蝶野正洋 (C)週刊実話Web 
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蝶野正洋『黒の履歴書』〜世界を揺るがす軍事的衝突

中東のイスラエルで起きた軍事的衝突が世界を揺るがせている。


パレスチナ自治区のガザ地区を実効支配するイスラム組織「ハマス」が、イスラエルを突如として奇襲攻撃。多くの被害者を出し、人質を連れ去るなどした。イスラエル側も反撃しており、現在、双方合わせて多くの死者が出ている。


これは歴史的な大事件だ。紛争が起きた直後から、海外のメディアではこのニュースを詳細に報道していた。一方、日本のメディアはジャニーズ問題ばかり報道し、現地の情報がなかなか伝わってこなかった。


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イスラエルでの緊張が高まるにつれて日本での報道は増えたけど、どれも一方的なフィルターがかかっているように感じる。中にはピントがずれているものもあるから、ちゃんと見極めが必要だと感じたよ。


この問題は本当に複雑で、しっかりと理解することは難しい。俺もいろんな解説を見聞きして、ようやく分かってきたけど、どちらが悪いとは明確に言い切れないんだよ。


アラブ系とイスラム系の民族的な対立が続いていて、第二次世界大戦のときにイギリスが介入し、かなり強引にイスラエルを建国した。それからも戦争が繰り返され、パレスチナの人々はガザ地区に押し込まれてしまった。そこで生まれたハマスという勢力が武力闘争を繰り返したことから、テロ組織のようにもみなされるようになった。


イスラエルとハマス…どちらが正しくて、どちらが非難されるべきなのか。お互いに報復を繰り返す憎しみの連鎖が続いているし、根本的に矛盾していることもたくさんある。

世界のバランスがおかしくなっている

和平は模索されてきたけど、ここで国連がいかに無力かということを思い知らされるね。このような紛争を仲裁するための組織なのに、最近ではロシアや中国も国連の勧告を聞き入れなくなっている。

見方を変えると、これだけの紛争が起きたということは、イスラエル、ハマスそれぞれのバックに武器を供与する国や組織がついていて、そこに政治的な思惑と利権が絡んでいるのかもしれない。そう考えると、今回の紛争で着いた火が、世界へと燃え広がる可能性は高い。


ロシアとウクライナの争い、中国とアメリカの台湾を巡っての対立、北朝鮮の動向、そして今回のタイミングで勃発した中東での紛争…。これらは、すべて繋がっていると考えたほうがいい。世界のバランスがおかしくなっていて、紛争は起きても解決の糸口がなく、火種だけがどんどん増え続けている。


一般市民の間でも争いは広がっていて、すでにアメリカではイスラム教徒に対するヘイトクライムが起きている。ベルギーでは銃撃テロ、中国ではイスラエル大使館の職員が暴行されたという事件も報じられている。もはや、世界の至る所で争いが起きている。


中東の紛争は、日本人にとっても対岸の火事では済まない。海外旅行に行くときも、今後しばらくは十分に気をつけたほうがいい。


そんな世界情勢の中で個人ができることは、さまざまなメディアを横断して情報を得て、多面的に状況を分析すること。日本人もすべては自分事と捉えて、真剣に対策を考えるべきだと思うね。
蝶野正洋 1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。