蝶野正洋 (C)週刊実話Web
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蝶野正洋『黒の履歴書』~「ジャニーズ」問題との向き合い方

ジャニーズ事務所に関する問題が取り沙汰されている。10月2日、二度目の記者会見を開いて、ジャニーズ事務所は社名を『SMILE-UP.(スマイルアップ)』に変更して補償を行う会社になり、所属タレントは新たに設立される会社とエージェント契約を取り交わす指針が発表された。


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ただ、この会見の進行をめぐってさらに紛糾するなど、問題解決はまだまだ先になりそうな気配だった。


『ジャニーズ』の名前を消すというのは大きなことだけど、大事なことは、それで本当に体制を変えることができるのか。そして、過去に起きたことに対してしっかり向き合っていけるのかということだよね。かつて、同性に対する性的加害が見過ごされがちであったことは否めない。ルールがちゃんとしていなかったし、パワハラやセクハラに対しても認識が甘かったというのもある。


それでも問題なのは、見て見ぬふりをしていた周囲が、その罪に対してどう向き合っていけばいいのかということだよね。


ハラスメントがあって、それが目の前で起きていたら、止めに入るのが普通だと思う。だけど、いろいろな事情でそれができない状況だったのも理解できる。頭では悪いと思っていながら、この世界はそういうモノだと受け入れてしまう可能性もあるからね。


最近は少ないと思うけど、宴会で若手に無理やりビールを一気飲みさせたり、一発芸をさせたりするような会社が昔はたくさんあった。それが受け付けられなくて、傷として残ってしまう人もいたと思う。

視聴率を稼ぎたいために…

先輩たちは「俺ら世代はパワハラを乗り越えてきたんだから、お前らも大丈夫だろう」って簡単に思ってしまう。でも、そうやって見て見ぬふりをしているだけでも、ハラスメントに加担していることになるんだよ。

スポーツの世界でも、ハラスメントが通過儀礼と言われることは多かった。相撲界での「かわいがり」は、しきたりや伝統ということで済まされていた。


でも、時代が変わったんだよ。それを今の時点からどう考えるのか、ということだよね。


この問題は今、ジャニーズを責め立てているメディア側にも突きつけられている。知っていたけど、知らないふりをして、ずっと触れないようにしていた。それはやっぱり、メディア側にも利益があったからだよね。


テレビ局のプロデューサーは、ジャニーズというブランドを使って視聴率を稼ぎたかったから黙っていた。それを被害者の人たちから突っ込まれたら、言い訳できないと思う。メディアがそこでちゃんとした判断をして、そういう噂のある企業とは取引しませんと突っぱねていたら、問題が広がらなかったはず。


ただ、メディアやマスコミが、具体的にどういう責任を取っていくべきなのかというのは、難しい問題だよね。


今、テレビ局がジャニーズを使わないと言っているのは、反省をしているのではなく、単なるスポンサーの意向だよ。スポンサーが使うなって言うから、テレビ局も使いませんと言っているだけ。


だから、本当に変わるのはこれからだよ。メディアも、他の芸能事務所も含めて、丸ごと変わるくらいの意識を持って取り組んでいくべき問題だと思うよ。
蝶野正洋 1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。