日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web
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『アユ』神奈川県横浜市/帷子川産~日本全国☆釣り行脚

この間まで暑い暑いと言っていたのに、早いものでもう10月。日々秋の気配を感じるようになってきました。毎年のことですが、この時期になるとやっておきたくなるのがアユ釣りです(個人的見解)。


初夏の解禁から盛夏を経て、シーズン終盤となる秋。ススキなんかがチラホラと見られるようになった川辺で、竿を出すというのもまた趣があるものです。加えて、アユは年魚ですから、終盤は割と型のよい物が釣れるというのも魅力なんですな。


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ということで、神奈川県は横浜にやってまいりました。多くの人で賑わう横浜駅から相模鉄道で10分。上星川駅の前を流れる帷子川で竿を出してみることにします。駅を降りて川をのぞきながらしばらく歩きますが、アユのヒラ打ちは見られません。とはいえ水質、川相とも、いかにもアユがいそうな雰囲気です。よさげな落ち込みが目に入ったので、まずはここで竿を出してみることにしましょう。


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本格派の〝ちゃんとした釣り人〟とは対照的なワタクシ。高度な技術や高価な道具を必要とする崇高な友釣りなどができるわけもありません。安物の渓流竿に市販のコロガシ仕掛けを結び、落ち込みやそれに続く淵頭へと仕掛けを入れてはひたすらしゃくることしばし。いないのか…と不安になってきた頃合いでグンッと竿に重みが乗るとともに、川底でギラリと魚影が光りました。きたっ! と思った瞬間、フッと軽くなる手元。くぅ〜っ、バレたぁ〜! ギラリに興奮ガツンを堪能

あの光り方と大きさは明らかにアユ。バラシは悔しいですが、いると分かれば〝より真剣に〟向き合えるというものです。丁寧にしゃくるうちに再びガツンと感触が伝わり、キューンと竿先が絞り込まれて右に左にと道糸が走ります。バレないように竿の弾力を活かして抜き上げたのは、22センチほどのアユ。いると思っていたとはいえ半信半疑だっただけに嬉しい1尾です。


いるということは、ヒラ打ちが見られる場所もあるハズ…。一旦竿を畳んで、川をのぞきながら少し歩いてみることにします。川沿いの道をしばらく歩くと、程よい水深が続く瀬の中に、ギラリと光る魚影が目に入りました。いたいた…。アユ釣りでは、このヒラ打ちを目にすることで、さらにアドレナリンが出るものです(個人的見解)。早速やってみましょう。


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ヒラ打ちが見えるあたりのやや上手へと、静かに仕掛けを沈めてしゃくること数回。ガツンと感触が伝わりハリ掛かりです。上へ下へと走る元気な手応えを楽しみつつ、釣り上げたアユは20センチほどの食べ頃サイズ。先ほどのアユに比べると、滑らかな魚体で程よく肥えたきれいなアユです。ここからは飽きない程度にポツポツと掛かるようになり、秋のアユ釣りを堪能。当初は「型が見られれば…」などと思っていたのが、夢中になってしゃくり続けるうちにツ抜けとなり、食べるには十分な量となったことから竿を畳むことにします。 ありがたきは環境の回復

駅へと向かう道すがら、川辺に下りられる箇所がちょっと気になり、まだ日もあるので少しだけやってみます。結果は15センチほどのアユが2尾。川に立ち込んで竿を出したのですが、ここでちょっと驚いたのは、都市河川にありがちな下水処理水の臭いがほとんど感じられないことです。そして、足元の岩盤もヌルつくことがほぼありません。ヌルつきだけで水質を判断することはできませんが、思いのほか快適でした。


かつては横浜港から輸出するハンカチやスカーフなどを染める捺染工場が立ち並び、布を洗うのに利用されていた帷子川。また、他の都市河川同様に家庭廃水や工場廃水による汚染の著しかった時期もあり、現在、こうしてアユ釣りが楽しめる環境になったというのはありがたいかぎりです。


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さて、持ち帰ったアユは適量を塩焼きと甘露煮に、残りは正月の甘露煮用として冷凍庫に保存。今日の釣りを思い返しつつ一杯やります。前述のとおり川の環境がさほど悪くないせいか、塩焼きは香ばしくスッキリとしたアユらしい風味が感じられて美味。甘露煮もメスはこの時期ならではの子持ちとなっており、これまた旨い肴です。


街中で手軽にアユ釣りが楽しめる。この素晴らしい環境の復活には地域の方々の尽力があってのこと。繰り返しになりますが、本当にありがたいことであります。
三橋雅彦(みつはしまさひこ) 子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。