島田洋七 (C)週刊実話Web
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小泉孝太郎くんは「総理大臣の息子ネタ」で本が書けるで~島田洋七『お笑い“がばい”交遊録』

TBS系の日曜劇場で『ブラックペアン』が二宮和也くん主演で放送されていたでしょ。俺も第2話に患者役でゲスト出演したんです。


タクシーで撮影現場に到着すると、すでに撮影が始まっている。


医療ドラマは難しい専門用語がたくさん台詞に入っているけど、二宮くんは一言も間違えずに見事に覚えて演じているんです。アイドルグループの嵐で、歌ったり踊ったりしているイメージが強かった俺は、彼を見直しましたね。


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俺なんて当日現場で台詞を覚えていたほどです。そのために台本を広げていた。そうしたら「洋七さん、よろしくお願いします」と小泉孝太郎くんが挨拶に来たんです。


続けて、「今、台詞を覚えているんですか? あと30~40分で本番ですよ」「前の日から覚えたら忘れてしまうからな。現場で集中して覚えんねん」「皆さん覚えてから来てますよ」。

父親がアメリカの大統領と会談

孝太郎くんのお父さんといえば、小泉純一郎元総理でしょ。その頃はすでに政界を引退していたけど、総理大臣の息子は、どんな気分なのか聞いてみたんです。

「総理官邸ばかりでなく、家に帰ってくることもあるやろ。ビックリするやろ?」


「普通の父親ですよ。『何食べる?』とか野球の話をしたりします。政治の話は一切しません」


俺はそんなものかと思いましたね。


「でも、各国の首脳や大統領と会談している模様をニュースで見ると、家にいる親父と同じ小泉純一郎かと思うことはあります。アメリカの大統領と会談していて、日本のことはわかるだろうけど、親父に世界情勢がわかるのかなとか(笑)」


「総理大臣だって周りに優秀なスタッフがおるやろ」


総理の周りには官僚や秘書官などのエリートがたくさんいるでしょ。


そうしたら「それはそうですけど、たまにドキドキしますね」「いい人生経験やんか。親父が総理大臣なんていうネタはないで。それで1冊本が書けるわ」。


石原良純は石原慎太郎元都知事の息子で芸能人だけど、さすがに総理大臣となると、孝太郎くんくらいじゃないかな。


孝太郎くんとの会話が終わり、俺の出番が近づいてくると、俺の嫁さん役で、元女子プロテニス選手の沢松奈生子さんとのリハーサルが始まったんです。


何度かドラマに出演したことがあるけど、このリハーサルが俺は一番照れるんですよ。本番で感情を込めて台詞を言うのは良いんですけど、リハーサルで感情を込めるのがどうも苦手でね。


俺が車椅子に乗り、沢松さんは「お父ちゃん頑張ってね。お父ちゃん大丈夫」とリハーサルで演技しているから「自分はエエな。お父ちゃん頑張ってだけが台詞で」と思わず口に出してしまったんです。


漫才師でドラマ出演に慣れていないと、台詞を覚えるのも一苦労ですよ。


それにしても、ドラマはバラエティー番組と違ってお金がかかっていますね。漫才の番組ならセンターマイク1本だけで済むけど、ドラマはまずカメラの台数が違いますよ。スタッフも、メイクさんを含めたくさんいる。


みんなが長台詞を口にしてもせいぜい2分程度でしょ。1時間ドラマなら、それを40分くらいにしないといけない。お金も人もかかりますね。


役者さんがドラマに出たがる理由がわかったような気がしましたよ。


島田洋七 1950年広島県生まれ。漫才コンビ『B&B』として80年代の漫才ブームの先駆者となる。著書『佐賀のがばいばあちゃん』は国内販売でシリーズ1000万部超。現在はタレントとしての活動の傍ら、講演・執筆活動にも精力的に取り組んでいる。