“暴言王”泉房穂前明石市長が自民を「目の敵」岸田政権を追い込む切り札に
所信表明演説を行ったばかりの岸田内閣が窮地に立たされている。
ここ最近、最低支持率を更新し続けてきた同政権は、地方選挙で軒並み敗北。しかも、これらの選挙で〝参謀〟として対立候補を勝利させ、今や「当選請負人」の呼び声も高い泉房穂前兵庫県明石市長が、自民党を目の敵にしているからだ。
「1勝はしたが、勝った気がしない」
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そう漏らす自民党幹部は、10月22日に投開票された参院徳島・高知選挙区補選と衆院長崎4区補選について、複雑な表情を浮かべた。
補選で2敗の可能性も高かった自民は、1勝1敗に持ち込んだことで党内には安堵の空気が広がったが、実は同日にはもう一つ注目される選挙があった。
それが埼玉県所沢市で行われた市長選で、党幹部が「勝った気がしない」と吐露したのは、自公推薦の現職が無所属新人の小野塚勝俊氏に敗れるという波乱が起き、その衝撃があまりに大きかったからなのだ。
政治部記者がこう語る。
「市長選には3人出馬したが、小野塚氏は落選した2人の獲得票を合わせても届かないぶっちぎりの当選だった。告示直前に埼玉県議会で自民提出の虐待禁止条例改正案(子供放置禁止条例案)の撤回騒動があり、その影響も少なくなかったが、まさに驚くべき結果で〝泉効果〟と話題なのです」
そう、実は「暴言王」「当選請負人」などの異名を持つ泉氏が、小野塚氏の参謀として同選挙戦を支えていたのである。
明石市長を3期12年務めた泉氏は少子化が深刻化する中、手厚い子育て支援で9年連続で同市の人口を増加させた人物。市議に対する暴言の責任を取って今年4月に退任したが、市民の人気は最後まで高かった。
「X(旧ツイッター)のフォロワー数が53万人超えの泉氏は、51万人のフォロワーを持つれいわ新選組の山本太郎代表をもしのぐ政界出身のインフルエンサー。明石市長に就任する前は、右翼活動家に刺殺された石井紘基衆院議員の秘書を経て2003年の衆院選に民主党から出馬。衆院議員を1期務めたこともある。また弁護士でもあり、元大阪府知事&大阪市長だった橋下徹氏とは、司法修習生時代の同期なのです」(在阪記者)
一方、所沢市長選で当選した小野塚勝俊氏は元日銀職員で「政権交代選挙」といわれた09年の衆院選に民主党から出馬し当選。当時は小沢一郎グループに属していたが、その後衆院選に4度続けて落選し、鳴かず飛ばずの日々を送っていた。それを今回、泉氏がよみがえらせたというわけだ。
前出の政治部記者が言う。
「小野塚氏は市長選に出馬するにあたり、泉氏に協力を要請し意気投合。小野塚氏が『(子育て支援の)明石モデルを所沢バージョンに』と市民に呼びかければ、泉氏は『所沢は可能性がある街。明石を超えてほしい』と後押しするなど死力を尽くして選挙戦を戦い、圧勝したのです」
“新党結成”も視野に!?
今回の所沢市長選の結果には、自民党内から「また泉の仕業か…」と怨嗟の声が上がったといわれるが、それも無理もない話と言える。なぜなら、泉氏が応援した候補者は7月の兵庫県三田市長選、9月の岩手県知事選、東京都立川市長選と軒並み当選。中でも三田市長選では、自民、立憲民主、公明、国民民主の推薦を受けて3選を目指した現職を蹴落とし、無所属の新人が当選した。
こうした戦績を残す泉氏の底力を、自民党執行部や岸田内閣は戦々恐々とした面持ちで注視しているのだ。
「ちなみに、岩手県知事選で自民支援の候補を破り当選したのは、小沢一郎氏の側近である達増拓也氏、自民が推す候補を含め5人が出馬した立川市長選で当選したのは、元立憲民主党都議だった。これに所沢市長選での勝利が加わったことで〝泉旋風も極まれり〟との呼び声も上がっているのです」(野党関係者)
立川市の選挙をめぐっては、さらに続きがあった。10月に行われた2議席を争う立川市の都議補選で都民ファーストの会の候補がトップ当選し、立民候補が2位に滑り込んだ。自民が1議席も取れない、異例の事態が巻き起こったのだ。
「この選挙で注目を集めたのは、何といっても小池百合子東京都知事。都民ファの特別顧問を務める小池氏は、都政で公明と緊密な関係を築き自公の切り離しを目指してきた経緯があり、自民候補が敗北した立川市長選の流れを利用して、都民ファ候補の応援に何度も駆け付けた。そのため、トップ当選を受けて『鼻が利く』『恐るべき女傑』と話題になっているのです」(同)
話を戻すと、自民党と岸田政権を崖っぷちへと追い詰める〝泉旋風〟の影響はこれだけではないという。
永田町関係者がこう語る。
「実は、兵庫県明石市を地盤とする自民党の西村康稔経済産業相(兵庫9区)が、次期衆院選で自身の選挙区に泉氏が出馬するのでは? と戦々恐々としているという。ただ、うそかまことか、当の泉氏は『国政に復帰する気はない』と漏らしており、最近、講演でも『総選挙で強い政治勢力を作って、日本の政治を変える。私はその脚本・監督をしたい!』と言い放っているのです」
これは自民党へのけん制か、それとも〝新党結成〟の宣言か。どちらにしても岸田政権が今後さらに同氏に追い込まれていくことは間違いなさそうだ。
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