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東日本大震災から10年…“余震”が引き起こす首都直下大地震

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M(マグニチュード)7.1、震度6強の地震(2月13日午後11時8分頃)が発生した福島県沖から400キロメートル余り離れた伊豆・三宅島で異変が起きた――。2月15日、砂浜を埋め尽くすように大量のイワシやサバが打ち上げられたのだ。

浜を管理している東京都の三宅支庁によると、「イワシは600メートルにわたっており、これほど大量の魚が打ち上げられたのは聞いたことがない」と話している。

武蔵野学院大学特任教授(地震学)の島村英紀氏が指摘する。

「東日本大震災の震源となった地点の南北で留め金が外れやすくなっている。一方、首都圏ではフィリピン海プレートが活性化し、首都直下地震はいつ起きてもおかしくない。イワシの打ち上げの原因は、今のところはっきりしません。東京都は〝毒物の可能性もあるから絶対、食べないように〟と言っているらしいが、イワシには人間に比べると、一桁も二桁も感度のいいセンサーがあり、海中の磁気や電流を感じ取ることができる。近く大地震が発生するとすれば、震源から発せられるそうしたサインをキャッチできるのです」

東日本大震災から3月11日で10年、首都圏の南北で巨大地震の発生する確率が高まっているわけだ。

東日本大震災は、陸側の北米プレートに海側の太平洋プレートが沈み込む境界で発生した。地震調査委員会の平田直委員長は「10年たって余震の数は減ったが、少なくとも今の状況はあと10年くらい続く」との見解を示している。

余震が200年以上も続くことも…

「福島・宮城震度6強の震源は、東日本大震災の震央から南西に110キロメートル離れた太平洋プレート内で、深さはプレート境界より15キロメートル下に位置する約55キロメートルの地点でした。震源が地下深くだったため、大きな地殻変動が海底まで達することなく、津波はごく微小で被害はゼロでした。しかし、青森県沖から千葉県までの南北約60キロメートル、東西約350キロメートルの余震域では、今後も同程度の地震が発生する可能性が高い」(サイエンスライター)

気象庁によると、東日本大震災直後から今回を含めた余震域で起きたM7以上の余震は計12回。2012年以降となると5回発生している。余震は時間の経過とともに減り、2019年~2020年の1年間にM4以上を記録した地震の回数は、震災直後の1年間と比べて30分の1以下になっている。それでも平田委員長が指摘したように、少なくとも今後10年は〝M7クラスの大きな余震〟が襲ってくる状況は続きそうだ。

実は、発生から130年経過しているのに、いまだに余震が続く巨大地震があった。岐阜、愛知両県を中心に7000人の犠牲者を出した濃尾地震(1891年、M8.0)である。内陸直下型としては阪神・淡路大震災を上回る日本史上最大級の地震で、その余震が現在も続いているというのは驚きだ。

「米国では、余震が200年以上も続いている例がありますよ。それはミズーリ州とケンタッキー州の州境で1811年から1812年にかけて3カ月弱の間に、M8を超える大地震が続けて3回も起きました。大地震の余震です。しかし、日本では普段から地震活動が高いので、余震がたとえ続いていたとしても、他の地震に紛れてしまうのです。米国では地震の活動レベルが低いから、200年後になって小さな地震が起きても余震と分かる。日本では余震が続いているが、見えなくなってしまうんですよ」(島村氏)

各地で頻発する宏観異常現象

M9という東日本大震災くらい大きな地震だと、余震はやはり100年以上続くと考えられている。

「私は福島沖の今回の地震は余震ではなく、誘発地震と見ています。プレート同士が押し合って均衡を保っているが、そのバランスが崩れて地震の力が外側を向いている可能性がある。震源域内でさらなる誘発地震が発生しないか心配ですね」(島村氏)

昨年以来、千葉県、東京都、伊豆地方では冒頭で紹介したイワシの大量打ち上げのような宏観異常現象が相次いでいる。

昨年11月には、千葉・九十九里浜で約40キロメートルにわたってハマグリが大量に打ち上げられる現象が起きた。同県では少なくとも350トンに上ったとしている。また、2月4日に東京都大田区の呑川、8日には茨城かすみがうら市の菱木川で、大量のボラが川を埋め尽くして遡上した。

「太平洋プレートが動くことにより、高周波が発生して生物の方向感覚を狂わせる。ボラやハマグリの打ち上げはその可能性が高い。九十九里でハマグリ打ち上げがあった昨年11月22日には、茨城県東海村で震度5弱の地震が発生している。相次ぐ宏観現象は近々、桁外れに大きな地震が首都圏に起こる予感がします」(前出・サイエンスライター)

島村氏は「東北沖の地震によって、北は北海道、南は関東にかけて地震を誘発しないか気掛かり」と繰り返し警鐘を鳴らす。

「東北沖の地震を抑えていた留め金が1カ所でも外れた時、北側と南側の留め金が外れるかもしれない。そうなると、首都直下地震が現実のものになるかもしれません。地球の歴史のスケールから見れば、数カ月、十数年の月日というのは瞬きにすぎない。とすれば、明日大地震がくるかもしれないし、10年後かもしれない。ただ、それが差し迫っていることだけは間違いない」(島村氏)

東日本大震災の余震、首都直下、南海トラフ…全方位の警戒が必要だ。

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