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『元彼の遺言状』著者:新川帆立~話題の1冊☆著者インタビュー

『元彼の遺言状』宝島社/本体価格1400円
『元彼の遺言状』宝島社/本体価格1400円 

『元彼の遺言状』宝島社/本体価格1400円

新川帆立(しんかわ・ほたて)
1991年2月生まれ。テキサス州ダラス出身、宮崎県宮崎市育ち。東京大学法学部卒業。作家を志したきっかけは、16歳のころ、夏目漱石の『吾輩は猫である』に感銘を受けたこと。本作で第19回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞。

――二度目の投稿で大賞を受賞しました。東大法学部を卒業後、弁護士をしていたそうですが、もともと小説家を目指していたのですか?

新川 16歳の時に夏目漱石『吾輩は猫である』を読んで感銘を受け、作家を志しました。ただ、作家の道は経済的に厳しいと承知していました。そこで、まず弁護士資格を取得することで経済的基盤を整え、働きながら小説を書いて、長期的に夢を追おうと考えました。

――実際に弁護士として働いて、どうでしたか?

新川 大きな責任が伴うので、覚悟や熱意がないと続かない仕事だと思いましたね。私自身は生半可な気持ちで弁護士になったこともあり、尊敬する先輩弁護士たちのように質の高い仕事はできないと実感しました。結局、好きなことをやるのが一番だと思います。弁護士資格は引き続き保持しますが、実働は今年の1月末で一旦お休みし、執筆に専念する予定です。

――最初の投稿では一次選考を通過できなかったとか。今回、どのような工夫をしたのでしょうか?

新川 初めて書いた長編小説はファンタジー風のもので、そもそもミステリーではなかったので、予選通過しなかったのも当然です。翌年は過去の選評を読み込み、きちんとミステリーとして面白味のあるものを目指しました。自分の世界を広げるため、さまざまなジャンルの本を週に最低5冊読むようにしました。これでアイデアの出具合が格段によくなりましたね。

頑張った先にはもっと楽しい世界が待っている

――女弁護士が活躍する物語ですが、ご自身がモデルになっているのですか?

新川 私がモデルではありません。「こういうふうに活躍できたら楽しいだろうな」という憧れの姿を主人公に投影しています。主人公を含め、どの登場人物にもモデルはいませんが、「こういう人がいたら楽しいな」とか「こういう人ってどこかにいるような気がする」と想像して作っています。

――次に書いてみたいテーマはありますか?

新川 今は本作の続編を書いています。現状の生活実感として、女性が頑張って、勉強して、社会で活躍しても、男性ほど大きなベネフィットが得られない社会構造になっていると思います。それでもやっぱり、若い女の子たちには「たくさん勉強して、バリバリ働こう」と伝えたいですね。

なぜなら、頑張った先には、もっと楽しい世界が待っていることは間違いないからです。そういった、勉強や仕事を頑張った先に、どんな自由が待っているかを示すシリーズにしたいです。若い世代に強いビジョンを示せる女性たちを描くつもりです。

(聞き手/程原ケン)