのは…イスズミ(ミナミイスズミ)でした。


ミナミイスズミ 日本全国釣り行脚(C)週刊実話 

強烈な引きとメジナに似たシルエットから、メジナ釣師の間ではガッカリ度の高い残念な魚として知られるイスズミ。〝ババタレ〟とも呼ばれるように、釣り上げるとムリムリッと茶緑色の糞をひり出すあたりも残念度を高めていると言えるかもしれません。そして、イスズミの魚影はかなり濃いのか、その後も竿を絞り込むのはイスズミばかり。でも、強い手応えはなかなかに面白く、これはこれで楽しめます。 最後にゴンッ!これも行く道

そんな中、ひときわ大きなゴツンッ! というアタリが訪れました。待つうちにグンッと竿が持ち込まれ、合わせるとなかなかの重量感です。イスズミの疾走感のある引きに比べて、より馬力を感じる手応えに「最後の最後でついにやったか」と慎重に巻き上げてくると、水面下に現れたのは暗緑色の魚体。手応えが本命と似ているため、石物師の間ではガッカリ度の高い魚として知られるカンムリベラでした。個人的には南の離島らしい魚なので嬉しいのですが…。


ここで沖に汽船の船影が見えてタイムアップ。結局、メジナ釣り、石物釣りの両磯釣りにおけるガッカリ度の高い代表魚に終始したものの、短時間で強い手応えとドキドキが味わえたので個人的には楽しい時間となりました。


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帰宅後はイスズミをベッコウ寿司、カンムリベラは煮付けにして晩酌です。島で取れる白身などをヅケにした伊豆諸島の郷土料理と言えるベッコウ寿司。磯臭さで知られるイスズミも、ほとんどクセが気にならず美味しくいただけ、さすが〝照りが魅力のオベコ寿司〟。そしてカンムリベラの煮付け。綺麗な白身はホクホクの食感でクセはなく、名の通った高級魚にも引けをとらぬほど、極めて上品な味わいです。


最後までインパクトのある大物には出会えずとも、三宅島の離島らしい魚たちと出会えて満足。これからも小物道に邁進していく、これもひとつの行く道なのか…などと思ったのでありました。
三橋雅彦(みつはしまさひこ) 子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。