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いまの若手を見ていて思うこと~島田洋七『お笑い“がばい”交遊録』

島田洋七
島田洋七 (C)週刊実話Web

お笑いトリオ『四千頭身』の後藤拓実が、月収より家賃の方が高くなり、引っ越したというニュース記事を少し前に目にしました。なんでも、家賃が31万円もするタワーマンションから実家近くのマンションへ引っ越したという。そのニュースを目にして、四千頭身とは面識はないけど、若手芸人は売れる期間が短くて辛いなと思いましたよ。


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俺の感覚だと、31万円もする家賃の部屋に住むには、毎月400~500万円の給料を数年間安定して稼がないと住まないですね。四千頭身は3人組でしょ。実際にどれくらいもらっているかはわからないけど、良い月でも100万円くらいじゃないかな。3分の1を家賃に回すのはきついですよ。

俺は昔、美空ひばりさんに「お金は無駄遣いしないで大事に貯金するのよ。芸能界はいつどうなるかわからないから」、石原裕次郎さんにも「うまい儲け話ですり寄ってくる人がたくさんいる。そういうのに乗らないことが大事だよ」というアドバイスを受けた。

あれだけの大スターのひばりさんや裕次郎さんに言われたから、貯金はしたし、投資なんかにも一切、手を出しませんでした。たけしや紳助も同じですよ。ビックリするくらいのお金を遣うことはありますよ。でも、それだけ稼いでいるからなんです。

俺の場合、お好み焼き屋を渋谷や新宿、高円寺などに3~4店舗出していたことがあります。でも、借金をして店を出していたわけではなく、自分の芸で稼いだお金、あくまで収入からですよ。芸能界がダメになったら、そっちに力を入れようくらいの軽い気持ちでした。

4~5年は貯金をしながら見極める…

お好み焼き屋は、もともと広島の有名な中華料理屋で、高齢の社長さんの代わりに仲居頭として店を任されていた俺の母ちゃんが見てくれた。故郷の広島だと、お好み焼き屋は大体10人程度が入る小さい規模のお店ですよ。

しかし、東京で俺が出した店は1軒で数十人もお客さんが入った。店舗を増やしていったら、母ちゃんが「もうようせんでえ~。こんなにはしんどい」と言うから、お好み焼き屋もやめたんですよ。売れているときだったから、ファンの人も来てくれたし、経営は上手くいっていたんです。

でもね、これがもし売れていないときだったら借金をして店をやるわけでしょ。そうすると、なんとしてでも赤字は避けたいから、必死になって辛いですよね。

今はものすごい数の若手芸人がいるでしょ。テレビ局も新しい若手をどんどん出す。もうちょっと大事に使ってほしいと思いますね。

芸人側は少しでも売れ出すとずっと続くと思ってしまうものなんです。すぐに家賃の高いマンションに住んだり、高級な服を買う。でもね、先がどうなるか4~5年は貯金をしながら見極めたほうが良いですね。テレビに出ているときだけ芸能人としての顔をすればいいんですよ。

普段はごく普通の洋服を着て、テレビのときだけ衣装として良い服を着る。ばあちゃんの口癖でしたけど、なんぼ売れても3食以上は食べれませんから。見栄を張らなくていいんですよ。70歳を超えた俺が今の若手芸人を見て心配になることです。

島田洋七
1950年広島県生まれ。漫才コンビ『B&B』として80年代の漫才ブームの先駆者となる。著書『佐賀のがばいばあちゃん』は国内販売でシリーズ1000万部超。現在はタレントとしての活動の傍ら、講演・執筆活動にも精力的に取り組んでいる。

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