(画像)Atstock Productions/Shutterstock
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“紹介料”に手を染めた情報番組のスタッフ~第16回『放送作家の半世(反省)記』

前回はバブルの時代に、熱帯魚好きのディレクターが制作予算から巨大な水槽を購入し、ちゃっかり自宅に設置していた話をさせていただいた。しかし、こんな言い方は不適切かもしれないが、私のような出入り業者から見ると、直接的に金銭を懐に入れるよりも古代魚のアロワナを自由に泳がせる水槽を自分のモノにするほうが、何となくかわいげを感じる。


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テレビ界も久しく不況の波に揉まれているが、さまざまな手口で金銭を着服しようと画策するプロデューサーやディレクター連中を見ていると「新しい〝錬金術〟の開発に頭を悩ませるのではなく、もっと面白い番組を作ることに頭を使え!」と思ってしまうからで、ロケの備品(それにしては高価すぎるが…)をチョロまかす単純な行動は、私の中ではギリギリ〝出来心〟で許せてしまうからだ(笑)。


これは10年ほど前の話になるが、私は旧知で同世代の構成作家が短期入院することを知り、ある生放送番組の台本をノーギャラの代役で書いたことがある。わざわざノーギャラを強調したのはそれなりの理由があるわけで、そこは読み進めていただければお分かりになると思う。私が代役を務めた新商品紹介コーナーは、いま流行っている商品を紹介するのではなく、これから流行りそうな商品を紹介する趣向。しかし、どんな商品だったのか思い出せないので、結果的には流行らなかったのだろう。


そして、思い出せないもう一つの理由は、すでに紹介する商品の提供準備が終わっていて、私が商品を手配したわけではないからだ。情報番組の構成作家は、単に台本を書くだけの役割にとどまらず、自分で新商品を探し、企画会議でその商品が採用された場合は、改めて商品の発売元に連絡を入れ、商品提供を願い出なければならない。要するに、年寄りには若干面倒な手間がかかるにもかかわらず、その作業をしなかったのだから、どんな商品か覚えていないのだ。

番組で紹介すると得られるもの

しかし、ハッキリと覚えているのは、そのコーナーを担当していたディレクターが「いくら取れました? 1本(100万円)は堅かったんじゃないですか?」と話しかけてきたときの、嫌な感じのにやけ顔だ。そのセリフが意味することにはすぐさま勘づいたが、それを認めることはすなわち、知人が不正に手を染めていることを意味する。すると、そんな私の様子に違和感を持ったのか、ディレクターは慌てて「聞かなかったことに…」と取り繕ったが、そんなことは私に通用しない。彼は私の知人と結託して、番組での商品紹介と引き換えに〝紹介料〟を取っていたのだ。

ディレクターに「紹介料どころかノーギャラだよ」と明かすとさすがに驚いていたが、裏で紹介料を取っていた連中からはギャラをもらいたくない。よくよく聞くと、これら情報番組のスタッフは紹介料に対して罪悪感が薄く、オンエア前に堂々と先方に連絡を入れ、銀行口座を知らせる猛者もいるらしい。


かつては私も情報番組を担当していたが、紹介料どころか商品は自腹で事前に購入し、さらに、もし紹介する場合は平身低頭でお願いに上がっていた記憶しかない。この話を友人の構成作家に愚痴ると、すぐさま「当たり前だろ? それだけの影響力があるからテレビは〝王様〟なんだよ」と笑われてしまったが…。