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『オールナイトフジ』と『夕やけニャンニャン』~第10回『放送作家の半世(反省)記』

Cooler8
(画像)Cooler8/Shutterstock

「2023年の上半期にブレークし、年末にかけて最も注目されているタレントは誰か?」と問われれば、若干の飛び道具感は否めないが、私は元テレビ東京局員で〝ノブロック〟こと佐久間宣行氏の名前を挙げてみたい。

テレビ演出家から作家、ラジオパーソナリティー、ユーチューバー、司会者などの肩書を持つ佐久間氏は、テレビ東京の局員時代から手掛けるバラエティー番組の『ゴッドタン』をはじめ、ドラマ『ウレロ☆』シリーズやトークバラエティー『あちこちオードリー』(共にテレビ東京系)などで名を上げ、パーソナリティーを務めるニッポン放送『佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)』は、現在、驚異の5年目に突入している。

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この4月からは関東ローカルの深夜枠ではあるものの、オズワルドの伊藤俊介、さらば青春の光の森田哲矢らと共に、フジテレビ系のバラエティー番組『オールナイトフジコ』のMCを担当している。

「タイトルからもお分かりの通り『オールナイトフジコ』は、あの『オールナイトフジ』(フジテレビ系)の流れを汲む正統な後継番組です。そもそも『オールナイトフジ』といえば1980年代に、現フジテレビ社長の港浩一氏がディレクターを務め、とんねるずを若者のカリスマに押し上げた伝説の深夜番組。現役女子大生の出演者たちを『オールナイターズ』と名付け、空前の女子大生ブームを巻き起こしました」(ベテラン放送作家氏)

実は『夕やけニャンニャン』(フジテレビ系)の下地になったのは、この『オールナイトフジ』から派生した『夏休み女子高生スペシャル』で、おニャン子クラブがオールナイターズのパクリであることも容易に想像がつくだろう。

画期的なアイデアが詰まった番組

まぁパクリといっても両番組は同じ制作チームが担当していたので、ここでは『夕やけニャンニャン』は『オールナイトフジ』の〝妹番組的〟な位置付けとしておきたい(笑)。

「港さんが社長に就任したので、ディレクター時代の代表番組でも復活させるか…程度の、いかにも往年のフジテレビっぽい悪ノリで企画がスタートしたと聞いています」(同)

しかし、当時の『オールナイトフジ』は、生放送でディレクター(港氏)がテロップ入りで顔出しをしたり、女子大生が大学名を公表して出演したり、さらにはレコードデビューまで飾るなど、画期的なアイデアが詰まっていたからこそヒットした。その事実は認めなければならない。

「同番組のハプニングといえば、とんねるずがデビュー曲の『一気!』を歌唱中、一台1500万円のカメラを倒し、壊したこともありました。覚えている視聴者の方は少ないと思いますが、とんねるずは『ザ・ベストテン』(TBS系)でもカメラを倒して壊しています。両件とも保険が適用されて、とんねるず側は弁償をしていませんが、当時は不謹慎にも自分たちは幸運の神様に守られていると笑っていました」(同)

『オールナイトフジ』(1983年4月〜1991年3月)の全平均視聴率は3.5%、最高視聴率は7.2%で、深夜帯としては異例の高視聴率を誇り、当時のテレビ界でフジテレビが覇権を握る一因にもなった。

しかし、最終的には新番組への〝つなぎ〟として89年2月に登場した裏番組に、打ち切りに追い込まれてしまう。それが『三宅裕司のいかすバンド天国』(TBS系)、通称『イカ天』だった。

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