(画像)Shawn.ccf/Shutterstock
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関東大震災から100年…伊豆諸島で地震頻発「首都直下地震」に警戒!

猛暑に見舞われた今夏、日本列島はまるで〝凪〟のように大きな地震が起きなかったが、秋風の到来とともに関東の島しょ部が揺れ始めた――。


気象庁は10月9日午前、伊豆諸島と小笠原諸島、千葉県、四国や九州南部に津波注意報を発令。八丈島で60センチ、神津島と三宅島で50センチの津波を観測した。同日5時25分ごろに伊豆諸島の鳥島近海で火山活動や地震による海底の地滑りなどが発生した結果、津波が押し寄せたとみられているが、詳細はいまだ不明なままだ。


津波の原因をサイエンスライターが推測する。


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「今回の地震は震源地とみられるエリアに観測点が少なかったことから原因がはっきりしないが、仮に火山活動が原因だとすると、地下から供給されたマグマによってマグマだまりが鼓張。岩盤が破壊されて海底地震や地滑りが発生したことが考えられる。地形が大きく隆起することで海水が持ち上げられ、津波が発生した恐れがあるのです」


また、同エリアでは10月2日から4日連続でM(マグニチュード)6以上の地震が発生。5日には震源の深さ17キロ、M6.5の地震が発生し、津波注意報が発令された経緯がある。そのため近い将来、大地震や天変地異が起きる可能性がにわかに指摘され始めているのだ。


武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏が言う。


「私は今回の津波の原因は、火山性地震だと考えている。鳥島は富士火山帯に属していますからね。ただ、地震史を振り返っても都心から約580キロも離れた鳥島近海の地震が、首都直下地震を誘発したとの例がないことから、箱根や富士山の噴火を懸念しているのです」

富士山噴火を誘発する危険も

島村氏が言う「富士火山帯」とは、本州中部を貫き富士山から伊豆諸島、小笠原諸島を経てマリアナ諸島北西部にまで至る巨大な火山密集地域。この火山帯には現在も活動が活発なものが多いが、もしも鳥島周辺で発生した津波が火山性地震によるものだとすれば、富士山噴火を誘発する危険性があるというわけだ。

もっとも、その一方では関東直下地震の発生を危惧する声も高まっている。津波はあれど地震の規模や原因が分からないという特異な状況が、巨大地震への警戒感を強めているのだ。


科学誌の記者が語る。


「津波の原因が不明な中で話題となっているのは、やはりこのエリアの地震活動の活発化です。地震学者の間でも4日連続でM6以上の地震が起きるのは、異例と言われている。5日に起きた地震は震源が17キロと比較的浅かったが、今後深い場所で起きることがあれば、関東にも影響を及ぼしかねないことになる」


同記者によれば、関東圏への地震を警戒する中で注目されているのは、東京の南約930キロ、小笠原諸島の父島の西約130キロの太平洋上に浮かぶ西之島だという。鳥島と同じ富士火山帯に属するこの島は、2013年の噴火以来、噴き出すマグマで陸地が拡大し続けているが、活発な火山活動が首都圏に被害をもたらす可能性が指摘されているからだ。


「西之島の噴火で危ぶまれているのは、海洋プレート内部で起こる震源の深さ60キロ以上の深発地震です。西之島の近海では太平洋プレートが陸側のフィリピン海プレートの下に沈み込んでおり、15年には震源の深さ682キロ、M8.1の巨大地震が発生。1000キロ近く離れた神奈川県や埼玉県にも、震度5前後の揺れをもたらした。これと似た地震が西之島の噴火活動で誘発されることが懸念されているのです」(同)

関東大震災から100年…

ちなみに、伊豆諸島に位置する鳥島は西之島と距離は離れているが、ここでもしばしば300〜500キロ前後の深さを震源とする地震が発生するという。今回は浅い部分を震源とする地震が頻発したが、深発地震が連続して起こればそのひずみが蓄積し、関東沿岸部に被害をもたらす可能性も否めないのだ。

「夏場は少なかったが、関東では今年5月11日に千葉県南部で震度5強、M5.2の地震が発生。22日には伊豆諸島の新島・神津島付近で震度5弱、M5.3の揺れがあり、26日には茨城県神栖市や千葉県銚子市で震度5弱、M6.2の地震が起きた。原因は太平洋プレートの活発化とみられているが、都心の地下は東から太平洋プレート、南からフィリピン海プレートが沈み込み、ひずみがたまりやすい。そのため鳥島で深発地震が頻発すれば、首都直下地震発生の要因となる可能性も少なくないのです」(地震研究者)


関東大震災から100年を迎えた今年、東京都は首都直下地震の恐ろしさと防災の重要性を伝えるためにさまざまなイベントを実施している。こうした知識が必要となるのはもはや遠い未来ではないかもしれないのである。


防災ライターの渡辺実氏が言う。


「関東大震災はおよそ220年のサイクルで発生すると国は言っているが、東日本大震災の発生で日本列島自体が東にずれ、発生までの期間が短縮されたと話す研究者もいる。その真偽は不明だが、次の発生に向かって進んでいることは確実で、いつ起きても不思議ではないのです」


政府はM7クラスの首都直下地震が都心で発生した場合、最悪で死者2万3000人、95兆円の経済損失が発生すると想定している。生き残るためには、常に危機が迫っていることを忘れないことが肝要だ。