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お笑い賞レースの乱立と芸人の気概~第9回『放送作家の半世(反省)記』

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(画像)vectorfusionart/Shutterstock

今年、すでに乱立状態にあるお笑いの賞レース界隈に、また新たな大会が創設された。一つは5月20日に決勝大会が行われた『THE SECOND〜漫才トーナメント〜』で、もう一つは、6月18日に決勝大会が行われた『UNDER5 AWARD』だ。

これで年間の大きなお笑い賞レースは、毎年3月に決勝大会が開催される『R-1グランプリ』に始まり、5月『THE SECOND』、6月『UNDER5 AWARD』、7月『ABCお笑いグランプリ』、10月『キングオブコント』、12月『女芸人No.1決定戦THE W』『M-1グランプリ』のスケジュールが組まれることになった。

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それぞれ漫才、コント、ピン芸人、女性芸人などのカテゴリーのほか、結成5年以下、10年以下、15年以下など参加資格で差別化しているが、お笑い芸人を職業にする限り、賞レースから解放されることがない人生を送らざるを得ない。

「どこかの賞レースやコンテストでグランプリやそれに準ずる賞を獲得しなければ、今や芸人仲間やテレビ界から本物の〝芸人〟として認められることはありません」(お笑い作家)

賞レースは出ないが“プライド”だけは高い!?

『M-1グランプリ』で結果を残せず無冠に見える千鳥でさえも、実は『ABCお笑いグランプリ』で優勝しており、そんな意見も純然たる事実。全国的な知名度は低いものの、同賞は前身の『ABC漫才・落語新人コンクール』『ABCお笑い新人グランプリ』を継承する大会で、今年で44回もの歴史を誇る。

「過去にはダウンタウン、ナインティナインもグランプリを受賞。中川家、ますだおかだ、フットボールアワー、とろサーモン、かまいたち、霜降り明星もグランプリを受賞しています。今年のグランプリに輝いたダブルヒガシも吉本興業から推されるのは間違いないので、これから露出が増えると思います」(同)

さて、お笑い芸人の賞レースといえば今年5月、オリエンタルラジオの中田敦彦が動画投稿した「松本人志氏への提言」をどうしても思い出してしまう。多くの賞で審査員を務める松本の功罪に言及し、物議を醸したものだが、そのオリエンタルラジオは賞レースで目立った実績がない。

後輩ながら霜降り明星のせいやが、「中途半端なうんこ芸人」呼ばわりしたのも、中田本人に実績がないにもかかわらず、逆に賞レースに出ないことでプライドを保つ姿が〝芸人としてカッコ悪い〟からだ。

「中田やロンドンブーツ1号2号の田村淳は、自分のことを〝芸人ではなくバラエティータレント〟などと言い始めましたが、中田はどう自称しようと吉本興業の養成所(NSC東京)出身の時点で、賞レースの舞台から逃げることはできません。松本さんに大口を叩く前に『THE SECOND』にエントリーしてみては? そんな勇気も気概もないでしょうが」(同)

かつてNHK局員と芸人を両立していた(現在は退職)女性ピン芸人のたかまつななが、中田の放言…いや提言の直後に「ピン芸人はみんな、松本さんに審査されたがっている」と、松本が審査員を務めていない『R-1グランプリ』について触れていたが、賞レースから逃げ回る中田には、決定的に〝参加する側〟の視点が欠けているのだ。

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