『ステージ・マザー』
監督/トム・フィッツジェラルド
出演/ジャッキー・ウィーヴァー、ルーシー・リュー、エイドリアン・グレニアー、マイア・テイラー
提供/リージェンツ、AMGエンタテインメント
配給/リージェンツ
自粛の影響によって、自宅で配信作品を楽しむ人が増え、皆さんも、だいぶ旧作に詳しくなったのではないでしょうか。ただ、ミニシアターの劇場では、今も新作がどんどん公開されています。素敵な作品がいっぱいあるので、ぜひとも足を運んで見て欲しい!
さて、いつも読んでくださっている人なら、私の好みをご存じかと思いますが、大好物が来ましたよ! 実際に見たら、〝おや?〟と、いい意味で裏切ってくれる素敵な作品だったので、ご紹介したいと思います。
テキサスの田舎町で平凡に暮らす主婦、メイベリンに飛び込んで来た最悪の知らせ。それは息子の死…。長い間、疎遠になっていたとはいえ、張り裂けそうな心で息子が暮らしていたサンフランシスコへ。お葬式でメイベリンが見たのは、ドラァグクイーンたちの派手なパフォーマンス。そして、息子が経営していたゲイバーをメイベリンが相続することになるのですが、これが破綻寸前の状況。
メイベリンの心情からすれば、すべてがショックだし、お店の経営なんて興味ない。年をとってから何かを始めるのはある意味チャレンジだけど、やはり怖いと思うのは当然のこと。特に、今まで全く縁のない世界ではなおさらです。でも、そこで頑張るドラァグクイーンたちを見て、彼女は決める。やってみようと。
自分がショーをやるときに真似したいほど!
今まで口パクだったショータイムを本当の歌に変えて、いろいろブラッシュアップ。もちろん、最初から思うようにはいかない。ドラッグに頼ってる人もいたり、頑張っても救われないと、将来を信じない人もいる。でも、そんなゴタゴタが逆に母性本能をくすぐられたのか、みんなの〝母〟になることで、自分の息子には注げなかった愛を与えることができるようになっていくのです。
私の想像と違ったところは、こうしたショーパプが舞台の作品って、だいたい激しいポップスに厚底ブーツ&スパンコールだけど、この作品の曲調はおとなしめ。だから身体に深く沁み込む。ラストに流れるボニー・タイラーの『トータル・エクリプス・オブ・ザ・ハート』の演出に息を飲みました。自分がショーをやるときに真似したいほど。
ドラァグクイーンたちや、亡き息子の仲間との関係の中で、息子の人生に触れていくメイベリンを演じるのは、声がとても印象的なジャッキー・ウィーヴァー。息子の親友には『チャーリーズ・エンジェルズ』のルーシー・リュー。93分のハートウォーミングな1本で、癒やされて!
LiLiCo
映画コメンテーター。ストックホルム出身、スウェーデン人の父と日本人の母を持つ。18歳で来日、1989年から芸能活動をスタート。TBS『王様のブランチ』、CX『ノンストップ』などにレギュラー出演。ほか
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