(画像)Melnikov Dmitriy/Shutterstock
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北朝鮮は韓国を撃つ!? 日米韓を狙いに定めロシアと共謀…核配備も

北朝鮮の金正恩総書記が9月18日、1週間の日程で行われたロシア訪問を終えて北朝鮮へ帰国した。


今回の訪露の中でプーチン大統領との首脳会談を行ったことは、ロシアと北朝鮮の軍事協力がさらに進み、すでにロシアと中国が行っている海上合同演習などに北朝鮮が参加する可能性も出てきた。実際、首脳会談では何が話し合われ、何が合意されたのか。


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「正恩氏が、原子力潜水艦や軍事偵察衛星の技術協力を求めているのは、今回の訪露に多くの幹部を同伴させたことでも分かりますが、仮にロシアの技術協力で衛星の打ち上げに成功したとしても1基や2基では話にならない。単純計算で3桁は必要です。原潜についても建造に成功したとしても、定期的な炉心交換など、莫大な費用と高度な安全管理が必要になります。そんな資金は北朝鮮にはありません。プーチン氏は北朝鮮の人工衛星開発に協力する姿勢を示しましたが、対外向けのリップサービスではないか」


と語るのは外交関係者。


「プーチン氏の人工衛星協力発言から垣間見えたのは、ロケットを軌道に乗せる技術支援に重点を置いているように見えたこと。北朝鮮は核ミサイル技術を保有したと主張しているが、疑問を持たれているのが大気圏再突入技術です。まだICBM(大陸間弾道ミサイル)を通常角度で撃っていないこともあり、これが最後の難関として残っている。ただし、ロシアは核兵器の不拡散姿勢は堅持しており、北朝鮮の核兵器開発に決定的な助けになるような技術移転まで踏み切るかどうかは分かりませんが、この問題をクリアするには、北朝鮮に戦術核を配備する手もある。もし北朝鮮がベラルーシ化すれば、日米韓に対する軍事的脅威は飛躍的に増大しますから」(同)


カギは露朝首脳会談(9月13日)が行われたボストーチヌイ宇宙基地に正恩氏を招待したことにある。


「実は、2022年4月にベラルーシのルカシェンコ大統領もここを訪問して大感激しました。本来なら機密中の機密を外国人に見学させるはずはないからです。その後、23年5月に両国はロシアがベラルーシに戦術核を置くという協定に調印している。しかも、この戦術核は驚くべきことにベラルーシに譲渡されたのではなく、管理・運用するのはロシアで、ベラルーシは核配備を翻意できない状態になっていることです」(同)

北朝鮮が核政策“憲法”明記

北朝鮮の核に関するスタンスは大きく変わっている。今年8月末に海軍の司令部を訪れた正恩氏は、演説の中で、共同軍事演習の定例化に合意した日米韓3カ国を非難した上で、海軍への戦術核兵器の配備を進めていく方針を示したのだ。それだけではない。

「北朝鮮は、9月26日から2日間の日程で開催された日本の国会にあたる最高人民会議で、ついに核武力政策を憲法に明記してしまった。これで憲法が改正されない限り、あるいは北朝鮮の現体制が崩壊しない限り、北朝鮮が自ら核を放棄することはなくなりました。つまり、北朝鮮の非核化を前提とした米朝及び南北対話も、あるいは日米中露の周辺国を加えての多国間交渉も不可能となったのです」(軍事アナリスト)


北朝鮮が戦術核使用をためらわなくなった懸念はまだある。


「北朝鮮は韓国を名指しで批判する際に必ず『南朝鮮』とか『米国の傀儡政権』と言っていたのを7月に、金与正党副部長が談話の中で『大韓民国』という正式国名を使用し始め、7月27日の軍事パレードで演説した強純男国防相もそう表現しました。韓国ではこれまで『同胞に核攻撃はない』との〝安全神話〟がありましたが、国民の一部には『神話は崩れた』との見方が浮上しています」(北朝鮮ウオッチャー)


ロシアはウクライナで苦戦を強いられている。苦戦する最大の要因は、米国らがウクライナを軍事支援しているからで、今後、ロシアが侵略を有利に進めようとすれば、米国の力を削ぐ必要がある。


「来年3月に予定されているロシア大統領選挙を有利に運ぶためにもプーチン氏がいま練っているのが朝鮮半島有事でしょう。技術支援などを約束する一方で、正恩氏をけしかけ北朝鮮と韓国を衝突させるのです。ベラルーシからウクライナの首都キーウを撃ち、北朝鮮からはソウルを撃つ〝二正面作戦〟を実行することで、米国の対ウクライナ支援を半分にするのです。しかも、自国はアメリカの核による報復も受けない。ソウルに撃つのは北朝鮮ですから」(前出・軍事アナリスト)


1961年7月に旧ソ連と北朝鮮の間で締結されたソ朝友好協力相互援助条約の第1条には『いずれか一方の締約国がいずれかの一国又は同盟国家群から武力攻撃を受け、戦争状態に入ったときは、他方の締約国は、直ちにその有するすべての手段をもって軍事的及び他の援助を供与するものとする』とある。


現在、同条約は破棄・失効しているが、今回の正恩氏の訪露で軍事同盟に進展があれば、ロシアのウクライナ侵略は「戦争状態」とみることはできるため、北朝鮮がロシアに砲弾などを提供することもでき、北朝鮮も日米韓の共同軍事演習を「武力攻撃」と拡大解釈するだろう。


プーチン大統領と正恩氏という2人の独裁者の握手は、ウクライナ侵略だけでなく、日本を含めた北東アジア情勢に大きな影響を与えることは間違いない。