昨年の秋、当連載にて大阪府茨木市の大正川で竿を出したことがありました。阪急電車から見る大正川が気になって試しにやってみたところ、小バス(オオクチバスの子供)が飽きずに釣れたように記憶しております。もっとも、釣果は二の次。気になっていた場所で実際にやってみた、ということが大事なわけでして…。あれから約1年。今回は、宮城県仙台市の街中を流れる梅田川で竿を出してみたいと思います。動機は列車の車窓から目にする度に気になっていたからであります。
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仙台駅から下りの東北本線に乗ると、駅を出発してほどなく1本のドブ川を渡ります。小さい川なので通り過ぎるのは、ほんの一瞬。ちょうど川のカーブにあたる箇所ということで、青緑色に濁って底の見えない水面はなんとも妖しげです。いつかあそこで竿を出してみたい、と考えているうちにはや幾年。仙台市内での用事ができたため、ちょいと立ち寄ってみることにしました。
所用を早めに済ませ、仙台駅から歩くこと20分ほど。仙台というと都会のイメージもありますが、駅からちょいと歩けば、のどかな住宅地となります。梅田川はこの静かな一帯を流れており、仙台駅から徒歩圏内にもかかわらず、田舎じみた雰囲気がまたのんびりしてよいものです。
アタリ頻発ドブ川に夢中
川沿いをしばらく歩くと、いつも電車で通る鉄橋が見えてまいりました。ここよ、ここ。ここでやってみたかったのよ、と川をのぞき込むと、相も変わらず青緑のドブ色に濁った底の見えない水面。果たして何が釣れるのでしょうか。
早速、安物の渓流竿に簡単な玉ウキ仕掛けをセット。エサのミミズをハリに付けて、濁った水面へ仕掛けを投じます。ドキドキしながら玉ウキを見つめているとポワン…ポワンポワン。早くもアタリが出ました。さすが、濁ったドブは魚影が濃いと見るうちに、スーッとウキが水中に引き込まれました。
軽く合わせると、ブルルッと小気味よい手応えで釣れたのはタモロコです。こうした小河川や用水路など、割とどこにでもいる魚ですが、ずっと気になっていた釣り場で釣れた1尾目はやはり嬉しいもの。リリースして再び仕掛けを投じると、すぐにアタリがあってまたタモロコです。
その後も仕掛けを入れれば、ほぼ必ずと言ってよいほどアタリがあり、釣れるのはすべてタモロコ。ひとしきり釣ったところで、せっかく来たのだから他のポイントも見てみようと、川沿いをちょっと歩いてみることにします。
しばらく歩くと階段があり、「こりゃおあつらえ」とばかりに水辺へ下りると、これまたよさげな深みに行き当たりました。これはタモロコだけでなくフナか何かいるかもしれない…。こんなチンケなドブ川でも、いざ竿を出してみるとつい夢中になってしまうというのが、釣りの素晴らしいところかもしれません(個人的見解)。
ちょっとした期待を胸に仕掛けを投じると、すぐにアタリがあり、釣れたのはタモロコ。その後もタモロコのオンパレードです。「この川はタモロコしかおらんのか…」と歩きながら釣って行くと、浅瀬に20センチほどのオオクチバスが3尾。あら、あんなのもいるんじゃないの…。
実は国内外来種小物でも満足
試しにステイするオオクチバスの目線の少し先へ、そーっと仕掛けを入れてみます。反応のないオオクチバス。と、エサのミミズが浅い水底で右に左に動いて消えました。何か食った? 反射的に手首を返すとブルルッと手応えが伝わり、釣れたのは…タモロコ。濁った水の中をよく目を凝らして見てみると、あちこちに小魚の群れがあり、すべてがタモロコのようです。これだけ魚影が濃いと、他の魚が食いつく暇はないのかもしれませんな。でもいいんです。頭が丸くていぶし銀的なタモロコは個人的に好きな魚。酒のツマミ用に適当量を釣ってバケツにキープし、竿を畳むことにしました。
帰宅後は、タモロコを素焼きにして一杯です。美味で知られる琵琶湖名産ホンモロコとよく似たタモロコ。今回は生息環境がややアレなせいか、僅かに泥臭さが感じられますがツマミには十分です。ちなみに、タモロコの本来の生息域は関東以西。ということは、見かけた小バスもタモロコも本来は梅田川にはいなかった種と言えます。でもまあ難しいことは考えずに、ずっと気になっていた場所で小物釣りを満喫できて楽しい1日となりました。
三橋雅彦(みつはしまさひこ)
子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。
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