『平成名物TV 三宅裕司のいかすバンド天国』(TBS系)への出演をきっかけに、一躍、ブレークを果たした相原勇さん。彼女は中学生のときに観たミュージカル『ピーター・パン』で、榊原郁恵さん演じる主人公が客席の上をフライングする姿に感動し、「ピーター・パンを演じるために芸能界に入った」と公言していた。
彼女の夢は同作を初めて観た10年後に実現したわけだが、そこに至るまでにさまざまな辛酸をなめ、紆余曲折の末に夢をつかんだことは言うまでもない。
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そんな彼女を語るキーワードは3つ、前出の『イカ天』とフルオープン、そして第64代横綱の曙だ。相原さんが『ピーター・パン』の主演に抜擢されてから3年が過ぎ、ファンの目には何もかもが順調に映っていた1996年5月、突如として曙との真剣交際が発覚。さらには、わずか1年後の婚約破棄へとスキャンダルの波に揉まれた相原さんは、芸能活動を休止して米ニューヨークへと渡った。
一連の騒動によって相原さんの人気が急激に低下したことは、世間には好感度タレントの凋落として受け止められたが、私は相原さんの〝素顔〟を垣間見たことがあった。
その前に、キーワードの一つであるフルオープンについて触れておくと、当時、私が耳にした裏事情によれば、期限付きで広島県の実家から上京を許された彼女には、早く売れたいがための焦りがあり、そこに付け込んだ悪い大人にだまされたということだった。いくらバブル景気に浮かれていたとはいえ、まだ当時は19歳、20歳でフルオープンになったタレントが売れるほど寛容な社会ではなかった。
「相原勇」へと生まれ変わり…
そんな彼女がフルオープン時の「小原靖子(本名)」から芸名の「相原勇」へと生まれ変わり、『イカ天』のアシスタントとして再起を図ったわけだ。通常の企画会議では、スタッフがアシスタント候補の名前を挙げ合うか、『イカ天』のように大元の制作会社が芸能プロダクションの場合、所属タレントをねじ込んで来るかのどちらかだが、彼女の名前は決定事項としてスタッフに告げられた。
当時の相原さんには、熱心に売り込んでくれる優秀な女性マネジャーのK氏が付いており、彼女が構成作家陣の1人、佐々木勝俊氏の知人だったのだ。そのため、佐々木氏と演出の菅原正豊氏の間で、早々に相原さんの面接まで済まされていた。しかし、この時点での『イカ天』は2カ月限定の代替番組であり、そこに思いきって相原さんを預けたのだから、K氏の慧眼に感服するしかない。
さて、相原さん自身もかつて「一番の恩人」と発言したことがある『イカ天』だが、実のところ私は番組の打ち合わせや生放送のスタジオで、彼女本人にお目にかかり、言葉を交わしたことはない。
確かに生放送用のスタジオ台本は私が1人で書いていたが、当時のスタジオには優に100人を超えるスタッフがおり、また、昭和のテレビ界は見事なまでの分業制で成り立っていたので、本番中に私の出番などなかったのだ。
しかし、そんな相原さんを私は意外な場所でお見かけしたことがある。そこは彼女が以前に所属していた芸能プロの単独ライブ会場。彼女は先輩芸人の何倍も顔が売れているにもかかわらず、もう義理立てする必要もないのに、笑顔で接客の手伝いを買って出てくれていたのだ。私は相原さんのその姿に、苦労人ならではの気遣いを感じずにはいられなかった。
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