林家つる子(C)週刊実話Web
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落語家/林家つる子インタビュー〜来春、11人抜きで真打ちに昇進!〜

林家つる子は来年3月、真打ちに昇進する。2010年9月に師匠の九代目林家正蔵に入門して以来、14年目での大願成就だ。所属する落語協会にとっては12年ぶり、女性としては初めての抜てきで、先輩11人を抜いての昇進でもある。注目されたのはその美貌だけでなく、落語大会での数々の受賞歴、古典の名作を女性目線の噺に作り替えたり、YouTubeでの配信やラッパーとしての活動など多才なところ。昇進を半年後に控えた彼女の「期待と不安」を聞いた。


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――真打ち昇進、おめでとうございます。


つる子 ありがとうございます。


――来春からは「師匠」と呼ばれ、弟子を持つこともできるわけですが、他にどんなところが変わるのでしょう?


つる子 最も大きいのは寄席で最後の高座に上がる主任(トリ)を務めることができるようになることです。私は大学の落語研究会に所属していた頃から前座修行の間もずーっと寄席に通っていますが、やはりトリは別格。寄席の前に名前の書かれた幟が何本も立ちますし、トリが誰なのかによってお客さんの入りも違ってきます。責任重大ですし、緊張感もある分、楽しみも大きいですね。正直、プレッシャーに押しつぶされそうなこともあります。実際、真打ち昇進が決まる前後の今年春先には体調を崩してしまい、喉の痛みから声が出にくくなってしまったんです。慌てて病院に行って診察してもらったところ、蓄膿の気があるということで、鼻うがいを始めました。以来、体調はいいんですよ。


――二ツ目時代の半分以上がコロナ禍だったわけですが、生活面はどうでしたか? いやらしい話、真打ちになったら収入は安泰なのでしょうか?


つる子 前座時代は師匠方からいただくお小遣いなどを貯め、二ツ目になると自分で仕事を取ることができるようになります。いろんな考え方があると思いますが、私は落語だけで生活し、コロナも乗り切りたいと考えていました。なので、貯めたお金を切り崩しながら、YouTubeや配信落語を有料化する工夫をして食いつないできました。真打ちになったら安泰? おそらくそんなことはないと思います。二ツ目だから気軽に声をかけていただいたお仕事も、もしかしたら減るかもしれないですし。そこはちょっと不安ですね。でも、応援してくださる方への感謝の気持を持ち続けて恩返しをしていけたらなと思っています。

サークルの新歓で落語との衝撃の出会い

――YouTubeでは落語の配信以外にどんなことをされてきたんでしょう?

つる子 落語関連で言えば、「着物のたたみ方」とか。古典落語に出てくる登場人物像を深掘りしてみたこともあります。あとは落語を題材にしたショートコントなど。でも、一番反響があったのは、「鬼滅の刃を語る」という動画でした。落語とは全く関係ないのですが、ただ単に鬼滅好きの私が思いを語っただけです。でも、そこを入り口にして落語家の私を知っていただけたからありがたいです。


――ラップも披露してるんですよね? コロナ禍で覚えたんですか?


つる子 いえ、昔から音楽全般が好きなので、コロナ前から色々と試していました。言葉を淀みなく喋るあの感じや韻を踏むのが好きで、自己紹介ラップは二ツ目になった8年前に考案しています。♪名付けられたネーム 敷かれたレール 親と恩師と仲間からのエール…みたいな。そのラップは新作落語にも取り入れてます。YouTubeの良さって、興味を持ったら何でもできることだと思うんです。見てくれる方もタイトルに興味があったら気軽にきてくださるので、ファン層の広がりという意味ではやっててよかったなと思いますね。15年に「ミスiD」に応募した(特別賞を受賞)のも、若い世代に落語を知ってもらいたかったから。まあ、単純に落語家がミスコンに出てたら面白いじゃないですか(笑)。


つる子は高校時代、演劇部に所属。進学した中央大学でも演劇部に入るつもりだったが、サークルの新入生歓迎イベントで偶然、落語と出会うことになる。


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――どうして落語家に?


つる子 大学のサークル新歓で、落語研究会の人たちに部室に引っ張り込まれたんです。生まれて初めて落語を聞きましたが、衝撃でした。江戸時代に生まれたものなのに、今でも素直に笑えるし面白いことに感動しました。元々、表現することには興味があったので、やってみようと思ったんです。いただいた高座名は中大落研で三代目となる「中央亭可愛(ちゅうおうていかわい)」。以来、落語にのめり込み、2年生のときには全日本落語選手権に出場して審査員特別賞をいただいたこともあります。


――大学の落研って、男性が多いイメージですが、セクハラとかはなかったですか?


つる子 ある日、部室に行ったら笑いを取るために男子が全員、全裸になっていたんです。それをセクハラと言ってしまえばそれまでですが、面白いことをやりたいという気持ちがよーく分かったので、楽しかったですよ。


――かなりモテたのでは?


つる子 うーん…女子部員が各学年に2〜3人程度と少なかったので、女子は平均的にモテていたかもしれませんね。一応、2年生のときに彼氏はできました。


――大学を出て、そのままプロになる決心をしたんですか?


つる子 いいえ。落語をもっと突き詰めたいという気持ちもあったのですが、未知の世界に飛び込む勇気も出せなくて、普通の就活もしました。自分を表現したいということから、テレビ局を中心にアナウンサー志望で受験しました。でも、全滅。他には営業職も受けたのですが、リーマンショックもあってうまくいきませんでした。そんな中、落研の卒業公演の準備に集中するようになり「公演をいいものにしたい!」という自分の熱い気持ちに気づいたんです。大学卒業間際になって、ようやく落語への思いを確信し、プロになる決心をしました。

女性の弟子を取られたばかりで

――弟子入りしたのは九代目の林家正蔵師匠。お茶の間では林家こぶ平としての印象が強いのですが、なぜ師匠を選ばれた?

つる子 大学を出てからは中華料理店でアルバイトをしながら寄席に通い詰めました。そんなとき、師匠の高座を見たんです。私にとってもテレビでのイメージが強かったのですが、高座とのギャップが大きくて、今の落語界を背負ってる方なんだなと感銘を受けたんです。ちょうどその頃、師匠が女性のお弟子さんを取ったことを知り、ずっと相談に乗ってくださっていた落研の顧問である黒田絵美子教授と、中央大学付属高校ご出身の柳家さん喬師匠を通して師匠に会うことが叶いました。実は師匠にとっても姉弟子が初めての女性で、どう接していいか悩まれていたんですね。もう1人女性がいることで、弟子同士もやりやすくなるんじゃないかと入門を許されたんです。


――どんな師匠ですか?


つる子 驚くほど稽古熱心で、役者として出演されるドラマなどの撮影現場でも、合間を見つけては稽古をされていました。なんて真面目な方なんだろうと、弟子ながら思いましたね。真面目といえば、地方に出るお仕事があっても泊まらずに必ず帰ります。師匠の奥様へのお土産も欠かさず「これ、ゆっこ(海老名有希子さん)に買っていこう」って。あと、弟子の私が言うのも変ですが、師匠は甘え上手な方だと思います。上の師匠方からすごく可愛がられてるなぁと感じますね。


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――前座修行時代は苦労などありませんでしたか?


つる子 苦労というのかどうか…。おじいちゃん師匠から「お姉ちゃん、ちょっと膝枕してくれ〜」と言われたり、着付けをしていると最後の羽織を被せるときにわざと背中を反ってきて、私がおじいちゃん師匠を抱きかかえる感じになっちゃったり。もちろん、みんなシャレなんですけどね。そういうのを姉弟子や先輩方が笑いに変えていくテクニックを見て、学ばせていただきました。


――最後に、真打ち昇進後の抱負を。


つる子 二ツ目になってから、古典の名作「子別れ」や「芝浜」をおかみさんを主人公にした女性目線の新作として披露してきました。賛否ありましたが、師匠(正蔵)からは「女性にしかできないことがきっとあるはず。いろいろ挑戦していい」と言われています。伝統をきちんと守りつつ、女性がどんどん世に出ていく今の「時代」にも歩み寄っていきたいですね。
◆はやしやつるこ 1987年6月5日生まれ。群馬県高崎市出身。11月28日、ひとり会「つる子抄〜噺・音・舞〜」(東京千代田区・内幸町ホール)開催。真打ち披露興行は同時昇進の三遊亭わん丈とともに来年3月21日から上野鈴本演芸場、新宿末廣亭、浅草演芸ホール、池袋演芸場で順次予定されている。公式サイトhttp://tsuruko.jp/